銭ゲバ令嬢なまぐさ司祭に溺愛される【R18】

chapter7:become a teacher

古い夢 その3

「！」

ディビッドは目を覚ます。

外はもう明るくなってきており、時間を見ればもう六時近くだ。

急に心臓を中心に身体中が痛みに走ってそのまま気絶してしまった事を思い出す。

とても昔の夢を見ていた気分ではあるが、どうにもその内容を思い出せない。

「一体何が...」

最近確かにどこか疲労感のようなものを感じていた、それをジョナサン特製激甘ポーションなどで誤魔化しながら生活していたのだ。

それは『白の射手』と神から任命されて以降...そして昨日急に心臓部を中心に身体中に痛みが走った。

そして思う、天使化が肉体に負担がかかるのかもしれないかも...と。

左手が握られていた事に気がつく、バレンティナがディビッドの手を両手で握ったまま眠っていた、頬には涙を流した後もある、きっと心配してくれたのだろう。

「ティナ」

どこか心苦しい気持ちになる、自分の為に泣いてくれる優しい花嫁を悲しませたくはない、と。

「ギャ！ディブ！起きたか！」

近くのクッションで羽を休めていたピッピちゃんがディビッドが目覚めた事に気がつき、声をかけてくる。

「ピッピちゃん...いえ姉上...私は一体」

ピッピちゃんはディビッド達の近くに飛んでベッドの上に乗るとピッピちゃんからエステルの姿に変化する。

「ディブ...アイザック王の時代の天使の降臨の話分かるわよね...」

アイザック王の時代、と言われてディビッドはピンとくる。

それこそアイザック王の時代とは、エアヴァルドが悪魔に乗っ取られた隣国テルニから18万以上の兵をもって襲来された時、天使が降臨しそれら兵士を死に追いやりエアヴァルドを護った事で有名な逸話があるからだ。

「天使の降臨...神に忠誠を尽くしたアイザック王の願いに神は1人の天使を降臨させて、一振りの剣を片手に18万5000人の兵士を全て一瞬にして殲滅した件、とてつもなく眩い光を放つ身体と背に翼が生えた赤い鎧を身に纏った天使が現れた件よ」

「...アイザック王はその後暫くして命を落としてますよね」

ディビッドは聖典の記録を思い出しそう語る、天使が降臨し敵を滅ぼした後暫くしてアイザック王は亡くなった記述があるからだ、そしてその理由自体は記述されていない。

「...もし、その『赤の剣』と呼ばれる天使が、貴方が天使化した様にアイザック王が天使化した存在だったなら...」

嫌な予想が頭を過ぎる。

「私の身体が保てなくてアイザック王みたいに死ぬかもしれませんね...」

「ディブ...」

「姉上、私には『ハイラントの父』の1人になる役割があるし、姉上も言ってたじゃないですか、子供が五人いて長生きして大往生するって、それにアイザック王の時とは事情が違いますし、18万の人間を殲滅させるのと悪魔を倒し人を癒す事では違いますからね」

にこり、と笑いながらディビッドはそう話す。