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え。待って……待って。私……ハビエル様と、このまま結婚するの?
信じられない。ただ異性との会話の練習を、しようと思っただけなのよ。
ハビエル様はとある部屋へと入ると、驚き過ぎて何も言えなくなっている私を椅子に座らせて、何故かベッドの上にあった毛布を持って窓から出た。
……え? 何しています? なんで、窓から出たの? っていうか、私ここから何をしたら良いですか?
もう、何がなんだかわからなくて、全く現実味がないんですけど……?
というか、なんだか、廊下を歩いていた時、一夜を共にすると勘違いしているなら、舌を噛むしかないと思い込んでいた私がとても恥ずかしい。
……真面目そうなハビエル様は、きっとそういうことをするなら、結婚する流れでないと考えてくれるとても誠実な男性なのに。
けど、結婚する前に私……マチルダ様に、狙われて暗殺されない? 城の近くにある湖に浮かばない?
もしかして、皆は王家の末姫の勘気にふれるのを恐れて、ハビエル様には「あの人には近付かない方が、身のためよね」みたいな、そんなふわっとした噂がまことしやかに流れていたってこと?
だから……こんなにも、すごく人気の騎士団長様なのに、浮いた話ひとつ聞いたことがなかったんだ……。
きっと、ひそひそ噂している令嬢たちも、なんとなくそれを察していた暗黙の了解で、社交界デビューしたばかりの私たちは、とにかくそういうことにしておこうっていう表向きの理由しかまだ知らなくて……それで……会話の練習相手に、彼を安易に選んでしまったんだ。
「シャーロット。今夜は気温もちょうど良いし、星空を見上げながら眠ろう。朝日が出たら、送って行くよ」
すっと軽い動作でまた私を横抱きにしたハビエル様は、窓からすぐの屋根の上に敷いた毛布の上に私を寝かせてくれた。
屋根の上とは言え、外で寝るのは危険でない……? と思ったけど、彼は騎士団長で、きっとここは騎士団寮。危険が入り込む隙もない安全な場所なのかもしれない。
え……本当に信じられないけど、声を掛けてくれていた男性とダンスを踊っていた頃から、一時間も経っていないのに今まで絶対に想像もしなかった未来に私は居るんだわ。
なんだか、遠い目になりながら、私は満天の星を見上げた。
「……綺麗」
綺麗な星空には、罪はない。
「星、綺麗だな」
すぐ横を見れば私の隣に寝そべるハビエル様の整った顔、なんだかすごく嬉しそうだし楽しそう。やっぱり、マチルダ様に邪魔され続けて……女性は、彼に近付かないままだったのかな。
「……はい」
私が彼の言葉に同意すれば浮かべた無邪気な笑顔だって、なんだか可愛いし、それとなく大きな手を繋いでくれているのも嬉しい。
星空見上げて二人で眠るって、ロマンチックだし……失礼かもしれないけど、恋愛に対し異常に夢を見ていそう。あしらうなんて考えても居なさそうで、なんだか、本当に女性慣れはしてなさそう。
もしかしなくても……ハビエル様って、自分が若い女性たちにとてもモテてるとか、全然気がついてなさそう。
あんなにわかりやすいマチルダ様の好意にも、鈍感過ぎてまったく気が付いなかったようだし……それも、マチルダ様が目を光らせていて、仕方ないのかな……。
まぁ……な、なんとかなるよ……ね?
ハビエル様だって、騎士団長で、お強いだろうし……私の事を、守ってくれるはず。
多分……きっと……大丈夫……なはずだから。
……うん。
特上の結婚相手を意図せず捕まえてしまったことで、発生してしまった心配事は、明日以降の私に全部任せて、とりあえず今は目を閉じることにした。
fin!
信じられない。ただ異性との会話の練習を、しようと思っただけなのよ。
ハビエル様はとある部屋へと入ると、驚き過ぎて何も言えなくなっている私を椅子に座らせて、何故かベッドの上にあった毛布を持って窓から出た。
……え? 何しています? なんで、窓から出たの? っていうか、私ここから何をしたら良いですか?
もう、何がなんだかわからなくて、全く現実味がないんですけど……?
というか、なんだか、廊下を歩いていた時、一夜を共にすると勘違いしているなら、舌を噛むしかないと思い込んでいた私がとても恥ずかしい。
……真面目そうなハビエル様は、きっとそういうことをするなら、結婚する流れでないと考えてくれるとても誠実な男性なのに。
けど、結婚する前に私……マチルダ様に、狙われて暗殺されない? 城の近くにある湖に浮かばない?
もしかして、皆は王家の末姫の勘気にふれるのを恐れて、ハビエル様には「あの人には近付かない方が、身のためよね」みたいな、そんなふわっとした噂がまことしやかに流れていたってこと?
だから……こんなにも、すごく人気の騎士団長様なのに、浮いた話ひとつ聞いたことがなかったんだ……。
きっと、ひそひそ噂している令嬢たちも、なんとなくそれを察していた暗黙の了解で、社交界デビューしたばかりの私たちは、とにかくそういうことにしておこうっていう表向きの理由しかまだ知らなくて……それで……会話の練習相手に、彼を安易に選んでしまったんだ。
「シャーロット。今夜は気温もちょうど良いし、星空を見上げながら眠ろう。朝日が出たら、送って行くよ」
すっと軽い動作でまた私を横抱きにしたハビエル様は、窓からすぐの屋根の上に敷いた毛布の上に私を寝かせてくれた。
屋根の上とは言え、外で寝るのは危険でない……? と思ったけど、彼は騎士団長で、きっとここは騎士団寮。危険が入り込む隙もない安全な場所なのかもしれない。
え……本当に信じられないけど、声を掛けてくれていた男性とダンスを踊っていた頃から、一時間も経っていないのに今まで絶対に想像もしなかった未来に私は居るんだわ。
なんだか、遠い目になりながら、私は満天の星を見上げた。
「……綺麗」
綺麗な星空には、罪はない。
「星、綺麗だな」
すぐ横を見れば私の隣に寝そべるハビエル様の整った顔、なんだかすごく嬉しそうだし楽しそう。やっぱり、マチルダ様に邪魔され続けて……女性は、彼に近付かないままだったのかな。
「……はい」
私が彼の言葉に同意すれば浮かべた無邪気な笑顔だって、なんだか可愛いし、それとなく大きな手を繋いでくれているのも嬉しい。
星空見上げて二人で眠るって、ロマンチックだし……失礼かもしれないけど、恋愛に対し異常に夢を見ていそう。あしらうなんて考えても居なさそうで、なんだか、本当に女性慣れはしてなさそう。
もしかしなくても……ハビエル様って、自分が若い女性たちにとてもモテてるとか、全然気がついてなさそう。
あんなにわかりやすいマチルダ様の好意にも、鈍感過ぎてまったく気が付いなかったようだし……それも、マチルダ様が目を光らせていて、仕方ないのかな……。
まぁ……な、なんとかなるよ……ね?
ハビエル様だって、騎士団長で、お強いだろうし……私の事を、守ってくれるはず。
多分……きっと……大丈夫……なはずだから。
……うん。
特上の結婚相手を意図せず捕まえてしまったことで、発生してしまった心配事は、明日以降の私に全部任せて、とりあえず今は目を閉じることにした。
fin!
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感想ありがとうございます♡
すごく意地悪されそうですよね。。( ᵒ̴̶̷᷄௰ᵒ̴̶̷᷅ )(大丈夫かな)