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chapter6:Be baptized

惑わす者の甘言 その9

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『この光ハッ!まさカ!』

その瞬間バレンティナの身体が光りだして、その光の故にリュシフェルが離れる。

それは神聖な力を持ち、邪悪なものを遠ざける神からの祝福そのもの。

『300年ぶりだな惑わす者!明けの明星よ!この子はお前の甘言には乗らないそうだよ!』

十二番の預言者をその身に移したバレンティナがそう言いながら、ミンミに向かって回復をかけるとミンミの周囲に柔らかな光が発せられ傷が消えていく。

「お...お姉...さん???」

修道士でもないバレンティナが回復の祝福を扱える事もだが、その力強い光を纏う姿に驚きを隠せないミンミ。

『悪魔と分かって立ち向かった勇敢なる者よ、神は君のその行いに喜びを見出して下さった!君には大いなる祝福が与えられる』

バレンティナは顔をミンミに向けると、ミンミの勇敢さを讃え笑顔を浮かべる。

「え???まさか...300年前って...あの礼拝堂の...」

ミンミは気がつく...そう、目の前のバレンティナの身に十二番目の預言者が宿った事をだ。

エステルと同じミントグリーンの髪を持ち、ピンクダイヤモンドのような瞳を持つ姿も相まって、その姿は礼拝堂にある十二番目の預言者と姿が被る。

『彼の神に愛されし預言者ノ降臨!あの忌々しい小娘カ!』

リュシフェルが憎しみの表情を表す...何故なら創造者にして忠節なるトラウゴット神を歪に愛する故に、神にとって唯一となるが故に堕天した最初の悪魔、神の愛を受ける存在そのもの全てが憎しみの対象なのだから。

『ああそうだよ!さぁこの『私』が相手をしようじゃないか!リュシフェル!』

バレンティナは右手を天に掲げて、聖典の一節を読み上げ出す。

『裁き時は来たっ!悪しき者の頭を砕く裁きの鉄槌を!』

そう言い切ると濃紺の長い髪をたなびかせた銅を溶かしたように光り輝く聖サンソンの幻影が現れて、リュシフェルの顔面目掛けて殴りかかりその勢いのまま窓をぶち壊しながらリュシフェルの身体は吹っ飛んでいく。

「え!ええっ!」

『驚いてないで君はここにいる子達をみんな逃すんだ!私があの悪魔を追い出すからね』

「は...はい!」

ミンミは促されて部屋を出ていく...窓枠すら粉々になってしまった先には全く無傷の状態のリュシフェルが立っているが、その力はやや削れているのだろうか表情は苦々しげである。

『まぁ私じゃ貴様を倒す事は出来ないけど、せめて聖なるバーレから追い出すくらいは出来るはずだからね!』

そのまま壊れた窓から外へ出て、スカートからロッドを取り出してその先をリュシフェルに向ける。

『生贄の分際デ生意気ナ』

リュシフェルの周囲に黒い影のような者...悪霊が幾つも現れ、それらは一斉にバレンティナに襲い掛かる。

『さぁ、始めようか!悪魔リュシフェル!』

12番目の預言者が宿ったバレンティナはニヤりと笑うのだった。
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