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3.ハッピーラブコメ展開よろしく
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名前を与えたことによって急に覚醒? した彼女、改めハナ。そしてその急展開にどこまでも根が素直で感受性が豊かに出来ている僕は、再度気を失いかけたのだが……
「……で、あれ? なんだっけ?」
あっけらかんと、これまた急に元の雰囲気に戻る彼女。
「……へっ?」
肩透かしを食らう僕。
「ご主人、なんだっけ? 続き」
「……」
「ねぇねぇ、ご主人! 続きぃ、何だっけ?」
……な、なんだったのっ! どうして急に戻ったのっ! ああ、返してっ! 返して僕の緊張感っ! ねぇ、返してよっ! と、どこまでも根が実直で繊細に出来ている僕は沸々と怒りが込み上げてきた。
「……し、知るかよっ! わっけわかんねぇな! お前、一体なんなんだよ!」
つい感情をあらわにして彼女を怒鳴りつけてしまった。
「……う、うぅうう」
「あ、ああ!」
ふと我に返り、急に込み上げてくる大人としての、男としての羞恥心。
「ご、ごめん! 怒鳴って悪かった! よ、よし……プ、プリン食べよう!」
「うぅううううっ……プリン食べるけどぉぉお……怖いのやだぁあ……」
「ハナ! ……さ、ん? はい、どうぞ! プリンでございます!」
「う、うぅうう……いただきますぅ……美味しいぃいい……怒鳴らないでぇ」
「……ご、ごめん」
女性を怒鳴るつけるのは男としてよくない。と、さすがに自身の軽率な行動に反省した。
「……んまいぃ……うぅううう」
泣きながらもプリンを頬張るハナ、と名前をつけた女性。……可愛い。じゃなかった、一体なんだったんだ? 今の現象は。……憑依芸? ……なわけないよな。
とにかく、不思議なことが立て続けに起きている。それだけは事実だ。僕は少し頭の中を整理した。
氏名、年齢、国籍、現住所、全てが不明であり、自称記憶喪失である。そしてその真意は定かではなく、飽く迄自称である。
知能は低く感じるが、見た目は成人している女性そのもので、海外の人間と言っても可笑しくはない容姿である。しかし、いわゆるカタコト、という外国人に見受けられる、独特のそれというものは感じられず、日本語でのコミュニケーションは問題なくとれる。
そして何よりも美人で可愛く僕のタイプ……じゃなかった、あの恐ろしいまでに人間離れした膂力。
「……ん? ご主人、もう怒ってない?」
「大丈夫、怒ってないよ」
「よかったぁあああ!」
パァっと笑う彼女に、僕の顔も緩んだ。
しかし、今さっきの現象はなんだったのだろうか。
名前を与えたとたん、一時的に過去の何かを蘇らせた。……月? ……眷属? ……台詞とか、呪文? そしてその姿は、舞台役者も顔負けなくらいに凛として華があった。
……フィジカルモンスターな売れない舞台女優? ……ああああああ! もう何もかもが滅茶苦茶すぎてわからん! 僕の頭はパンク寸前だった。
「んまぁあああああい!」
そんな僕の心情などお構いなしに、すでに泣き止み、美味しそうにプリンを食べる彼女、あらため、ハナ。
「なぁハナ」
「なぁにご主人!」
「プリン美味いか?」
「プリン美味しいぃいい!」
莞爾と笑う彼女。やっぱ最高じゃねぇか、と見惚れてしまう僕。
「ハナ」
「なぁにご主人!」
「これからどうすんだ?」
「ご主人と住む!」
「……へっ?」
「何故ならば、生涯を遂げる伴侶であるからなのであります!」
「……マジで?」
「マジマジ!」
「記憶なくて、身の上も解らない。その上で、見も知らない男と暮らすのか?」
「うん!」
「……あのなぁ」
「ご主人、良い人だよ。とっても優しい。あと、あたしのことキレイって言ってくれたし、プリンくれるし、名前つけてくれた」
「……」
「えへへぇ! プリンご馳走様でした!」
マジで可愛い。……って、ダメだダメだ! 見ようによってこれは犯罪行為! 監禁、誘拐罪? 万が一にでも捕まらずに済んだところで馘首(くび)は免れない。
……そもそもだ、彼女は本当に記憶喪失なのか? 記憶喪失モノはその人間が大概悪人と決まっている。てか、そんなオチだ。で僕は泣き崩れ、彼女は高らかに笑うのだ。
……いや待てよ、これは新手の美人局? 昨今そんな事件が多発しているしなぁ。と、悲しいが訝しく邪推してしまう自分がいた。
しかし、このハナと名付けた女性の笑顔は本当に愛らしく、屈託のないものであることに間違いはなかった。
「おい」
「ん?」
「もし俺が悪人だったらどうすんだよ」
「大丈夫だよ」
「どう大丈夫なんだよ」
「だって、あたしむっちゃ強いもん! えへへぇ!」
フィジカルモンスターハナ!
