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出会い

嘘吐きだらけの世界

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死んだ後の自分がどうなったのか気になったので、通夜の様子を見に行った。

特別やる事もないし、通夜に誰が来るのか少し気になった。

生きている時は、自分が死んだら葬式に来て泣いてくれる人はいるか?とか下らない事を考えたものだ。

実際自分が死んでその様子を見れるなんて夢にも思わなかったが。

俺が車に轢かれた日の夜、慎ましやかに通夜が行われた。

やはり、母親は来ない。

だが、引き取ってくれた叔母はやって来た。

あとは会社の上司や同僚も来た。

そしてあの時に庇った小学生とその両親らしき人も参列にやって来た。

しきりに叔母に謝っていた。

叔母に謝ったって仕方ないのに。

「本当に何と申し上げたら良いのか…
 うぅっ…うちの息子の為に…申し訳ありません…」

母親らしき人はあの子を庇ったせいで俺が死んだ事に責任を感じているようだ。

当然と言えば当然かもしれないが、俺はあの子を助けたいとかそんな正義感で庇った訳じゃない。

だが、叔母が言った一言には笑った。

「うちの甥っ子は昔から正義感の強い子でしたから…きっと本望だと思います。
どうか、顔を上げて下さい。」

は???何を言ってんだよ。

いつも迷惑そうな顔して、自分の子供と俺と明らかに区別して毛嫌いして違う飯食わしてた癖に。

5歳だったこの俺に毎日暴言ばかり吐き捨てて、早く自立して出て行けと言っていたあの叔母が…


16で出て行くと言った俺にせいせいすると言い放った叔母からそんな言葉が出た事に驚きより呆れた。

この両親から金でも巻き上げる気じゃないのか??

死んだからって好き放題だな、気色悪い事いいやがって。

吐き気がした。


職場の嫌いな上司も

「いつも真面目で一生懸命なやつでした、くっ…ううっ」

いつも使えねぇとかゴミだとか言ってたあの上司が泣いている。

まぁ嘘泣きだよ、どいつもこいつも気色悪い。

俺が死んだ事で汚いやつらは仮面を被って悲しい演技をして泣いている。

本当に悲しんでくれてるのは俺を知ってる家族でも親戚でも会社のやつらでもなく、他人だなんて笑えるな。

それに泣いているのは悲しいからじゃなく、自分の子供を庇ったせいで死んだという罪悪感。

そんなもの感じて欲しくない。

嘘で固められた胡散臭いやつらをみて胸糞悪いだけじゃねぇか。

最悪の気分だった。

通夜なんか来るんじゃ無かった。

葬式にも行くのはやめよう。

そう誓った。
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