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8章 白の射手ディビドの告白

帰還の日

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ウルムの冬ももうそろそろ終わる時だ。

身支度を済ませるディビド、そろそろエアヴァルドへ...バーレで待っているエルマに会える事をずっとまちわびていた。

「ディビド」

「マテウス?どうしましたか?」

「本当にエアヴァルドに戻るのか?最近あまりいい話が聞かないが」

「だからですよ...私がエルマ様を守らねばなりませんので」

カバンに荷物を全て詰め込んだ事を確認する。

着ている服は宣教師の服、しかし今までと違って白い手袋をしている...甲の部分に賢者の証、紫の六芒星の紋の入ったものだ。

これからディビドは宣教師ではなく上級異端審問官の身になる為、『白の射手』の紋章を背負う、そのため1番邪魔にならないであろう手袋を選んだ。

「最速で賢者の称号を手に入れた天才がエアヴァルドに戻るのは惜しいが仕方ない、ただもしそのエルマ様を攫ってくるなら囲うための屋敷の一つも用意してやる」

「はは、ありがとうございます...義父さん」

「で...ディビド!」

マテウスは目を丸くする、この義理の息子が...今まで一度も呼んでもらった事もかったのに『義父さん』と呼んでくれたことに驚きと共に喜びが沸き起こる。

「では、またお会いできたら」

そう言ってマテウスに頭を下げてカバンを片手にマテウスの屋敷を出る。

道には雪が残るがそこまで寒くはない。

「さぁ...帰りましょうか...エルマ様の元に」

まぁ簡単に言うと賢者の資格に関してだけはすぐに手に入った。

アークメイジマスターの能力と術式付与の論文が有れば。

ただ長い間純粋な術士としての成長といえばきちんと成長してはいない為にマテウスに直接指南を受ける事にしたのだ。

今回は術回数の枯渇が原因で倒れる結果になった事もあり『術威力』と『術回数』の底上げが必要でありそのためのカリキュラムを受けていたのだ。

まぁ一度枯渇した事は底上げが容易になりやすいという事だったためある意味幸運とも言える結果になった。

半年の間にその辺の底上げの為に何度も術回数枯渇間際までの使用や熟練度上げ、そして無属性術式の展開方法と理論を叩きこんだ。

カリキュラムの半分はマテウスとの実戦、悪魔アンドラスを倒し封じた英雄でもある賢者マテウスはウルムで現状1番の術士でもある。

マテウスはディビドが賢者の資格を取ればきっと自分よりも上になるだろう...ウルムにとっては脅威なるかもしれないとは思うが、義理の息子の願いをマテウスは優先した。

そんな義理の息子の背中を見つめる...何か寂しいものもあるが、彼の人生をここまで穏やかな気持ちにさせた人の元へ帰す事の方が正しい...と思ったのだ...
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