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Chapter2:Jealous lover

嫉妬深い恋人 その1

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お兄様はマキシムさんに肩を貸して貰って、一緒にお屋敷の庭まで逃げてきたのだけど、お兄様はずっと考え込んでいたわ...

きっとダリオの事が、ショックだったのかもしれないわね...学生時代から仲が良かったけど、あんなになってしまったんですもの。

「お兄様?大丈夫?」

「...ああ...」

こんな感じの返答の後また考え込んでしまわれるわ...

因みに闇オークションに参加していた人達は、全員憲兵に連れて行かれるそうね...まぁ人攫いや盗品をオークションにかけて手に入れたり稼いだりしてたんですもの、当然よね。

お兄様は私を助ける為に、武器とも言えない物一本持ってやってくるんですもの...しかもこんなに血塗れになって怪我までされて...ちょっと口が悪くて、何だか堅気っぽくない見た目だけど、本当に家族思いのとっても優しいお兄様なのに...

「おーい!バレンティナ嬢!水を用意したぞ!」

マキシムさんがそう言ってボトル2本もってやって来たわ。

それを受け取るとお兄様に渡す。

「お兄様、お水ですよ」

「...ああ...」

お水を渡しても飲まずにぼんやりしてるわ...

「余程ダリオの事がショックだったのね...お兄様...」

「...いや俺はそうじゃないと...」

とマキシムさんが言うわ???どう言う事かしら?

「ギャ!ギャ!ジョニーが来た!」

ピッピちゃんがそう言うとマキシムさんより背の高い、大柄な司祭服を着た男の人がダリオを肩に乗せてやってきたわ!

「おお!倒したか!」

「倒しました、ディビッドはその内来ます」

「???誰?」

マキシムさんとは知り合いみたいだけど。

「あージョナサンだよ、本来この姿なんだ」

「ええええ!!!」

あの私よりちょっと小さい小柄で、中性的な少年の面影が全くないんですけど!

「驚きすぎです、失礼です」

ジョナサンはダリオを置くと、術式を構築し始めて、自分自身にかけるといつものジョナサンに戻ったわ!

「本当...ジョナサンなのね」

『元々の姿だと術士と拳闘士の力が強すぎで、フツーの生活をするにはいろいろ不都合がありすぎんだよ...だから仕方なくこの姿でいるんだ』

ジョナサンがスボンの裾を捲りながら、エアヴァルド語でそう説明する。

「まぁ簡単に食器だのただ持っただけで破壊したり、繊細な事が出来なかったり、術式暴発させたり色々やらかしてるから」

『うるせー』

「色々大変なのね」

普通の生活出来ないのは確かに大変よね。

「ダリオはこれからどうなるのかしら」

「こいつはリュシフェルの所為で受肉された被害者だ、生贄による被害者も無かったし罪は問われない」

マキシムさんはそう言ってダリオの顔を軽く叩く。

「どうだ?大丈夫か?」

「う...うう...」

ダリオが目を覚ますと、身を起こしたと思ったら顔を覆い泣き始める。

「どうした!」

「俺は...なんて事を...」

「記憶が残ってるか」

マキシムさんは頭を掻いて眉を顰めたわ。

「シルヴィオにもバレンティナ嬢にも聞かれたくなかった...俺は...うっ...ううっ」

「ダリオ」

顔を覆って泣くダリオにお兄様が近寄るわ。

「シルヴィオ...俺は...」

「んな事誰だって思うだろうよ...妬みやら嫉妬なんてぇのはな、誰もが持つ感情だろ?」

「シルヴィオ...」

「俺だって泥水啜ってた時代にゃ、いろーんな連中に対してそんな気持ちで一杯だったさ、それを全部ぶちのめして今がある...人間なんてのはなぁ、そんなに綺麗なもんじゃねぇよ」

「お兄様」

「ダリオ、お前は俺にとって兄弟みたいなもんだ」

「シルヴィオ...許してくれるのか?」

「許すも何も俺はそんな事思っちゃいねぇよ、兄弟!」

お兄様はダリオの頭をガシガシと撫でるわ。

「ティナ...色々あってついぼーっとしちまって悪い...本当に無事で良かった...」

「私の方こそ、不注意でこんな目にあったのですもの...ごめんなさい...」

「ティナはあの女の子を救う為に頑張ったんだ、それに悪いのは人攫って売り飛ばそうとした連中だろ」

お兄様はニコっと笑って頭を撫でて下さるわ、本当に笑顔が悪人顔だけど優しいのよ。

「あとティナ...俺の顔に免じてダリオを許してやってくれねぇか...きっとティナはもう心に決めた相手がいるだろうしこいつととは言わねぇから...」

「ええ...」

「すまない...バレンティナ嬢...ううっ」

流石にお兄様もそう仰るし、きっとこの先変な目で見たりしないでしょうから...
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