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39 危ない
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「知っています! お願いします。彼の命が危ないので」
その時、城の中に入ろうとする何人かの不審な男を見えたのは、ほんの偶然だった。彼らは違う門番に紙を見せ、簡単に通っていた。
同じような人が沢山居るのに、おかしいと思うのはおかしいかもしれない。けれど、どうしても違和感が拭えない。
私が先んじて彼が狙われているという情報を持ち、危険が迫っていたことを知っていたせいかもしれない。
妙な雰囲気を感じて空を見上げると、城壁の上に矢をつがえた弓兵が居る。
待って……どうして、彼は城壁の中に弓を射ようとしているの?
不穏な空気に私は居ても立っても居られなくなって、止める声も聞かずに走り出した。
もちろん、門番は追いかけてくる。それはそうだ。私は不審者で、これは不法侵入になるもの。
門を走り抜け、廊下を辿り広場のようなところで、何人かの兵と話し込んでいたギャレット様を見つけた。
……あの弓兵が狙っていたのは、やっぱり!
私はギャレット様に近づこうとすると、周囲の男性が止めに入った。当たり前だ。私は今ではもう、ただの貴族の一人。
彼の婚約者でもなんでもないんだから、もし王族と謁見するのなら、彼が望まない限りは定められた面会時間の中で順番待ちが通例だけど、そんなの今の状況で間に合わない。
「……ギャレットさまー!!! 早く屋内に、逃げてー!!! 早く、危ない!!!」
私が後ろから追いかけてきた衛兵に羽交い締めにされながら、懸命に叫んだ。
その声を聞いて、ギャレット様がこちらを振り返ったと同時に、何本かの矢は放たれて、私の背後から何人かが剣を持って走り出した。
まるでその時だけ特別に、時間がゆっくりと進んでいるように見えた。
まず、私に見えたのはギャレット様は纏っていた長いマントを外しそれを振り矢をいなし、腰の剣を抜いたと思ったら、さっき走って向かって行った何人かが既に倒れていた。
流石、『雷の子』ギャレット様。早業過ぎて、私の目では追い切れなかった。
私の声を聞き、反射的に自分を狙う暗殺者を倒したものの、本人には全く今の状況がつかめないのか、ギャレット様はきょとんとした顔をしていた。
でも、良かった……!! ギャレット様が、助かった!!
強い安堵のためか、涙が溢れて止まらなくなった。私がしゃくりを上げて泣いている音だけが、しんとした広場に響いていた。
「え……本当にローレンか? 何故、君がここに居るんだ?」
信じられないと言わんばかりの、ギャレット様。
それは、本当に彼だって驚くと思う。私は彼の婚約者であることから逃げて、大富豪の手を取ったはずなのに。
それなのに、まだ彼のことが好きだから、こうしてみっともなく戻って来てしまった。
「……ごめんなさい。ごめんなさい。私っ」
本当は、嫌な女のままで終わりたかった。
あんな風に彼を傷つけておいて、私だって本当は辛かったなんて、思わせるなんて嫌だった。
その時、城の中に入ろうとする何人かの不審な男を見えたのは、ほんの偶然だった。彼らは違う門番に紙を見せ、簡単に通っていた。
同じような人が沢山居るのに、おかしいと思うのはおかしいかもしれない。けれど、どうしても違和感が拭えない。
私が先んじて彼が狙われているという情報を持ち、危険が迫っていたことを知っていたせいかもしれない。
妙な雰囲気を感じて空を見上げると、城壁の上に矢をつがえた弓兵が居る。
待って……どうして、彼は城壁の中に弓を射ようとしているの?
不穏な空気に私は居ても立っても居られなくなって、止める声も聞かずに走り出した。
もちろん、門番は追いかけてくる。それはそうだ。私は不審者で、これは不法侵入になるもの。
門を走り抜け、廊下を辿り広場のようなところで、何人かの兵と話し込んでいたギャレット様を見つけた。
……あの弓兵が狙っていたのは、やっぱり!
私はギャレット様に近づこうとすると、周囲の男性が止めに入った。当たり前だ。私は今ではもう、ただの貴族の一人。
彼の婚約者でもなんでもないんだから、もし王族と謁見するのなら、彼が望まない限りは定められた面会時間の中で順番待ちが通例だけど、そんなの今の状況で間に合わない。
「……ギャレットさまー!!! 早く屋内に、逃げてー!!! 早く、危ない!!!」
私が後ろから追いかけてきた衛兵に羽交い締めにされながら、懸命に叫んだ。
その声を聞いて、ギャレット様がこちらを振り返ったと同時に、何本かの矢は放たれて、私の背後から何人かが剣を持って走り出した。
まるでその時だけ特別に、時間がゆっくりと進んでいるように見えた。
まず、私に見えたのはギャレット様は纏っていた長いマントを外しそれを振り矢をいなし、腰の剣を抜いたと思ったら、さっき走って向かって行った何人かが既に倒れていた。
流石、『雷の子』ギャレット様。早業過ぎて、私の目では追い切れなかった。
私の声を聞き、反射的に自分を狙う暗殺者を倒したものの、本人には全く今の状況がつかめないのか、ギャレット様はきょとんとした顔をしていた。
でも、良かった……!! ギャレット様が、助かった!!
強い安堵のためか、涙が溢れて止まらなくなった。私がしゃくりを上げて泣いている音だけが、しんとした広場に響いていた。
「え……本当にローレンか? 何故、君がここに居るんだ?」
信じられないと言わんばかりの、ギャレット様。
それは、本当に彼だって驚くと思う。私は彼の婚約者であることから逃げて、大富豪の手を取ったはずなのに。
それなのに、まだ彼のことが好きだから、こうしてみっともなく戻って来てしまった。
「……ごめんなさい。ごめんなさい。私っ」
本当は、嫌な女のままで終わりたかった。
あんな風に彼を傷つけておいて、私だって本当は辛かったなんて、思わせるなんて嫌だった。
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