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幸せと不幸せの形

収穫

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娘の部屋は綺麗に整頓されており、不審な物も特に見当たらない。

両親も捜索願いを出す前に調べているだろうし、何かあればそれについて話していた筈だ。

だが、何も分からないような口ぶりで言い争っていたのを既に聞いていた俺はこの部屋に安易に何か手掛かりが見つかるなどとは期待はしていなかった。


綺麗に片付けられた部屋、勉強机には教科書やノートが並べられており、本棚に文庫本が沢山あった。

今時の若い子達が読みそうなライトノベルのような小説だ。

作者は全て同じだ、きっとこの作家が好きなのだろう。

だが、若い年頃の女の子にしては少し殺風景だ。

可愛いぬいぐるみがある訳でもない、服はクローゼットの中にいくらかはあるだろうが部屋には見当たらない。

逆に不自然な様にも感じられた。

机の引き出しには鍵が掛かっている。

駄目だ、鍵がないとこれは開けられない。

鍵の居場所も分からないし、万が一わかった所で俺には物に触れられないので開ける事が出来ない。

再び本棚に目を向けた、違和感を感じたからだ。

1巻から8巻までズラッと綺麗に並べられたライトノベル。

全て同じ作者の作品で異世界のファンタジー物のようだ、作者の名前は桜澤あかり。

しかし、4巻だけがない。間に入っているのも桜澤あかりの作品だが違うタイトル作品の一巻で完結型のライトノベルだ。

しかもそれは逆さになっている。

妙だ、何かあるのか?ダイニングメッセージ?これは収穫だった。

そして勉強机を見たがスッキリ片づけられている。何か他にないか調べてみる。

机に娘が通っている学校のプリントが置いてあった、当然学校の名前も書いてあった。

何か学校に行けば分かるかもしれない。

だが、この学校に行くかどうか少し戸惑った。

この学校の通学路で俺は死んだ。

俺が住んでいた街だ。

正直もうあの街には近寄りたくない。

通夜から1か月近く経つが、まだ気持ちがモヤモヤしていたからだ。

このまま何もしなければ良い、娘の行方が気になるのはただの好奇心に近い感情だ。

ただ、気晴らしも少ししたかった、ずっとこのマンションでダラダラ人間観察をしているのもつまらない。

何も手掛かりが無ければそれで終わりにすれば良い。

結局俺はこの行方不明になった娘の通う学校へ行ってみる事にした。
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