457 / 841
chapter6:Be baptized
姉の罪 その5
しおりを挟むバレンティナがいる部屋と同じ内装の部屋にアーヴァインと同室のディビッドはしょぼくれ気味でベッドに横になっている。
「ティナの所に行きたい...」
さっきまで悪魔を倒していた人物とは思えない程情けない声でそう言うディビッド。
「そんなにしょぼしょぼするな」
アーヴァインはシャワーから戻ってもまだしょぼくれているディビッドを見てそう言う。
「少しでも離れているのが引き裂かれる様な気持ちで辛いんですよ...辛い...」
辛い辛いと嘆いてばかりでそんな情けない姿に呆れ気味なアーヴァイン。
「まぁまだ付き合って半年くらいならなぁ」
まだ若い恋人同士だし、とアーヴァインは思ってそう言う。
「...半年じゃ無いんですよ」
ディビッドはぼそり、と呟く。
「何か言ったか?」
「いいえ...はぁ...辛い」
ディビッドから放たれるどんよりした空気の重さを感じるアーヴァイン、これをマキシム達は宥めてたりするのか、と苦笑いをする。
「同じ列車に乗ってるしバーレでも一緒にいる予定なんだろう?それにまたウルムに戻れば邪魔するエステルも居なくなるからそれまで辛抱するべきだなぁ...それこそその辺慣れておかなきゃ何か大事があって数年離れる事があったらどうするんだ?」
「...慣れませんよ...きっと...だって私の血を引く実の父や祖先の男達で『白の射手』に選ばれた人々はみんなこんな感じなんだって姉上が言ってましたし、私自身ティナに再度会うまでこんな感じになるなんて思いませんでしたもの」
ディビッドはアーヴァインに背を向けながらそう言う。
きっとその強い恋慕の気持ちは『白の射手』自身の子孫を残す為の本能に近いものなのだろう。
歴代の悪魔を滅ぼす力を持つ『白の射手』として選ばれたバーレの真の王である男は妻と選んだ者を深い愛情と嫉妬深い気持ちを持って囲いこみ、女は『生贄の娘の血』故に周囲の強い力を持つ男を惹きつけ強い子孫を残そうとする、と言う話はあながち嘘では無いんだろう、と今のディビッドを見てアーヴァインは思う。
そしてその先の将来、人類の敵である悪魔リュシフェルを滅ぼす為に産まれてくるハイラントとはどんな存在なのだろう...とも。
「難儀な恋煩いだなぁ」
ディビッドの事をやや可哀想に思えてくるアーヴァイン。
「難儀で苦しくて辛いけどもティナが好きなんですよ...はぁ...」
「はは...」
アーヴァインはただ苦笑するしかできなかった。
0
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

ヤンデレ義父に執着されている娘の話
アオ
恋愛
美少女に転生した主人公が義父に執着、溺愛されつつ執着させていることに気が付かない話。
色々拗らせてます。
前世の2人という話はメリバ。
バッドエンド苦手な方は閲覧注意です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる