3 / 8
03 迷惑はおかけしません
しおりを挟む
「まず先に言っておくけど、僕はここに座りたかったから、ここに座った訳ではなくて、君と話したかったから、ここに座ったんだ。それで、納得して貰える?」
「え? あ……はい」
私は正直言うと、ポカンとした。クラウスが私に興味を持つなんて、絶対おかしい……何故? あ! もしかして……。
「今日のことですか? 本当に、ごめんなさい。恥ずかしかったですよね」
私のせいで巻き込まれ彼まで恥をかかせてしまったことを、お説教するつもりなのかもしれない……。
「いやいや、あの程度のこと……別に、構わないよ。この顔で良ければ、好きに見てくれ」
「え……あ。はい……」
クラウスは面白そうに微笑み、私の手元を見て、ノートに書かれた数式を指さした。
「ここ……これは、数式を間違えているよ。多分、今日習ったものを、すぐに使ったんだろうけど、これは古いやり方のままなんだ。けど、これは良く間違うことで、引っかけ問題のようなものだから、気にしなくても良い」
「え? あ……すごい。クラウス……ディケイド様は、本当に頭が良いですね」
「僕のことは、クラウスで良いよ。アドリアナ。君って真面目なんだね。文字に表れているよ」
これまでにも、心の中で彼をクラウスと呼び捨てていたこともお見通しなのか、彼は嬉しそうに笑った。
「……ちゃんとやらないと、間に合わなくて。クラウスが羨ましいです。どうして、あんなにも点数が良いんですか?」
この学園では学年上位百人の名前が、廊下に張り出される。だから、クラウスの名前が今まで三位内から、転落したことがないことも知っている。
「僕はテスト勉強しかしないから、ちゃんと予習復習していて偉いと思う」
「それで出来るから、良いんです。きっと、頭の出来が全然違うんですよ」
あまりにも高低のある学力差を感じ、私がいじいじとしてそう言うと、彼は余裕の笑顔で微笑んだ。
「テストなんて、過去問を持ってたら楽勝なのに……日々の積み重ねをしていて、本当に偉いよ」
「え?」
「……僕は実際のところ、勉強はあまりしないし君と頭の出来は変わらないと思う。けど、アドリアナより、少しだけ要領は良いかもしれないね……テスト勉強する時は、過去問しか解かないよ。大体、その辺の派生の問題しか出ない。だから、こんな風に教科書全般を網羅しているなんて、アドリアナは偉いねって言ったんだ」
「そっ……そうなんですか!」
思わず声を上げてしまった私に、周囲の学生は私を見たし、クラウスは苦笑して唇の上に人差し指を当てた。
「……君って、可愛いね。アドリアナ。ねえ。もしかして、僕のことが好きなの?」
「え? そんな! ……めめめめ、めっそうもない!!」
色気ある表情で私に聞いたクラウスに、両手をぶんぶん振った。そんな訳ないそんな訳ない。
「え? あ……はい」
私は正直言うと、ポカンとした。クラウスが私に興味を持つなんて、絶対おかしい……何故? あ! もしかして……。
「今日のことですか? 本当に、ごめんなさい。恥ずかしかったですよね」
私のせいで巻き込まれ彼まで恥をかかせてしまったことを、お説教するつもりなのかもしれない……。
「いやいや、あの程度のこと……別に、構わないよ。この顔で良ければ、好きに見てくれ」
「え……あ。はい……」
クラウスは面白そうに微笑み、私の手元を見て、ノートに書かれた数式を指さした。
「ここ……これは、数式を間違えているよ。多分、今日習ったものを、すぐに使ったんだろうけど、これは古いやり方のままなんだ。けど、これは良く間違うことで、引っかけ問題のようなものだから、気にしなくても良い」
「え? あ……すごい。クラウス……ディケイド様は、本当に頭が良いですね」
「僕のことは、クラウスで良いよ。アドリアナ。君って真面目なんだね。文字に表れているよ」
これまでにも、心の中で彼をクラウスと呼び捨てていたこともお見通しなのか、彼は嬉しそうに笑った。
「……ちゃんとやらないと、間に合わなくて。クラウスが羨ましいです。どうして、あんなにも点数が良いんですか?」
この学園では学年上位百人の名前が、廊下に張り出される。だから、クラウスの名前が今まで三位内から、転落したことがないことも知っている。
「僕はテスト勉強しかしないから、ちゃんと予習復習していて偉いと思う」
「それで出来るから、良いんです。きっと、頭の出来が全然違うんですよ」
あまりにも高低のある学力差を感じ、私がいじいじとしてそう言うと、彼は余裕の笑顔で微笑んだ。
「テストなんて、過去問を持ってたら楽勝なのに……日々の積み重ねをしていて、本当に偉いよ」
「え?」
「……僕は実際のところ、勉強はあまりしないし君と頭の出来は変わらないと思う。けど、アドリアナより、少しだけ要領は良いかもしれないね……テスト勉強する時は、過去問しか解かないよ。大体、その辺の派生の問題しか出ない。だから、こんな風に教科書全般を網羅しているなんて、アドリアナは偉いねって言ったんだ」
「そっ……そうなんですか!」
思わず声を上げてしまった私に、周囲の学生は私を見たし、クラウスは苦笑して唇の上に人差し指を当てた。
「……君って、可愛いね。アドリアナ。ねえ。もしかして、僕のことが好きなの?」
「え? そんな! ……めめめめ、めっそうもない!!」
色気ある表情で私に聞いたクラウスに、両手をぶんぶん振った。そんな訳ないそんな訳ない。
109
お気に入りに追加
385
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

乙女ゲームの愛されヒロインに転生したら、ノーマルエンド後はゲームになかった隣国の英雄と過ごす溺愛新婚生活
シェルビビ
恋愛
――そんな、私がヒロインのはずでしょう!こんな事ってありえない。
攻略キャラクターが悪役令嬢とハッピーエンドになった世界に転生してしまったラウラ。断罪回避のため、聖女の力も神獣も根こそぎ奪われてしまった。記憶を思い出すのが遅すぎて、もう何も出来ることがない。
前世は貧乏だったこら今世は侯爵令嬢として静かに暮らそうと諦めたが、ゲームでは有り得なかった魔族の侵略が始まってしまう。隣国と同盟を結ぶために、英雄アージェスの花嫁として嫁ぐことが強制決定してしまった。
英雄アージェスは平民上がりの伯爵で、性格は気性が荒く冷血だともっぱらの噂だった。
冷遇される日々を過ごすのかと思っていたら、待遇が思った以上によく肩透かしを食らう。持ち前の明るい前向きな性格とポジティブ思考で楽しく毎日を過ごすラウラ。
アージェスはラウラに惚れていて、大型わんこのように懐いている。
一方その頃、ヒロインに成り替わった悪役令嬢は……。
乙女ゲームが悪役令嬢に攻略後のヒロインは一体どうなってしまうのか。
ヒロインの立場を奪われたけれど幸せなラウラと少し執着が強いアージェスの物語

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

この異世界転生の結末は
冬野月子
恋愛
五歳の時に乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したと気付いたアンジェリーヌ。
一体、自分に待ち受けているのはどんな結末なのだろう?
※「小説家になろう」にも投稿しています。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる