上 下
310 / 841
chapter4:Older sister, invasion

愛おしい君 その1

しおりを挟む
『上手く祓えたね、『白の射手』』

労いの言葉をかける、ハイラントの祖となる預言者。

ディビッドは銃を下ろすと銃も自身の変貌も全て戻るとがくり、と膝が折れる。

「限界...ですかねぇ...」

ディビッドは持っていた銃も手から溢れる様に落とし、力尽きてしまったのか座りこむ。

『君はそもそも2体の悪魔を倒したんだ、良くやってたよ...』

「その言葉、貴女よりティナから聴きたいですよ」

『見た目と言うか身体自体は彼女だろう?別にいいじゃないか?』

覗き込む顔はとても愛らしいが、作る表情がバレンティナとは全く違う、むしろ姉であるエステルに似ている所が何とも言えない気持ちになるのだ。

「中身が貴女と言う時点で違うんですよ」

疲労困憊ではあるが、睨むくらいは出来る様だ。

『はは、まぁそうだね』

ディビッドはため息を吐く、そして肝心の事を尋ねる。

「ジョナサンとマキシムの復活をお願いできますか?今の私には無理だし貴女が出張ったって事は姉上はまだ動けないでしょうから...」

期待はある、今となってはエステルが扱える奇跡である復活を

『いや、私の役割はここまでなんだ、悪いね』

とても申し訳無さそうな表情を浮かべる。

「...そうですか...」

ディビッドはそう言うと顔に手を当てる...目尻から涙が頬を伝う。

現在復活リザレクションが使えるエステルが動けず、それにエルコラーロでの奇跡を再度行う事は難しい。

特にジョナサンの肉体は先程のレギオン戦で損傷が激しい上、時間が経てば二人を生き返す事が難しくなるからだ。

『泣かないで、でも君の花嫁であるが君のピンチを救ってくれるからね?』

そう言ったと思った後、表情は変わりディビッドに抱きつく。

「ディビッド...」



「...ティナ?」

バレンティナに憑依していた預言者は居なくなったようだ、抱きついているバレンティナは本人なのだと思うと気が更に緩んだのか、更に泣き出してしまう。

「私の判断の甘さが...マキシムとジョナサンを...」

バレンティナは倒れている二人に目をやり、事の大変さに気がつきディビッドの頭を撫でる。

助けられないかも知れない二人に対しディビッドが後悔で打ちひしがれている。

ーーーお姉様はディビッドを守るために、他の3人は死ぬ事すら覚悟してるって言ってたけど、ディビッド自身はそうじゃ無いのかも...

バレンティナはそう思う、エルコラーロで起こった奇跡をディビッドが行えば...でもディビッド自身がもう動けない程になっている。

ーーーピンチの時助けてあげてね

夢で出会った少女の言葉を思い出す。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した

Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

ヤンデレ義父に執着されている娘の話

アオ
恋愛
美少女に転生した主人公が義父に執着、溺愛されつつ執着させていることに気が付かない話。 色々拗らせてます。 前世の2人という話はメリバ。 バッドエンド苦手な方は閲覧注意です。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...