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chapter5:Whereabouts of the curse
サミュエルとダリオ その4
しおりを挟むこの国...ウルムにとって術士の能力は貴族に匹敵し優遇される...特に『赤を宿す瞳』を持つ者は賢者になる可能性が高いからな、だから強い術士になりたいと願うモノなのだ」
「まぁそうっすよね、だからウルムはこんなにも栄えている訳っすしねぇ」
そう、大国ウルムの豊かさは術士の優遇による産業の発展に由来する。
今ダリオが運転している車に関しても術士の中でアルケミストやスペルソードの能力を応用して動かしている。
「...そんな術士にとって危険とは言え悪魔の心臓とも言える『禁呪の書き板』は魅力的に映る...特に自身の限界を感じる者にとってはな...禁呪の書き板は上手く扱えば、強力な力を得られるが受肉され悪魔と化してその地一帯を脅かす可能性もある...ウルムと言う国は常にその脅威と戦って来た歴史がある為に封印式が解れば厳重に管理され、それを手にした者は重罪人として処刑される」
ダリオはぶるり、と震える。ディビッドの言葉が無ければ受肉された自身は処刑される可能性があったからだ、閑職に回されたくらいで済んでいるのはむしろ幸運だ。
「まぁそもそもアレはそう言うふうに人を唆してるっすしね...」
「ギャ!ただそう見せかけてるだけで、受肉の媒介を探してるだけギャ!奴らは狡猾ギャ!」
ピッピちゃんは後部座席の真ん中でまるで王様のように座っている。
「...そうだな...人の欲求や不満をかり立てる...」
ダリオはグシオンに受肉された時、ずっと不満を抱えていた部分を爆発させて化け物の姿となった事を思い出す。
あの時ただただ周囲が憎く怒りしか湧かなくなり、それを最後ディビッドに向け襲いかかるも倒された。
「まぁ坊ちゃんはなんていうか人をイラッとさせるからムカつくのはわからなくも無いっすけどねー」
「そう言えば何故そんなに嫌う?」
少し疑問に思いダリオはサミュエルに尋ねる。
「えームカつくでしょ?あの顔で女の子にモテモテで才能でも財力でもとんでもなく恵まれてるのに、めちゃくちゃ性格悪いっすから」
サミュエルの言葉にダリオが感じた数々の出来事を思い出す。
いくら恋敵に対してはとは言え、見せつけ方に関してアレはやりすぎだろう、と確かに納得する。
「ああ...確かに」
「でしょ?」
とサミュエルはニヤニヤと笑いながらダリオを見る。
「まぁ何もしないでもフツーに女の子に好かれる時点でムカつくんすけどね」
「はは」
何だかサミュエルの愚痴を聞いてると可笑しくなって笑うダリオ。
車は二人と一羽を乗せてそのまま王都へと向かう。
もう朝焼けが見えて来た...このまま休めるならいいが例の報告やサミュエルの言っていたフェネクスの受肉を受けた男の尋問も待っている。
忙しくなるかもな、とサミュエルとダリオはそれぞれ思うのだった。
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