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chapter1:Come to help, my knight

真の王

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「ギャ!ディブ!気を抜くな!」

「ん?そうでしたね」

ディビッドが振り向くとジュウジュウと黒い霧を放つゼパルが起き上がる。

『贄を!真の力を得る為の贄を...バレンティナァァァァ!』

ゼパルの姿が変わる...身体は大きくなり目玉もギョロっとした気味の悪いモノへ、手足がまるで昆虫のような細くワサワサとした物へと変化しだす...前足には大きな刃物のようでありまるで巨大なカマキリそのものだ!

「人型を保てなくなりましたね...」

ディビッドはティナを解放し銃を拾いあげる。

「ディビッド!バレンティナ嬢!」

「あ!マキシムさん!死んじゃったかと思った!」

マキシムがやってくる、鎧はへこみ、赤のサーコートは破れておりぼろぼろである。

「俺はディビッド以上に頑丈に出来てるから大丈夫だ、あとディビッドすまん!リュシフェルのせいで気絶していた」

「仕方ないですよ、リュシフェルに現行かなう相手なんて存在しませんからね、マキシムはゴキブリ並みに死なないとは思ってましたが良かったです」

「嫌味か?」

「当たり前でしょ?ティナを守りきれなかったんですからね」

ディビッドとマキシムはそう言いながらゼパルへと向く。

ディビッドは銃をマキシムは大剣を構える。

ピッピちゃんはティナの肩に乗り換える。

「ギャ!ティナちゃんはこっち!」

ピッピちゃんから屋敷を離れるように促される。

「ティナ、あいつを倒したら後で美味しいデザートを用意しますから、ピッピちゃんと待ってて下さいね」

ディビッドはニッコリ笑い、そして正面を向く...悪魔ゼパルを倒す為に

「絶対戻ってきてよ!」

ティナは屋敷から走り脱出を試みる。

『バレンティナァァァァ!』

ゼパルはティナを追いかけようとするが2人が遮る。

「上級異端審問官『白の射手』ディビッド ザイオン バーレ、10人の女性達を生贄とし殺害し、我が花嫁の純潔を狙った罪により貴様を断罪する!」

「上級異端審問官『赤の剣』マシキマム ローエン アルトマン!我が主である預言者エステル様の名により悪魔ゼパルを断罪する!」

ゼパルの鎌攻撃を2人はかわして、その次の攻撃をマキシムが大剣でガードしその隙を突いてディビッドは銃を撃つ。

先程の攻撃が効いていたのか純銀製の弾丸が貫通しゼパルにダメージを与えている。

『ギャアアアア!』

「効いてはいるが、致命傷にはなり得ないか!」

『贄をォォォォ!』

前足を横に振ると真空波が生じ、2人に襲いかかるがマキシムが大剣を振り別な真空波を生み出し打ち消す。

ゼパルの真空波の打ち消しできない分が掠ってディビッドの頬の一筋の赤い傷が生じ、つつ...と血が流れる。

「あんまり顔に傷が出来るのは避けたかったんですけどね...」

簡単にヒールをかけて傷を塞ぐも薄ら傷の跡が残る。

『贄ヲ!』

「煩いですねぇ!『強欲な者よ!その強欲ゆえに邪悪な企みをくわだてる者よ、その心を神は憎まれる!その者の所有物は全て蝗によって食い荒らされるであろう!』」

何処からともなく大きな蝗の大群がやって来て再度大きく肥大化したゼパルに襲いかかる。

大きな蝗は鉄すら噛み砕き粉々にする顎を持ち、ゼパルの玉虫色の装甲を噛み砕く!

『虫ガァ!虫ガァァァァァ!!!!』

ゼパルが怯んだ隙を狙いマキシムが大剣から繰り出す衝撃波によって細くなった虫のような足を切断していく。

その身体を手足が無くなったため維持できずにゼパルは倒れ込む。

「完全に動きを封じたぞ!ディビッド!」

その姿を見て接近し別の聖典の一節を読み上げる。

『裁きの時は来た!悪しき者の頭を砕く裁きの鉄槌を!』

聖典で悪魔ダガンを殴り倒し封じた聖サンソンの大きな光る幻影が現れる!

豊かな青い髪は靡き、熱したような赤銅色に光る腕は大きな拳を作り思いっきり殴り倒しゼパルにとどめの一撃を放つ。

『アアアアア!ホロブ....イヤダ...』

ゼパルの断末魔の後、その巨体は黒い霧になって小さくなり一つの翡翠の書き板になってぼとりと落ちるとバラバラに砕けてしまう。

黒い心臓のようなビクビク動くモノが翡翠石から出てくるも一瞬にして消えてしまう...

近くには骨と皮だけになったミイラのような姿のエスタバンがうつ伏せになって倒れている。

「やったな、ディビッド」

マキシムはディビッドの肩を叩く。

「さて...あのミイラの件はお願いしていいですか?マキシム?」

「ああ、お前はバレンティナ嬢を家まで送ってやれ...」

そう言われ、ニッコリとディビッドは笑顔を見せる..なんだか若干仄暗い気がするが単純なマキシムは気が付かない。

そう言ってディビッドは去っていくとマキシムは翡翠石を拾い集める。

「あいつしか悪魔を討ち滅ぼせないからなぁ...」

そう、この世界で悪魔を討ち滅ぼす事...悪魔の心臓でもある翡翠石の書き板を砕き心臓を消し去る事ができる唯一の存在。

『悪魔の頭を打ち砕く王笏』...審判の時に『明けの明星』を滅ぼし絶やすハイラント(救い主)の系譜に繋がる世界で唯一悪魔を滅ぼす事ができる者、それが彼、ディビッド ザイオン バーレ...聖なるバーレの地の隠されし『真の王』でもある。
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