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蛇足

蛇足 その1

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いろいろな意味で喰われて以降、慶秋は確かに解放してくれた...もうなんかいろいろと...うう...

ちなみに朝帰って来た後に母に怒られるかと思ったが『早朝ランニングして来た』と言ったらあっさり信じてくれたが...母よ...それで良いのか?

確かに交わるってのはある意味マーキングなんだろうな...自分の精の匂いを染み付かせて他の化け物の雄が近寄らないため...

春信さん曰く『鬼に喰われながら交わるのは天にも昇る気分になれる』って言ってたが...その通りだった...どうとは言わんがな!

それにしても困った事が幾つか...

まず髪の色が黒から近衛と同じグレージュカラーになってしまった...色が戻る気配がない...仕方ないからしばらく髪を黒く染めなきゃならぬ...

あと近衛がとにかく一緒に居たがるのだ...夏休み中兎に角毎日家の前で朝から待ってて、遅くまでずっと一緒にいるのだ...

母はあらあらまぁまぁとか気軽に笑ってるが...普通の人間じゃ無いんだよ...しかも人前だといつもの近衛のままなもんだからタチが悪い...

で大体が図書館か近衛のマンションか私の家にという状態だ...そして二人きりだとずっと抱きしめられて離してはくれないし、場合によっては近衛が欲情して...うう...恥ずかしいから聞かないで欲しい...

春信さん曰く、伴侶が出来たばかりだから執着心が強いんだろうと言ってはいるが...伴侶というかこいつと結婚するとかまだ決めてすらいないのに...

で、今我が家にいるのだがお昼の時間になったし、お腹が空いたからごはんをと思うが抱っこ状態だ。

「昼ごはん作るから一旦解放してほしいんだけど...」

「そんな時間なんだ...じゃあ」

と解放されるも後ろにくっついて離れない...

「そんなにピッタリくっついてちゃ邪魔なんだが...」

と睨むも全く動じずニコニコしている...これ学校が始まったらどうする気なんだ?

台所で乾麺の蕎麦があったからざる蕎麦にでもとお湯を沸かそうとするが...近衛が邪魔で仕方ない。

「お前危ないからもう少し離れろ!」

「大丈夫だよ、いざとなったら舐めれば怪我は治るからね」

爽やかな笑顔でそう言うが...いや...そうじゃ無いだろ...と心の中で突っ込む。

「できれば怪我はしたくないんだが」

「ああ...そうか」

とちょっと離れるが...まだまだ邪魔だし徐々にまた近寄ってくるし...

ネギを刻み始めた時にはもう横にピッタリくっついてくるし!

「ちょっと!一度茶の間に戻れ!」

「ええっ」

イケメンだからって邪魔は邪魔だ...そう言うととても悲しそうな顔をする...ううう

「少しだけ待て!まずごはんを食べないと!」

「少しって...何分何秒待てばいい?」

「蕎麦が茹で上がるのが4分!盛り付けに4分の系8分!そのくらい待て!」

もう適当に時間を言う...このやりとり昼時に何度もやりあった...面倒くさい。

「8分も別にいなきゃならないのは嫌だ」

「駄々をこねるなよ...それにお腹がすいたままじゃ...ほら...いろいろ長くは出来ないから...」

...はっきり言うのはまだ恥ずかしいが...きっと今日は身体の触り方から近衛が欲情して迫ってきそうな気配がするから...

「あ!そうだね、じゃあ俺麺つゆとかお箸の準備するから!」

いい笑顔で食器の準備をし始める...近衛めもうこの家の食器棚に何があるかとか把握してるし...

用意して茶の間に持っていった後にため息を吐く。

「厄介なのに好かれてしまったなぁ」

しかも10年来とか本当に...まぁ確かにあの蜘蛛の化け物と比べれば近衛の方が...

いや私は近衛の事が好きなんだと思う...手作りのものを美味しいと食べてくれる事や、守ってくれた事など含めて...あといろいろ男女のあれこれされてもそこまで不快感が無い所からしても...うーん...

茹でたざる蕎麦を水で冷やしてから盛りつけて、茶の間に持っていくとテーブルには綺麗に箸やら麺つゆの器など置かれている...何故か横に並んでだが。

もう下手に言うと言いくるめられて面倒だから言わないが、少し離れると何かと言って近寄ってくるのだ。

場合によっては食事中に急に欲情して何度かやられたことも...恥ずかしい...

ざる蕎麦をテーブルに置いて近衛の隣に座る。

二人でいただきます、と言って蕎麦を啜る...

「史絵が作った蕎麦美味しいなぁ」

近衛は私が作った食べ物を口にすると恍惚とした表情になるのは、食べ物に触れた時についた私の匂いのせいだ。

その匂いを邪魔されたくないのか、薬味のネギやわさび入れる事を近衛はしない。

近衛達鬼は鼻がいい、微かな匂いでもわかるらしい。

そう、高島が亡くなった時口元を隠してにやっとしていたのも、私がカップケーキを作って持っていたその匂いのせいだ。
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