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04 仕事中

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 今夜、ハビエル様は壇上に居られる国王陛下の護衛任務に就いているようだった。私はそんな彼の傍に近付いたので、怪訝そうな顔になっていた。

「ん? ……何か、用だろうか?」

 生半可な女性では絶対に落ちないと噂の騎士団長ハビエル・クラレット様を、この時に初めて間近で見たんだけど、本当に驚いてしまうくらいに素敵な人だった。

 長身で見上げなければ顔を見ることも出来ないけど、サラサラの黒髪に印象的な青い目……そして、団長のみの特殊な意匠のあるかっちりとした騎士団服を纏った、筋肉質な見事な肉体。

 無言でまじまじと観察してた私を不思議そうに見て居たことにはっと気がついて、私は慌てて声を出した。

「あっ……あのっ……(初めまして)騎士様っ……少し(話したくて)っ……良いですか?」

 待って……待って! イザベラ! さっ、最初から無理だったんだけど?!

 全然普通になんて話せていないし、なんだったら、「何者だ」と言わんばりに警戒心を含んだ鋭い視線で見つめられ、今すぐに彼の見える範囲から逃げ出したいけど、まるで縫い止められたように足も動かないし……!

「ああ。君は、見るからに……デビューしたての、夜会に慣れていない貴族令嬢だな。今夜は初めての夜会か? 見ての通り、俺はここで護衛任務中だ……もしかして、何かあって帰りたいのか? 不審者でも居たとか?」

 響きの良い低い声で流れるように問いかけられて、私は軽く混乱した。

 え? 今、何個か疑問が入ってたよね? 何から、答えたら良いの?!

「こっ、今夜は……(私はデビューして三回目の夜会で)……(まだ、夜会から)帰りたくっ……ないです」

「……え?」

 ぽかんとした顔のハビエル様を見て、私は彼にとんでもないことを言ってしまったのではないかと悟った。

 言いたいことは部分的には確かに言えたんだけど、それを繋げれば?

「あっあのっ……(これは、違うんです。変なこと言って)ごめんなさい……」

 待って……待って、違うんです。そういうつもりではなくて……。

 誤解を生まぬようにすかざすそう否定したいけど、もしそれが言えたら、異性の前で異常に口下手になってしまうことにも、悩んでもいない訳で……!

「……いや、それ……君、意味がわかって……言っている? ……よな。いや、すまない。聞き返すなど、無粋な真似を。まさか、君のようなうら若き令嬢が、いきなりそんな事を言い出すとは思わなくて驚いたんだ」

 この時、ハビエル様が喉を鳴らしたように思えたのは、私の気のせいだろうか。

 気のせいよね……?
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