「……はぁあ……そうだった。……やべ、お腹いたい」
たしかにこいつの膂力は尋常じゃない……。重火器でもない限り勝てそうにもない。
ああ……どうあれ、僕はこいつに人生を狂わされる運命なのであろうか。……いや待てよ、もっと単純に考えて、新しい彼女出来ました、かっこ婚約してます。ついでにもう同棲もしちゃってますかっこわらい。
ってな、ご都合主義のとんでもハッピーラブコメ展開がリアルで起きた、神様奇跡ありがとう、もう二度と奇跡踏みにじらないよ、僕たち幸せになります、で良くね? うん、きっとそれでもうこの際よくね?
……と、この時は一瞬そうも考えた。それほどまでに彼女は美しく、僕にとっては純粋に見えたのだった。
「ねえねぇ、ご主人」
「……」
「ねぇねぇ」
「……」
「ごっしゅじぃいいいいいいいん!!!!!」
「うわぁ! うっせーな! 耳元で大声出すな!」
「だってぇ、バカみたいな顔でぼぉっとしてあたしのこと無視すんだもぉん」
「バ、バカだと!」
「えへへぇ。でね、ご主人」
「んーだよ」
「名前、教えて!」
「へっ? あっ、ああ、そうか、俺は……」
一瞬偽名でもいいかと思ったが、彼女の幼気で屈託のないところは真実ではあるし、何よりも後で嘘がバレたらどんな目にあわされるか想像しただけでもオゾマシイ。腕とかマジで引きちぎられそうだしなぁ。……ということで、僕は本名を名乗った。
「相葉正だ」
「あいばただしいごしゅじん」
「……」
「あいばただしごしゅじん!」
「……好きにしてくれ」
「うん! 今日からよろしくね! あいばただしごしゅじん!」
「おう、よろしくな、ハナ」
「えへへぇ」
気が付けばもう夕方を過ぎていた。
未だ理解には及ばず、超常的で言い難いことばかりだった。しかし、起きたことは起きたこと。とにかくまずは冷静に今日と言う一日を二人で生きよう、乗り越えよう。と、そう自身に言い聞かせた。
「……で、あれ? なんだっけ?」
あっけらかんと、これまた急に元の雰囲気に戻る彼女。
「……へっ?」
肩透かしを食らう僕。
「ご主人、なんだっけ? 続き」
「……」
「ねぇねぇ、ご主人! 続きぃ、何だっけ?」
……な、なんだったのっ! どうして急に戻ったのっ! ああ、返してっ! 返して僕の緊張感っ! ねぇ、返してよっ! と、どこまでも根が実直で繊細に出来ている僕は沸々と怒りが込み上げてきた。
「……し、知るかよっ! わっけわかんねぇな! お前、一体なんなんだよ!」
つい感情をあらわにして彼女を怒鳴りつけてしまった。
「……う、うぅうう」
「あ、ああ!」
ふと我に返り、急に込み上げてくる大人としての、男としての羞恥心。
「ご、ごめん! 怒鳴って悪かった! よ、よし……プ、プリン食べよう!」
「うぅううううっ……プリン食べるけどぉぉお……怖いのやだぁあ……」
「ハナ! ……さ、ん? はい、どうぞ! プリンでございます!」
「う、うぅうう……いただきますぅ……美味しいぃいい……怒鳴らないでぇ」
「……ご、ごめん」
女性を怒鳴るつけるのは男としてよくない。と、さすがに自身の軽率な行動に反省した。
「……んまいぃ……うぅううう」
泣きながらもプリンを頬張るハナ、と名前をつけた女性。……可愛い。じゃなかった、一体なんだったんだ? 今の現象は。……憑依芸? ……なわけないよな。
とにかく、不思議なことが立て続けに起きている。それだけは事実だ。僕は少し頭の中を整理した。
氏名、年齢、国籍、現住所、全てが不明であり、自称記憶喪失である。そしてその真意は定かではなく、飽く迄自称である。
知能は低く感じるが、見た目は成人している女性そのもので、海外の人間と言っても可笑しくはない容姿である。しかし、いわゆるカタコト、という外国人に見受けられる、独特のそれというものは感じられず、日本語でのコミュニケーションは問題なくとれる。
そして何よりも美人で可愛く僕のタイプ……じゃなかった、あの恐ろしいまでに人間離れした膂力。
「……ん? ご主人、もう怒ってない?」
「大丈夫、怒ってないよ」
「よかったぁあああ!」
パァっと笑う彼女に、僕の顔も緩んだ。
