4 / 9
04 仕事中
しおりを挟む
今夜、ハビエル様は壇上に居られる国王陛下の護衛任務に就いているようだった。私はそんな彼の傍に近付いたので、怪訝そうな顔になっていた。
「ん? ……何か、用だろうか?」
生半可な女性では絶対に落ちないと噂の騎士団長ハビエル・クラレット様を、この時に初めて間近で見たんだけど、本当に驚いてしまうくらいに素敵な人だった。
長身で見上げなければ顔を見ることも出来ないけど、サラサラの黒髪に印象的な青い目……そして、団長のみの特殊な意匠のあるかっちりとした騎士団服を纏った、筋肉質な見事な肉体。
無言でまじまじと観察してた私を不思議そうに見て居たことにはっと気がついて、私は慌てて声を出した。
「あっ……あのっ……(初めまして)騎士様っ……少し(話したくて)っ……良いですか?」
待って……待って! イザベラ! さっ、最初から無理だったんだけど?!
全然普通になんて話せていないし、なんだったら、「何者だ」と言わんばりに警戒心を含んだ鋭い視線で見つめられ、今すぐに彼の見える範囲から逃げ出したいけど、まるで縫い止められたように足も動かないし……!
「ああ。君は、見るからに……デビューしたての、夜会に慣れていない貴族令嬢だな。今夜は初めての夜会か? 見ての通り、俺はここで護衛任務中だ……もしかして、何かあって帰りたいのか? 不審者でも居たとか?」
響きの良い低い声で流れるように問いかけられて、私は軽く混乱した。
え? 今、何個か疑問が入ってたよね? 何から、答えたら良いの?!
「こっ、今夜は……(私はデビューして三回目の夜会で)……(まだ、夜会から)帰りたくっ……ないです」
「……え?」
ぽかんとした顔のハビエル様を見て、私は彼にとんでもないことを言ってしまったのではないかと悟った。
言いたいことは部分的には確かに言えたんだけど、それを繋げれば?
「あっあのっ……(これは、違うんです。変なこと言って)ごめんなさい……」
待って……待って、違うんです。そういうつもりではなくて……。
誤解を生まぬようにすかざすそう否定したいけど、もしそれが言えたら、異性の前で異常に口下手になってしまうことにも、悩んでもいない訳で……!
「……いや、それ……君、意味がわかって……言っている? ……よな。いや、すまない。聞き返すなど、無粋な真似を。まさか、君のようなうら若き令嬢が、いきなりそんな事を言い出すとは思わなくて驚いたんだ」
この時、ハビエル様が喉を鳴らしたように思えたのは、私の気のせいだろうか。
気のせいよね……?
「ん? ……何か、用だろうか?」
生半可な女性では絶対に落ちないと噂の騎士団長ハビエル・クラレット様を、この時に初めて間近で見たんだけど、本当に驚いてしまうくらいに素敵な人だった。
長身で見上げなければ顔を見ることも出来ないけど、サラサラの黒髪に印象的な青い目……そして、団長のみの特殊な意匠のあるかっちりとした騎士団服を纏った、筋肉質な見事な肉体。
無言でまじまじと観察してた私を不思議そうに見て居たことにはっと気がついて、私は慌てて声を出した。
「あっ……あのっ……(初めまして)騎士様っ……少し(話したくて)っ……良いですか?」
待って……待って! イザベラ! さっ、最初から無理だったんだけど?!
全然普通になんて話せていないし、なんだったら、「何者だ」と言わんばりに警戒心を含んだ鋭い視線で見つめられ、今すぐに彼の見える範囲から逃げ出したいけど、まるで縫い止められたように足も動かないし……!
「ああ。君は、見るからに……デビューしたての、夜会に慣れていない貴族令嬢だな。今夜は初めての夜会か? 見ての通り、俺はここで護衛任務中だ……もしかして、何かあって帰りたいのか? 不審者でも居たとか?」
響きの良い低い声で流れるように問いかけられて、私は軽く混乱した。
え? 今、何個か疑問が入ってたよね? 何から、答えたら良いの?!
「こっ、今夜は……(私はデビューして三回目の夜会で)……(まだ、夜会から)帰りたくっ……ないです」
「……え?」
ぽかんとした顔のハビエル様を見て、私は彼にとんでもないことを言ってしまったのではないかと悟った。
言いたいことは部分的には確かに言えたんだけど、それを繋げれば?
「あっあのっ……(これは、違うんです。変なこと言って)ごめんなさい……」
待って……待って、違うんです。そういうつもりではなくて……。
誤解を生まぬようにすかざすそう否定したいけど、もしそれが言えたら、異性の前で異常に口下手になってしまうことにも、悩んでもいない訳で……!
「……いや、それ……君、意味がわかって……言っている? ……よな。いや、すまない。聞き返すなど、無粋な真似を。まさか、君のようなうら若き令嬢が、いきなりそんな事を言い出すとは思わなくて驚いたんだ」
この時、ハビエル様が喉を鳴らしたように思えたのは、私の気のせいだろうか。
気のせいよね……?
340
お気に入りに追加
565
あなたにおすすめの小説
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~
瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)
ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。
3歳年下のティーノ様だ。
本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。
行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。
なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。
もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。
そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。
全7話の短編です 完結確約です。
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
婚約者に好きな人ができたらしい(※ただし事実とは異なります)
彗星
恋愛
主人公ミアと、婚約者リアムとのすれ違いもの。学園の人気者であるリアムを、婚約者を持つミアは、公爵家のご令嬢であるマリーナに「彼は私のことが好きだ」と言われる。その言葉が引っかかったことで、リアムと婚約解消した方がいいのではないかと考え始める。しかし、リアムの気持ちは、ミアが考えることとは違うらしく…。
最難易度攻略対象者の溺愛お約束ルートに変更希望です!~恋愛下手過ぎて手伝ってもらうことになった転生ヒロインですが、大変で誰か助けて欲しい
待鳥園子
恋愛
乙女ゲーム『僕の心の扉を叩いて』通称『ここたた』に転生したものの、恋愛下手過ぎて、攻略が一番簡単なはずのメインヒーロージョヴァンニに話しかけることさえ出来ない。
「無理! 私にはリアル乙女ゲームなんて、本当に無理!」
絶対無理と攻略を諦めかけた私の前に、最高難易度攻略者レオナルドが現れ、可哀想だからと同情されて、彼がジョヴァンニ相手の恋愛指導してくれることになった……んだけど!?
乙女ゲーム転生ヒロインがどうしようと困っていたら、雨降って地が固まって大好きな攻略対象者と結ばれる話。
死亡フラグ立ち済悪役令嬢ですけど、ここから助かる方法を教えて欲しい。
待鳥園子
恋愛
婚約破棄されて地下牢へ連行されてしまう断罪の時……何故か前世の記憶が蘇った!
ここは乙女ゲームの世界で、断罪され済の悪役令嬢だった。地下牢に囚えられてしまい、死亡フラグが見事立ち済。
このままでは、すぐに処刑されてしまう。
そこに、以前親しくしていた攻略対象者の一人、騎士団長のナザイレが、地下牢に現れて……?
自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで
嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。
誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。
でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。
このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。
そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語
執筆済みで完結確約です。
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる