お前なんかに喰われてたまるかコノヤロー！

転校生

？？？

「逃げられたなぁ」

近衛の後ろには、近衛によく似た30代くらいの紺色のスーツの男が立っていた。

「...五月蝿い...」

「お前があからさまに『食べたい』と感じているのを察知して怖がってるな...ははっ、うさぎみたいに逃げちゃうんだもんなぁ」

はは、とその男は近衛の失敗に対して笑う。

「チッ...」

近衛は普段見せない嫌な顔を見せ、舌を鳴らす。

その男は近衛が持っていたラッピングされたパウンドケーキを一つ取った。

「ふうん、パウンドケーキか...どれ」

「これは俺のモノだ！」

男の行動に近衛は怒るも、男は何食わぬ顔でラッピングを開けてケーキを食べてしまった。

「いいだろう？『1番美味い部分』は食ったんだろうからな...あーこれは極上だ...みゆきが居なかったら俺のモノにしたいくらいだ...美味い...」

男はケーキを食べ終わると恍惚とした顔をしている...

「は？ふざけるな春信！」

「冗談だ、怒るな...それに知っての通り俺にとってはみゆき以外は『食う事』は出来ねぇから...まぁ精々頑張れよ、慶秋」

春信(ハルノブ)と呼ばれた男は手をひらひらとさせて去っていく。

「春信め...」

近衛はラッピングされたものとアルミホイルに包まれ残ったパウンドケーキを食べると恍惚とした顔をする...美味い...けれどさっきの食べかけには敵わない...

「...足りない...史絵...もっと食べたい...」

近衛はそう呟いた。