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05 卒業試験切り抜け成功
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図書館の閉館時間になり、クラウスは当たり前のように私を馬車まで送ってくれた。
「……へえ。アドリアナは、この時間に来て貰うようにしているの?」
私が使用人の待ち合わせ時間があると言えば、クラウスは驚いていた。こちらの世界の常識では、使用人が延々外で待ち続けることは当然で、あてもなく主人の帰りを大人しく待っているのだ。
「はい。お恥ずかしながら、うちは雇っている使用人が少ないので、効率よく動いて貰いたくて……」
クラウスだって私の家がそんなに裕福ではないことは知っているだろうし、別に卑下するほどのことでもないんだけどそう言えば、彼は優しく微笑んでいた。
「いいや……君は優しくて、本当に素敵な女性だ」
そして、じっと私を見つめて眼鏡を外したので、私もこくんと息をのんだ。
眼鏡を掛けている彼も素敵だったけど、外した素の顔もとても良い……美しいと言って良いくらいに、整っていた。
「え……あの、クラウス?」
気がつけば彼は私の肩を持ち、ゆっくりと顔を近づけたので、私はパッと一歩後退った。
「……ああ。ごめん。なんとなく、眼鏡を外すと何処まで見えるのか、試したくて。いきなりやってみたくなったから、無言のままで悪かったね」
……あ。そういうことか。キスされそうになったなんて、ただの誤解だった。恥ずかしい。
「送ってくれて、ありがとうごいざいました。それに、すごくわかりやすい説明もありがとうございます」
「いつでも、聞いてね。僕で良かったら」
にっこり微笑んだクラウスにぺこりとお辞儀をして、私は自分の家の馬車へと乗った。
◇◆◇
そんなこんながあってから、私は卒業試験を無事にギリギリ切り抜けることが出来た。教師にも「本当に良かったなあ」と泣かれて、自分がどれだけ卒業が危なかったかを知ることが出来た。
……けど、卒業が決まればこっちのものよ!
ギリギリだろうが決まってしまえば、私は卒業生。貴族令嬢の経歴としては、最高級の実績を手に入れることが出来た。
うきうきとして卒業式の準備をして、大ホールで悪役令嬢の婚約破棄を鑑賞して、大満足して帰ろうとしたところで、クラウスに声を掛けられた。
「アドリアナ! 今夜も君は美しい。卒業おめでとう」
攻略対象者クラウスの正装は、まるで輝かんばかりに眩しい。あまり直視していると残像残りそうだから、私は視線を揺らしながら答えた。
「ありがとうございます。クラウスもおめでとうございます」
同じ立場なのだから、私たち二人はこの学園の卒業生。だとすると、私も彼にお祝いを言うしかない。
「なんだか、久しぶりだね。アドリアナ……図書館にも来なくなったし、避けられているのかと思っていたんだけど……」
「そっ……そんな訳、ないです。クラウスを避ける理由なんて、私にはありませんから」
顔を引き攣らせながら、私はそう言った。正直言うと、クラウスを避けていた。
だって、クラウスと関わると乙女ゲームの強制力で私が彼を好きな女の子から嫌がらせ受けるかもしれないし、こっちは卒業するだけで精一杯、恋愛何それ美味しいの? の、学生生活だったのよ!
余計なことになんて、巻き込まれる暇はなかった。
「……へえ。アドリアナは、この時間に来て貰うようにしているの?」
私が使用人の待ち合わせ時間があると言えば、クラウスは驚いていた。こちらの世界の常識では、使用人が延々外で待ち続けることは当然で、あてもなく主人の帰りを大人しく待っているのだ。
「はい。お恥ずかしながら、うちは雇っている使用人が少ないので、効率よく動いて貰いたくて……」
クラウスだって私の家がそんなに裕福ではないことは知っているだろうし、別に卑下するほどのことでもないんだけどそう言えば、彼は優しく微笑んでいた。
「いいや……君は優しくて、本当に素敵な女性だ」
そして、じっと私を見つめて眼鏡を外したので、私もこくんと息をのんだ。
眼鏡を掛けている彼も素敵だったけど、外した素の顔もとても良い……美しいと言って良いくらいに、整っていた。
「え……あの、クラウス?」
気がつけば彼は私の肩を持ち、ゆっくりと顔を近づけたので、私はパッと一歩後退った。
「……ああ。ごめん。なんとなく、眼鏡を外すと何処まで見えるのか、試したくて。いきなりやってみたくなったから、無言のままで悪かったね」
……あ。そういうことか。キスされそうになったなんて、ただの誤解だった。恥ずかしい。
「送ってくれて、ありがとうごいざいました。それに、すごくわかりやすい説明もありがとうございます」
「いつでも、聞いてね。僕で良かったら」
にっこり微笑んだクラウスにぺこりとお辞儀をして、私は自分の家の馬車へと乗った。
◇◆◇
そんなこんながあってから、私は卒業試験を無事にギリギリ切り抜けることが出来た。教師にも「本当に良かったなあ」と泣かれて、自分がどれだけ卒業が危なかったかを知ることが出来た。
……けど、卒業が決まればこっちのものよ!
ギリギリだろうが決まってしまえば、私は卒業生。貴族令嬢の経歴としては、最高級の実績を手に入れることが出来た。
うきうきとして卒業式の準備をして、大ホールで悪役令嬢の婚約破棄を鑑賞して、大満足して帰ろうとしたところで、クラウスに声を掛けられた。
「アドリアナ! 今夜も君は美しい。卒業おめでとう」
攻略対象者クラウスの正装は、まるで輝かんばかりに眩しい。あまり直視していると残像残りそうだから、私は視線を揺らしながら答えた。
「ありがとうございます。クラウスもおめでとうございます」
同じ立場なのだから、私たち二人はこの学園の卒業生。だとすると、私も彼にお祝いを言うしかない。
「なんだか、久しぶりだね。アドリアナ……図書館にも来なくなったし、避けられているのかと思っていたんだけど……」
「そっ……そんな訳、ないです。クラウスを避ける理由なんて、私にはありませんから」
顔を引き攣らせながら、私はそう言った。正直言うと、クラウスを避けていた。
だって、クラウスと関わると乙女ゲームの強制力で私が彼を好きな女の子から嫌がらせ受けるかもしれないし、こっちは卒業するだけで精一杯、恋愛何それ美味しいの? の、学生生活だったのよ!
余計なことになんて、巻き込まれる暇はなかった。
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