8 / 9
08 気がついてない
しおりを挟む
確かに、私とのこれまでの流れから考えると、ハビエル様、女性の気持ちを察するってことなんて全く出来なくて、とても鈍感そう。
……え、私と夜を過ごそうと誘われたと誤解して、声を掛けてくれて嬉しいとばかりに、結婚まで決めてしまうつもりなの?
話が早過ぎる展開に、この場で目を白黒させていなかったのは、ハビエル様本人おひとりだと思う。
「俺はこの可愛らしい令嬢を逃せば、一生結婚出来ないと思う。だから、俺は彼女と結婚することにする。もう決めた」
「……待ちなさい。ハビエル。あまりにも短絡的な考えだわ」
ええ。王妃様、その通りだと思います……!
「そうよ! お兄様……その子は一体、誰なの?」
絶対に知られたくないと思ってしまった……刃物のような鋭い視線を向けるマチルダ様の誰何の問いかけに、私は全身を緊張させてしまった。
「あ。済まない。名前を聞いていなかった」
私が言うのもなんですけど、名前も知らない人と、結婚するつもりだったんです……!?
マチルダ様には、私が誰か知られたくない。しかし、私の名前を待っている様子の王家を待たせるなんて、臣下たる貴族として出来ない……!
「しゃ、シャーロット・アヴェルラークっ……です」
流石に言い慣れた名前は噛まずに言えて、部屋の中に居た身分の高い面々は、同じ家名を持つ私のお父様を思い浮かべたようだった。
「ああ。この子……ご令嬢が、アヴェルラーク伯の一人娘か……ハビエル、それで良いのか? お前は、伯爵になることになるが」
「はい。俺の場合、兄が二人居るので、爵位持ちのご令嬢に声を掛けて貰えて、ちょうど良かったです。ありがとう。声を掛けてくれて」
私に向けて感謝を述べ、にこにこと満足そうなハビエル様。
俺に、声を掛けてくれて……?
……あ……マチルダ様のご意向が貴族内から忖度されて、ハビエル様が持ちかけた縁談だって早々に断られ、異性から誰からも声をかけられず、遠巻きにされていたってこと?
それはそれで、なんだか、可哀想かもしれない……だって、貴族の男性なら、身分の釣り合う貴族令嬢以外から、声は掛けにくいもの。
「という訳で、近いうちにシャーロットと結婚しますので、よろしくお願いします!」
はきはきとダメ押しのように結婚宣言したハビエル様は、用は終わったとばかりに私を抱いたまま、呆然とした面々を置き去りに部屋を出た。
「……今夜は帰りたくはないと言っていたが……それは、流石に結婚式の後にしよう。俺たちの婚約は早々に発表するが、式となれば、時間は掛かるだろうから」
照れたような可愛らしい顔でそう言われても、私は怒涛のように押し寄せてくる新事実な展開にまだ心が付いていけていない。
……もしかして、着々と結婚式へと向かっています? 私たち。ていうか、今現在、軽い足取りで何処に向かっています?
私が城内で行ったこともないような方向に、長い足でスタスタと進んでいらっしゃいますよね?
……え、私と夜を過ごそうと誘われたと誤解して、声を掛けてくれて嬉しいとばかりに、結婚まで決めてしまうつもりなの?
話が早過ぎる展開に、この場で目を白黒させていなかったのは、ハビエル様本人おひとりだと思う。
「俺はこの可愛らしい令嬢を逃せば、一生結婚出来ないと思う。だから、俺は彼女と結婚することにする。もう決めた」
「……待ちなさい。ハビエル。あまりにも短絡的な考えだわ」
ええ。王妃様、その通りだと思います……!
「そうよ! お兄様……その子は一体、誰なの?」
絶対に知られたくないと思ってしまった……刃物のような鋭い視線を向けるマチルダ様の誰何の問いかけに、私は全身を緊張させてしまった。
「あ。済まない。名前を聞いていなかった」
私が言うのもなんですけど、名前も知らない人と、結婚するつもりだったんです……!?
マチルダ様には、私が誰か知られたくない。しかし、私の名前を待っている様子の王家を待たせるなんて、臣下たる貴族として出来ない……!
「しゃ、シャーロット・アヴェルラークっ……です」
流石に言い慣れた名前は噛まずに言えて、部屋の中に居た身分の高い面々は、同じ家名を持つ私のお父様を思い浮かべたようだった。
「ああ。この子……ご令嬢が、アヴェルラーク伯の一人娘か……ハビエル、それで良いのか? お前は、伯爵になることになるが」
「はい。俺の場合、兄が二人居るので、爵位持ちのご令嬢に声を掛けて貰えて、ちょうど良かったです。ありがとう。声を掛けてくれて」
私に向けて感謝を述べ、にこにこと満足そうなハビエル様。
俺に、声を掛けてくれて……?
……あ……マチルダ様のご意向が貴族内から忖度されて、ハビエル様が持ちかけた縁談だって早々に断られ、異性から誰からも声をかけられず、遠巻きにされていたってこと?
それはそれで、なんだか、可哀想かもしれない……だって、貴族の男性なら、身分の釣り合う貴族令嬢以外から、声は掛けにくいもの。
「という訳で、近いうちにシャーロットと結婚しますので、よろしくお願いします!」
はきはきとダメ押しのように結婚宣言したハビエル様は、用は終わったとばかりに私を抱いたまま、呆然とした面々を置き去りに部屋を出た。
「……今夜は帰りたくはないと言っていたが……それは、流石に結婚式の後にしよう。俺たちの婚約は早々に発表するが、式となれば、時間は掛かるだろうから」
照れたような可愛らしい顔でそう言われても、私は怒涛のように押し寄せてくる新事実な展開にまだ心が付いていけていない。
……もしかして、着々と結婚式へと向かっています? 私たち。ていうか、今現在、軽い足取りで何処に向かっています?
私が城内で行ったこともないような方向に、長い足でスタスタと進んでいらっしゃいますよね?
396
お気に入りに追加
568
あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【完結】私を嫌ってたハズの義弟が、突然シスコンになったんですが!?
miniko
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢のキャサリンは、ある日突然、原因不明の意識障害で倒れてしまう。
一週間後に目覚めた彼女は、自分を嫌っていた筈の義弟の態度がすっかり変わってしまい、極度のシスコンになった事に戸惑いを隠せない。
彼にどんな心境の変化があったのか?
そして、キャサリンの意識障害の原因とは?
※設定の甘さや、ご都合主義の展開が有るかと思いますが、ご容赦ください。
※サスペンス要素は有りますが、難しいお話は書けない作者です。
※作中に登場する薬や植物は架空の物です。

やさしい・悪役令嬢
きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」
と、親切に忠告してあげただけだった。
それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。
友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。
あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。
美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです

【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。
櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。
生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。
このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。
運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。
ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる