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幸せと不幸せの形
不幸せのかたち
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マンションの住人を観察する日々が続いて自分自身にも心境の変化があった。
側から見て幸せそうな他人にもそれぞれ込み入った事情を抱えて生きている事。
俺は生きていた頃は他人ですら同情するような恵まれない人生を送って来た。
自分の生い立ちは恥ずかしくてあまり人に話す機会は無かったが、やむを得ず話さなければならない時に何回か話した事があった。
皆に気の毒だと同情された。
他人が同情する人生なんてロクなものじゃない。恥でしか無い。
何の幸せも感じる事もないまま人生の幕を閉じた俺には、他人が幸せそうに見えた。
両親がいるから、裕福だから、愛されているから、だから幸せか??
きっと必ずしもそうではない。
人それぞれ価値観や生き方、考え方、育ち方が違う。
違って当たり前だ。
だけど生きていた頃は俺は他人が羨ましかった。
両親がいる、家族がいる家庭が幸せそうに見えた。
金があるやつが勝ち組に見えた。
このマンションを観察して、少しずつ自分が描いていた価値観や考え方が間違っていたんじゃないか…とすら思えた。
死んだ今そんな事を考えても仕方のない事だ。
そして801号室の家族に異変が起きた。
暫く元気のなかったあの娘が帰宅していないのだ。
一日ではない、数日帰って来ていない。
家族の中で言い争いも起きているようだ。
誰のせいだとか、原因はなんなのかとか今言っても仕方がない下らない内容だ。
両親は捜索願いを出したようだ。
確かに娘は元気が無いように見えたが、何があったのか俺には見当も付かない。
ただ、俺は他人には見えないので、このマンションの中に入っても特に問題はない。
あの娘の部屋にも入る事が出来る。
何か手掛かりが見つかるかもしれない。
ただよくあるマンガみたいに勝手に物に触れたり人に触れる事は出来ない。
俺が出来る事は限られている。
見る事、動く事その程度だ。
他人にも物にも全ての事に干渉する事は許されない、俺はただの浮遊霊だからだ。
この事態に俺は干渉する必要はない。
この家庭がどうなろうが関係ない。
ただの暇つぶしに観察していただけのマンションの住人だ。他人でしかない。
それに幽霊の俺には何もできないからだ。
俺は久々に頭を悩ませた、何も出来ないからただ見ているだけの自分。
それでいいのか?何も行動せずただ傍観するのか。
何か出来る事があるかもしれないのに。
ただ、俺はあの娘とは何の面識も無い、情もない。
何故行動する必要がある?
それは俺にも分からない。
自問自答した。
娘の部屋に入る事は出来ても何も手掛かりが無ければ意味はない。
結局結論が出ないまま、悩みながらも娘の部屋に足を踏み入れた。
側から見て幸せそうな他人にもそれぞれ込み入った事情を抱えて生きている事。
俺は生きていた頃は他人ですら同情するような恵まれない人生を送って来た。
自分の生い立ちは恥ずかしくてあまり人に話す機会は無かったが、やむを得ず話さなければならない時に何回か話した事があった。
皆に気の毒だと同情された。
他人が同情する人生なんてロクなものじゃない。恥でしか無い。
何の幸せも感じる事もないまま人生の幕を閉じた俺には、他人が幸せそうに見えた。
両親がいるから、裕福だから、愛されているから、だから幸せか??
きっと必ずしもそうではない。
人それぞれ価値観や生き方、考え方、育ち方が違う。
違って当たり前だ。
だけど生きていた頃は俺は他人が羨ましかった。
両親がいる、家族がいる家庭が幸せそうに見えた。
金があるやつが勝ち組に見えた。
このマンションを観察して、少しずつ自分が描いていた価値観や考え方が間違っていたんじゃないか…とすら思えた。
死んだ今そんな事を考えても仕方のない事だ。
そして801号室の家族に異変が起きた。
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一日ではない、数日帰って来ていない。
家族の中で言い争いも起きているようだ。
誰のせいだとか、原因はなんなのかとか今言っても仕方がない下らない内容だ。
両親は捜索願いを出したようだ。
確かに娘は元気が無いように見えたが、何があったのか俺には見当も付かない。
ただ、俺は他人には見えないので、このマンションの中に入っても特に問題はない。
あの娘の部屋にも入る事が出来る。
何か手掛かりが見つかるかもしれない。
ただよくあるマンガみたいに勝手に物に触れたり人に触れる事は出来ない。
俺が出来る事は限られている。
見る事、動く事その程度だ。
他人にも物にも全ての事に干渉する事は許されない、俺はただの浮遊霊だからだ。
この事態に俺は干渉する必要はない。
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それに幽霊の俺には何もできないからだ。
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それでいいのか?何も行動せずただ傍観するのか。
何か出来る事があるかもしれないのに。
ただ、俺はあの娘とは何の面識も無い、情もない。
何故行動する必要がある?
それは俺にも分からない。
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結局結論が出ないまま、悩みながらも娘の部屋に足を踏み入れた。
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