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6章 子供達の行く末

マックスの妬みと嫉妬

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2日目もディビドに一緒に寝て欲しいと強請られ、マックス氏に睨まれながらもベッドを共にした。

「エルマお姉ちゃん、またお話が聞きたい」

「いいよ、何かいいかな?」

「ヨルクのお話がいい、お魚のお腹から出た後で寝ちゃったから...」

「いいよ、じゃあヨルクがお魚のお腹から出てきたら神様に向かいなさい、と言われた港に着いてました...」

そう聖典の物語を語る、ヨルクの冒険譚は子供に人気のお話だ。

話が終わった頃にはディビドはすやすやと眠りにつく。

今日はテオドールが帰った後ディビドは歩行練習であちこち歩きまわったためか疲れてしまったのかもしれない。

どう見ても20代前半の成人男性ではあるが何だか本当に小さい子供に見えてくる、可愛いなぁ...って何絆させているんだ!

今日は掴まれてたりされていなかったためそのままベッドから降りて椅子に座る。

「エルマ様今日は一緒には寝ないんですね」

ソファーで横になっていたマックス氏が起き上がる。

「マックス氏こそ寝てなかったんだね」

「...寝られる訳ないでしょ...全く...」

そうだよ、マックス氏は護衛騎士でエルマさんに何かあったらそれこそ仕事を失うどころの問題ではないだろうからだ。

「ごめんね、マックス氏」

マックス氏が怒るのも当然だ。

「...エルマ様は優しすぎます...幾ら精神的に子供って言ってもあいつ自体は大人だし...男なんですよ...ベッドを共にする事なんて...」

「うん」

「添い寝なんて...僕にすらした事無いのに...」

「え?」

「...不安なんですよ...あいつが...ディビドがエルマ様を連れて何処か逃げちゃうんじゃないかって...だっていつの間にか仲良くなるし、あいつの好みのアップルパイをわざわざ作ってあげたりするし、あいつエルマ様の事いつも『お嫁さんにしたい』って簡単に言うし...ねぇエルマ様、エルマ様はあいつの事、ディビドをどう思っているんですか?」

マックス氏がこちらをじっと見て話す。

「ジル殿下に対しては嫌がる事をこいつに対しては嫌がっているようには全く見えないんです...ねぇ何でですか?」
 
「マックス氏?」

「僕がこいつと同じ事を強請ったら、エルマ様は僕にもしてくれるんですか?」

マックス氏がまるで別人の様に見えてきた...いつもの神殿騎士の鎧の中は別な男の人が入っているんじゃないかと思うほどにだ...怖い...

「...はっ...す...すみません!頭を冷やして来ます...」

我に返ったかの様にマックス氏は下を向いたまま外に出てしまう。

「ごめん...マックス氏...」

マックス氏を弟の様に思って何でも甘えて負担ばかりかけてしまっていたのかもしれない...後でちゃんと謝らないといけないな、ああ反省してもしたりない...



「あー駄目だ駄目だ...何であんな事言ってしまったんだ!僕は!」

部屋に戻って兜を外して顔をバンバン叩く。

『僕がこいつと同じ事を強請ったら、エルマ様は僕にもしてくれるんですか?』

自分が言った言葉を思い出して自己嫌悪に陥る。

「あんな事言って...僕は馬鹿か!」

嫉妬だ、嫉妬がそうさせた...羨ましい妬ましい...そう思ってしまった...なんてみっともない事をしでかしたんだとマックスは思った。

1番近くにいるのに1番になれない、弟のポジションで仲良く笑いあえる関係で満足すると決めた筈なのに、何を嫉妬してディビドの事で責めたりしたんだ!エルマが悪い訳ではないのに...

エルマは優しい、誰に対しても包容力を持って受け入れてくれるのに、自分だって受け入れて貰えたのに別な人間がそれを受ける事が嫌だと思うなんて。

きっとディビドがエルマに対して恋慕の情があるせいだ、あいつははっきり言っていたのだ...

『初恋拗らせて一生童貞のまま護衛騎士のでいようとするヘタレに言われる筋合いはないですよ、エルマ様が望めば攫って行くくらいの覚悟もない癖に』

自分には攫っていく覚悟が無いヘタレだと言われたが事実だと思う、しがらみでは無いが人との繋がりが、トラウゴット教という組織に対する裏切り行為が出来ないからだ、それはエルマだって同じ筈である...だから決して寺院を去る事はしない筈だ...しかも聖サンソンを出現させる程の大きな奇跡を起こしたでは無いか!誰よりも神と共にあり神を裏切る事が出来ない方...絶対裏切る事はないはずなのに!

「やっぱり僕は馬鹿だ...」

そんな神聖な方に恋慕するこの気持ち...いや恋慕なんて生優しいものじゃない...劣情や執着のようなドロドロとした穢れたものだ...エルマの裸体を見た時以降ずっと夢に出てきて誘惑してくるのだ...閉じ込め抱きしめて唇を奪い全てを自分のものにしたい...あの憎いジル殿下と根本が同じなのだ...。

だから封印しなくては駄目なのだ...。

ふと部屋の鏡に映る自分を見る。

まだマルガレーテに幼いと言われた顔、黒い髪と青い瞳...父にも母にも似なかったその瞳...隔世遺伝だからと言われはしたがこの色が嫌で仕方なかった。

しかもエルマが怖がるジル殿下と同じ色だ。

きっとエルマ本人はこの瞳を見てそんな事は言わないと思うがジル殿下と同じ劣情を宿していると気づかれたら...そう思うとぞっとする。

居た堪れない気持ちになり再度兜を被る。

「...謝らなきゃ...エルマ様に...」

穢れた心を封印して『弟分のマックス』というポジションに戻らなくては...

ーーーーー
※ちょっとした小ネタというか裏設定
ディビドの父ジェセは元々エアヴァルド人の高位術士である。
賢者の称号を手に入れる為に一時的にウルムで活動中に国の要人に目をつけられて女性をけしかけられられうっかり子供が出来てしまい、ジェセはエアヴァルドに帰る事なく結婚しウルム国内に留まる事になったのだが...実の所、ハニトラ仕掛けた女性(ディビド母)が枯れ専でむしろジェセが好みにどストライクで好き過ぎて上にそこまで頼まれてもいないのに無理矢理既成事実を作って(術式で肉体強化して襲った)妊娠するとかやらかしてる。正直ドン引きである。
ちなみに18歳差の歳の差婚!(40歳と22歳)
ただジェセ自体も「無理矢理だったけどまぁお嫁さんも子供もめっちゃ可愛いのでこのままウルムに骨を埋めてもいいや」(この辺の性格がディビドに似てる)と思って楽しい毎日を送ってた。
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