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08 疑惑の女の子
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◇◆◇
「……では、あの子は、スパイでも何でもなかったと?」
王太子ライアンは、呆れたようにして言った。高貴な者へ使用する高価な自白剤を持ち出しておいて、何を言っているんだと言いたいのだろう。
だが、アドリアナは怪しいところばかりだったのだ。
「……ああ。僕のことを、ことある事に見ていたし、ライアンと恋仲のルナのことまで、僕に聞いてきた……しかも、極めつけは、僕のキスを断った……怪しいと思わない方が、おかしくないか?」
「……結局、ただクラウスの事が、純粋に好きだっただけなんだな。どうする?」
「学園卒業したての貴族令嬢に、意図的に誘惑した挙句に止まらなくなり、僕が手を出したんだ。その責任は取るさ。彼女は真面目で可愛いし、メガネを外してよくよく見ると、とても僕好みの顔をしている。良い妻になるだろう」
「眼鏡がない方が、良く見えると?」
「……そうだ。この眼鏡は、意図的に視界が歪むような細工をしている」
僕は眼鏡の真ん中を押して位置を直すと、ライアンは不思議そうに聞いた。
「なぜだ。それだと、元々の視力を悪くするのでは?」
「この世界はそもそも醜く歪みでいる。真実、美しく価値のある物は少ない……アドリアナのように」
ライアンへ微笑み眼鏡を外して、窓の外を見た。これから、この激しく降る雨の中で、レオーネ家へ挨拶へと赴く。
Fin
「……では、あの子は、スパイでも何でもなかったと?」
王太子ライアンは、呆れたようにして言った。高貴な者へ使用する高価な自白剤を持ち出しておいて、何を言っているんだと言いたいのだろう。
だが、アドリアナは怪しいところばかりだったのだ。
「……ああ。僕のことを、ことある事に見ていたし、ライアンと恋仲のルナのことまで、僕に聞いてきた……しかも、極めつけは、僕のキスを断った……怪しいと思わない方が、おかしくないか?」
「……結局、ただクラウスの事が、純粋に好きだっただけなんだな。どうする?」
「学園卒業したての貴族令嬢に、意図的に誘惑した挙句に止まらなくなり、僕が手を出したんだ。その責任は取るさ。彼女は真面目で可愛いし、メガネを外してよくよく見ると、とても僕好みの顔をしている。良い妻になるだろう」
「眼鏡がない方が、良く見えると?」
「……そうだ。この眼鏡は、意図的に視界が歪むような細工をしている」
僕は眼鏡の真ん中を押して位置を直すと、ライアンは不思議そうに聞いた。
「なぜだ。それだと、元々の視力を悪くするのでは?」
「この世界はそもそも醜く歪みでいる。真実、美しく価値のある物は少ない……アドリアナのように」
ライアンへ微笑み眼鏡を外して、窓の外を見た。これから、この激しく降る雨の中で、レオーネ家へ挨拶へと赴く。
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