銭ゲバ令嬢なまぐさ司祭に溺愛される【R18】

chapter6:Be baptized

洗礼式 その13

エステルが7歳になった時の事、元々3歳くらいの頃から使用人達を出し抜いてやってくるエステルをどこか不思議に思っていたが、それがエステルに予知の力がある事が発覚したのだ。

『ねぇねぇおじ様、悪い人攫いが明日私を攫いに来るけど、お昼くらいにはあの赤い屋根の屋敷の地下に居るから助けに来てね』

と窓からある貴族の所有する屋敷を指差して言われた時には、子供の戯言と思ったが、それが現実の物となったからだ。

いつもならやってくる時間に現れないエステルにヘルムートの父親は心配し、もしや...と思い領主権限でエステルの言っていた場所へ数人の神殿騎士や異端審問官を引き連れて乗り込み地下を探すと地下牢に攫われた沢山の子供達を慰めているエステルがいたのだ。

ちなみに誘拐の主犯は悪魔崇拝者であり、聖なるバーレの地から攫った子供を生贄にする為にバーレに潜伏していたのだ。

そしてエステルはあからさまな緑髪と薄桃色の瞳を持った『生贄の娘』でもあり、1番の狙いだったようだ。

『本当は人攫いを避けることなんて簡単なのだけど、そうだとこの子達は助からないから、それで1番上手く行くのが攫われる事って見えたのよ、そしておじ様が助けてくれるまではっきりね...』

と悪びれる様子も無くエステルはそんな事を言うのだ。

流石にヘルムートは危険な事に首を突っ込んだお仕置きとしてマハナイム家に代々伝わる『こめかみぐりぐりの刑』をエステルは受ける事になってしまったが...

そしてそれ以降良いこと悪い事を次々と言い当て、エステルが『預言者』として誕生したのでは？と周囲が騒ぎ出したのだ。

元々ザイオンの家は12番目の預言者が起こした家である上に由緒正しい2番目の預言者でもある聖マーシャの血縁でもある。

血の繋がり故にその力が現れた、と言うものもいるが預言者というものは本来その時代に大きな『何か』が起こる前兆、災いがあるならそれを避ける為の導きを与え、民が神の怒りを買っているならば裁きを与える存在である。

そして預言者は基本自由に生きる存在である、それを鑑みて『ザイオンの家にもう一人子供を』と言う声が出たのだ。

エステル以降、ドロレスとの時間を優先してか次の子供をシャウルは作るつもりがなかったが、ドロレスがその話を聞き子供を望んだのだ。

ただそれが不幸な結果となるとは思いもしなかった。

一年してドロレスは子供を産む事になるが、産んだ子供が死産だった事や産後の肥立ちが悪くてあっという間にドロレスが子供の後を追う様に亡くなってしまったからだ。

その時のシャウルの絶望し泣き叫び、そしてそれ以降ずっと精気もない屍のようになってしまったのである。

そうしてドロレスが亡くなって2年したあたりの悪魔討伐の際にシャウルは返り討ちにあい、顔を潰されて惨殺されたのだ。

「いくら命をかけているとしても、あの時は本当に何故ここまで不幸が続くのかと疑問すら思ってました...まぁその一連の出来事の発端はシャウルの罪...そしてザイオンの一族の一部の者たちの悪行が原因なんでしょう、でもエステル自身には全く罪も無くその能力が開花する一端がそれらを裁く為だったのかもしれないし、何よりエステルが助けを求めて来たので、ザイオンの親族よりも血の近い親族という事で引き取りました...」

ヘルムートは大きくため息を吐く。