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chapter6:Be baptized
警告 その10
しおりを挟むディビッドは目を覚ます、部屋は真っ暗だ。
「...ティナ...」
身を起こして脱ぎ捨てた服を着て部屋を出てキッチンへと向かうがそこも真っ暗だ...
ただそこに一人マキシムが椅子に座っていた。
「起きたか...」
マキシムはディビッドがやって来た事に気がついて顔を上げる。
「マキシム...ティナとシモンは???」
「時が来た、と言って二人で去っていったよ」
マキシムの声は重い、ディビッドがショックを受けるのを知っているからだろう。
「は???何で引き止めなかったんですか!」
ディビッドはマキシムの胸ぐらを掴んで怒りの声を上げる。
「仕方あるまい!12番目の預言者様の...いや創造者にして忠節なる神のご意志故だ!神が引き離されたものは戻らない...今回みたいな事は神の温情だともな...」
「そんな...」
マキシムの胸ぐらを掴んだ手を緩めて外へと向かうディビッド。
「無駄だ!諦めろ!」
マキシムはディビッドの腕を掴んで引き留める。
「離して下さい!まだ近くにっ!ティナとシモンがっ」
「馬鹿野郎!これはお前の『罪』に対する『罰』だ!それは誰よりもその『罰』を受けているお前が良く知っているだろうが!それに今追いかけても神が二人をお前から隠すだろうから無理だ!」
マキシムが肩を掴んで正面を向く様にし、目を逸らす事なくディビッドに言い聞かせる。
「分かってますよ!でもっ...それでも...」
ディビッドはボロボロと涙を流しながら、声を震わせる。
「諦めきれないっ...あんな幸せを味合わせておきながらっ...こんな事あんまりですよ...ううっ」
そう、この短い間の幸せな時間があるからこそ、会えない絶望感は大きくディビッドにのしかかる。
愛する人と愛し合い、その愛する人との間から産まれた子供と共に家族を築き幸せな時間を送る事。
産まれた時に捨てられたが故に、自ら暖かい家庭を作る事を心の底から願う気持ちを持っていた、ただそれを自身の怒りと欲望でぶち壊してしまったのだ。
それ故に神の怒りを買い、最も欲しかったものを取り上げられるというディビッドにとって残酷な罰を受けている、それは今も許された訳ではなかったのである。
「ティナ...ティナぁぁぁ...」
ディビッドが崩れ落ちて泣き続ける。
マキシムはもうしばらくはそうさせるしか無いと思ってかディビッドを残して家を出る...落ち着く頃に戻ろうと思って。
きっと自らの手で死を選ぶ事は無い...そうすればそれこそ二度とバレンティナに出会う事が出来ないからだ。
ディビッドはただ一人、甘美な夢を見たこの場所で泣き叫び続けるのだった。
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