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幸せと不幸せの形

思わぬ再会

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久しぶりに以前住んでいた街の近くに来た。

久しぶりと言ってもまだ1か月程ではあるが、俺には少し懐かしく感じた。

娘の通うこの聖林学園は小等学部、中等学部、高等学部とエスカレーター式で校舎は分かれてはいるが、同じ敷地内にある。

娘は中等部(中学)の二年生だ。

クラスまでは把握していないが、数日も行方知れずになっているので噂になっているかもしれない。

事情を知っている友達や、知人が学校にいてもおかしくない。

手掛かりがない今は、学校で探るしかない。

中等部の校舎をウロウロしていたら、急に胸騒ぎと視線を感じた。

気味が悪い胸騒ぎとは何か違って、もうある筈のない心臓から血液の流れる音が聞こえて来るような、何とも言えない感覚。

誰にも見えるはずのない死んだ俺を見つめる視線。

一度感じた事があるような感覚だった。

だが、周りを見渡しても分からない、沢山の学生がいて誰にも俺は見えていない。

気のせいだろう。

この胸騒ぎの正体は分からなかったが、ひとまず二年生の校舎を昼休みの時間、しらみ潰しに回ってみる事にした。

中等部は1組から5組までクラスがあった、時間はすでに夕方、放課後だったので部活に行っているであろう生徒もいるのだろう。

生徒の数もまばらではあったが教室に残った生徒たちが楽しそうに談笑していた。

他愛もない話で盛り上がっている中学生達。

あの少女は確か2年3組だ、該当する教室に向かった。

何人かの生徒の話に耳を傾けていると、ふと聞き覚えのある名前を口にしている生徒がいた。

「えっ!マジ??まだ星野さん見つかってないの?やばくね?」

「らしいよ!親が捜索願い出したって聞いたけど」

星野はあの娘の苗字だ、名前は確か星野みよ。

「でもさぁ、やっぱ原因ってあれじゃない?」

「よくパシられてたじゃん?たまに呼び出しくらってたっしょ、1組のあのグループから」

「ああ、いつも一人だったし1組のやつらとは友達って感じじゃなかったもんねぇ」

「まっ、知らんけどぉ~」

「あっ、もうこんな時間!帰ろうよー今からカラオケ行かない?!」

「いいね!いこいこー」

少女達はそのまま教室を出て行った。

1組のグループ??パシられてた??

いじめでも受けていたのか??

いつも一人って事は学校で友達はいないのか…

手掛かりは少し掴めたように感じたが、1組のグループってだけでは誰かは特定出来ない。

名前教えろよ…俺が生きてたら…話しかけることが出来たら…

死んでいなければ…幽霊って漫画みたいに自由じゃないんだな、何にも出来ない。

漫画アニメじゃ、人の体に入ったり出来たり、物を動かせたり、好きなように出来るのに。

何もできねーじゃん…

ひとまず、中等部の校舎を出た。

そして無力な自分落胆していたその時、またあの胸騒ぎがした。

また先程と同じ視線を感じたその時、聞き覚えのある声がした。



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