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chapter6:Be baptized
それは秘密よ その10
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「...エステル様と同時期に現れた次代の預言者様...ウルム貴族の立場でもありながら神の代弁者という大いなる力を持っているのにとても謙遜な方なのね...」
タビダはディビッドとバレンティナの後ろ姿を見てそう呟く。
そして思い出す...ディビッドの母親の事を。
先代の白の射手であったディビッドの父親に子供時代から熱愛というか執着され続け、結婚したら囲われてしまいそうそう会う事が出来なくなった。
そして最後に髪と瞳の色から不貞を疑われ、産んで直ぐに子を捨てられたショックから命を落としたヘルムートの姉であるドロレス、タビダの友人でもあった優しい女性。
手紙では夫を嫌っているわけでもなければ、生活自体は困る事は無いけれど、夫とでなければ外に出る事や人に会う事を禁止されて、人に会えない事を寂しがっていた事を書いていた。
きっと命を落とす直前まで寂しい思いをしていたのではと、タビダは思う。
今のディビッドを見ると、所々に彼の父親を思い起こす片鱗が見え隠れするのがどこか不安を心に宿す。
そう、ディビッドがバレンティナを探していた時の目がドロレスを探すディビッドの父親の目と同じなのだ。
見目麗しく誰よりも美しいと称されたディビッドの父親、12番目の預言者の直系、ハイラントの血を継ぐ一人でトラウゴット教徒であれば彼の妻となる事は誉れにもなる。
しかしそれがドロレスにとって本当に幸せだったのか...とタビダは思うのだ。
「バレンティナ様が同じような目に会わなければ良いのですが...でも」
バレンティナは次代の預言者である、そして預言者は縛られず自由に生きる存在でもある...ならばバレンティナが望むのであればその束縛から自由にもされるのかもしれない。
ただそれはディビッドにとって望む事にはならない可能性もある。
そう、ディビッドの父親に似ているというのであればバレンティナを束縛し囲い込もうとするだろうからだ。
そしてきっと神はディビッドがバレンティナを束縛する事を許しはしないだろう。
「どうか二人が幸せになれる道を歩めるように...」
タビダは呟くように祈るのだった。
────────────────────────
※ちなみに本編で詳細書かないのでここでサラリと...
ディビッド母はヘルムート様のお姉さん。
ディビッド父はヘルムート様と同い年でディビッド母とは3歳年が離れており、弟であるヘルムート様に小さい頃から『実の弟なんて狡い』と嫉妬したりするめんどくさい男であった。(ただ性格は真面目な方でディビッドとは似ていない)
しかもディビッド父16歳の時に『白の射手』の称号を受け継ぐと同時にディビッド母と結婚してその1年後くらいにエステル様が産まれてたりと手も早いし、産まれた子供の髪色が違う事で不貞を疑って子供を捨てるやべぇ男である。
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