しかし、今さっきの現象はなんだったのだろうか。
名前を与えたとたん、一時的に過去の何かを蘇らせた。……月? ……眷属? ……台詞とか、呪文? そしてその姿は、舞台役者も顔負けなくらいに凛として華があった。
……フィジカルモンスターな売れない舞台女優? ……ああああああ! もう何もかもが滅茶苦茶すぎてわからん! 僕の頭はパンク寸前だった。
「んまぁあああああい!」
そんな僕の心情などお構いなしに、すでに泣き止み、美味しそうにプリンを食べる彼女、あらため、ハナ。
「なぁハナ」
「なぁにご主人!」
「プリン美味いか?」
「プリン美味しいぃいい!」
莞爾と笑う彼女。やっぱ最高じゃねぇか、と見惚れてしまう僕。
「ハナ」
「なぁにご主人!」
「これからどうすんだ?」
「ご主人と住む!」
「……へっ?」
「何故ならば、生涯を遂げる伴侶であるからなのであります!」
「……マジで?」
「マジマジ!」
「記憶なくて、身の上も解らない。その上で、見も知らない男と暮らすのか?」
「うん!」
「……あのなぁ」
「ご主人、良い人だよ。とっても優しい。あと、あたしのことキレイって言ってくれたし、プリンくれるし、名前つけてくれた」
「……」
「えへへぇ! プリンご馳走様でした!」
マジで可愛い。……って、ダメだダメだ! 見ようによってこれは犯罪行為! 監禁、誘拐罪? 万が一にでも捕まらずに済んだところで馘首(くび)は免れない。
……そもそもだ、彼女は本当に記憶喪失なのか? 記憶喪失モノはその人間が大概悪人と決まっている。てか、そんなオチだ。で僕は泣き崩れ、彼女は高らかに笑うのだ。
……いや待てよ、これは新手の美人局? 昨今そんな事件が多発しているしなぁ。と、悲しいが訝しく邪推してしまう自分がいた。
しかし、このハナと名付けた女性の笑顔は本当に愛らしく、屈託のないものであることに間違いはなかった。
「おい」
「ん?」
「もし俺が悪人だったらどうすんだよ」
「大丈夫だよ」
「どう大丈夫なんだよ」
「だって、あたしむっちゃ強いもん! えへへぇ!」
フィジカルモンスターハナ!
「……はぁあ……そうだった。……やべ、お腹いたい」
たしかにこいつの膂力は尋常じゃない……。重火器でもない限り勝てそうにもない。
ああ……どうあれ、僕はこいつに人生を狂わされる運命なのであろうか。……いや待てよ、もっと単純に考えて、新しい彼女出来ました、かっこ婚約してます。ついでにもう同棲もしちゃってますかっこわらい。
ってな、ご都合主義のとんでもハッピーラブコメ展開がリアルで起きた、神様奇跡ありがとう、もう二度と奇跡踏みにじらないよ、僕たち幸せになります、で良くね? うん、きっとそれでもうこの際よくね?
……と、この時は一瞬そうも考えた。それほどまでに彼女は美しく、僕にとっては純粋に見えたのだった。
「ねえねぇ、ご主人」
「……」
「ねぇねぇ」
「……」
「ごっしゅじぃいいいいいいいん!!!!!」
「うわぁ! うっせーな! 耳元で大声出すな!」
「だってぇ、バカみたいな顔でぼぉっとしてあたしのこと無視すんだもぉん」
「バ、バカだと!」
「えへへぇ。でね、ご主人」
「んーだよ」
「名前、教えて!」
「へっ? あっ、ああ、そうか、俺は……」
一瞬偽名でもいいかと思ったが、彼女の幼気で屈託のないところは真実ではあるし、何よりも後で嘘がバレたらどんな目にあわされるか想像しただけでもオゾマシイ。腕とかマジで引きちぎられそうだしなぁ。……ということで、僕は本名を名乗った。
「相葉正だ」
「あいばただしいごしゅじん」
「……」
「あいばただしごしゅじん!」
「……好きにしてくれ」
「うん! 今日からよろしくね! あいばただしごしゅじん!」
「おう、よろしくな、ハナ」
「えへへぇ」
気が付けばもう夕方を過ぎていた。
未だ理解には及ばず、超常的で言い難いことばかりだった。しかし、起きたことは起きたこと。とにかくまずは冷静に今日と言う一日を二人で生きよう、乗り越えよう。と、そう自身に言い聞かせた。
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