上 下
1 / 16
終わりからの始まり

いつも通りの朝

しおりを挟む
俺は何の為に生まれたんだろう。

自分の価値も見出せず、ただひたすらがむしゃらに生きているだけ。

そんな人生だった。

生まれた時から父親はおらず母親に育てられたが、新しい恋人が出来て邪魔になったのか、のちに捨てられた。

そして母方の親戚に引き取られたが、実の子でも無い俺は可愛がられる訳もなく、煙たがられ育った。

母親は行方しれずのままだ。

親戚の家は居心地は悪かったが、引き取って貰えただけマシだと思った。

16になった時、家を出て定時制に通いながらひたすらバイトに明け暮れた。

唯一生きる為に働いているだけの人生だった。

ひたすら真面目に働いていたお陰でずっとバイトしていた店でそのまま就職しないかと言われて社員になった。

だが、社員になった途端に激務になった。

だが自分には仕事以外何もなかった。

生きたいと言う執着も。

信頼出来る友達も家族もいない。

何故か?実の親には捨てられて親族にすら冷たくされて他人に心を開けるわけがない。

誰も信用出来なかった。金と自分しか信じられなかった。

仕事でやりがいも感じない。

何故生きているのかすら分からないつまらない人間だった。

だけど自ら命を断つ勇気がなかった。
だから仕方なく生きている、ただそれだけ。
仕方ない、仕方ないんだと
そう言い聞かせて、
ただ静かに息をして陽の光を浴びた人達の影でそっと身を潜めるように生きている。

いつも通り朝起きて気怠いまま、自宅を出た。
会社に行く為に駅に向かう足どりは重い。
朝飯も食べずに出勤するのは日常茶飯事だ。

周りの人も街も忙しない。
みんな俺と同じ冴えない顔をしてる。
そんないつもの朝だった。

しおりを挟む

処理中です...