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08 気がついてない

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 確かに、私とのこれまでの流れから考えると、ハビエル様、女性の気持ちを察するってことなんて全く出来なくて、とても鈍感そう。

 ……え、私と夜を過ごそうと誘われたと誤解して、声を掛けてくれて嬉しいとばかりに、結婚まで決めてしまうつもりなの?

 話が早過ぎる展開に、この場で目を白黒させていなかったのは、ハビエル様本人おひとりだと思う。

「俺はこの可愛らしい令嬢を逃せば、一生結婚出来ないと思う。だから、俺は彼女と結婚することにする。もう決めた」

「……待ちなさい。ハビエル。あまりにも短絡的な考えだわ」

 ええ。王妃様、その通りだと思います……!

「そうよ! お兄様……その子は一体、誰なの?」

 絶対に知られたくないと思ってしまった……刃物のような鋭い視線を向けるマチルダ様の誰何の問いかけに、私は全身を緊張させてしまった。

「あ。済まない。名前を聞いていなかった」

 私が言うのもなんですけど、名前も知らない人と、結婚するつもりだったんです……!?

 マチルダ様には、私が誰か知られたくない。しかし、私の名前を待っている様子の王家を待たせるなんて、臣下たる貴族として出来ない……!

「しゃ、シャーロット・アヴェルラークっ……です」

 流石に言い慣れた名前は噛まずに言えて、部屋の中に居た身分の高い面々は、同じ家名を持つ私のお父様を思い浮かべたようだった。

「ああ。この子……ご令嬢が、アヴェルラーク伯の一人娘か……ハビエル、それで良いのか? お前は、伯爵になることになるが」

「はい。俺の場合、兄が二人居るので、爵位持ちのご令嬢に声を掛けて貰えて、ちょうど良かったです。ありがとう。声を掛けてくれて」

 私に向けて感謝を述べ、にこにこと満足そうなハビエル様。

 俺に、声を掛けてくれて……?

 ……あ……マチルダ様のご意向が貴族内から忖度されて、ハビエル様が持ちかけた縁談だって早々に断られ、異性から誰からも声をかけられず、遠巻きにされていたってこと?

 それはそれで、なんだか、可哀想かもしれない……だって、貴族の男性なら、身分の釣り合う貴族令嬢以外から、声は掛けにくいもの。

「という訳で、近いうちにシャーロットと結婚しますので、よろしくお願いします!」

 はきはきとダメ押しのように結婚宣言したハビエル様は、用は終わったとばかりに私を抱いたまま、呆然とした面々を置き去りに部屋を出た。

「……今夜は帰りたくはないと言っていたが……それは、流石に結婚式の後にしよう。俺たちの婚約は早々に発表するが、式となれば、時間は掛かるだろうから」

 照れたような可愛らしい顔でそう言われても、私は怒涛のように押し寄せてくる新事実な展開にまだ心が付いていけていない。

 ……もしかして、着々と結婚式へと向かっています? 私たち。ていうか、今現在、軽い足取りで何処に向かっています?

 私が城内で行ったこともないような方向に、長い足でスタスタと進んでいらっしゃいますよね?
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