2 / 8
02 恥ずかしい失敗
しおりを挟む
「え? ……しゅっけつ?」
慌てて、自分の身体を見た……出血? 私、どこかから、血が出てる?
「……アドリアナ! アドリアナ・レオーネ!」
不意に耳に入って来たダミ声が、私の名前を呼んでいた。
「は、はい!」
慌てて椅子から立ち上がった私に、こほんと咳をついて先生は言った。
「レオーネ。返事するだけで、席は立たなくて良い。教室内に居る誰かに見惚れるのは君の自由だが、授業中は授業に集中するように」
教室内の生徒たちは私を見てくすくすと笑い、赤くなって黙ったまま椅子へ座った。
そうだった。次は、出席確認のある数学の授業だったんだ……完全に忘れていて、しかも、クラス全体はおろか、クラウス本人にも隠れて見ていることがバレてしまった。
うわあ……恥ずかしい……まあ、皆からするとクラウスは学園の中でも特に人気だから、お前もかって感じだろうけど……。
「……では、昨日の続きからだ。教科書を開いて……」
点呼が終わり俯いていた私はおとなしく教科書を開き、その日はとてもではないけど、クラウスを鑑賞する気にはならなかった。
◇◆◇
ヒロインは今頃メインイベント卒業式の準備に忙しいと思うけど、私はその前にある卒業試験の方がもっと大事!
これからの人生を左右すると言っても過言でもない、卒業試験。追試は一応用意されているものの、私は苦しみを長引かせたいMでもなんでもない。
出来れば、永遠に受験勉強が続くような悪夢から、一刻も早く解放されたい!
私は図書館の中で、明日の授業の予習復習を済ませていた。そうすると、家に帰ったら卒業試験の方に集中出来る。
周囲からもカリカリとペンが進む音を聞いていると、私も頑張らないとという気持ちに自然となれた。
「……ここ、良いかな?」
「あ、はい。どうぞ……っ?」
うっ……嘘でしょう! そこに居たのは、クラウス・ディケイドだった! 図書館の独特な暖色の照明の中で、彼の銀髪は金色に見えていた。眼鏡の奥の、流し目だってなんだか色っぽい。
……待って、待って。私の周囲、全然空いている席があるんだけど? なんで、確認してまで、私の隣に?
「ありがとう」
「いえ……あの、良かったら私、この席移動しましょうか……?」
にこやかにお礼を言ったクラウスに、私は遠慮がちに声を掛けた。だって、もしかしたら、ただ単にこの席にどうしても座りたかったのかもしれない。
「くっ……いや、ごめん。君って、とっても面白いね。アドリアナ・レオーネ男爵令嬢……良かったら、アドリアナと呼んでも?」
「おっ……お好きにどうぞ」
親しげなクラウスに、私は戸惑いつつも頷いた。
慌てて、自分の身体を見た……出血? 私、どこかから、血が出てる?
「……アドリアナ! アドリアナ・レオーネ!」
不意に耳に入って来たダミ声が、私の名前を呼んでいた。
「は、はい!」
慌てて椅子から立ち上がった私に、こほんと咳をついて先生は言った。
「レオーネ。返事するだけで、席は立たなくて良い。教室内に居る誰かに見惚れるのは君の自由だが、授業中は授業に集中するように」
教室内の生徒たちは私を見てくすくすと笑い、赤くなって黙ったまま椅子へ座った。
そうだった。次は、出席確認のある数学の授業だったんだ……完全に忘れていて、しかも、クラス全体はおろか、クラウス本人にも隠れて見ていることがバレてしまった。
うわあ……恥ずかしい……まあ、皆からするとクラウスは学園の中でも特に人気だから、お前もかって感じだろうけど……。
「……では、昨日の続きからだ。教科書を開いて……」
点呼が終わり俯いていた私はおとなしく教科書を開き、その日はとてもではないけど、クラウスを鑑賞する気にはならなかった。
◇◆◇
ヒロインは今頃メインイベント卒業式の準備に忙しいと思うけど、私はその前にある卒業試験の方がもっと大事!
これからの人生を左右すると言っても過言でもない、卒業試験。追試は一応用意されているものの、私は苦しみを長引かせたいMでもなんでもない。
出来れば、永遠に受験勉強が続くような悪夢から、一刻も早く解放されたい!
私は図書館の中で、明日の授業の予習復習を済ませていた。そうすると、家に帰ったら卒業試験の方に集中出来る。
周囲からもカリカリとペンが進む音を聞いていると、私も頑張らないとという気持ちに自然となれた。
「……ここ、良いかな?」
「あ、はい。どうぞ……っ?」
うっ……嘘でしょう! そこに居たのは、クラウス・ディケイドだった! 図書館の独特な暖色の照明の中で、彼の銀髪は金色に見えていた。眼鏡の奥の、流し目だってなんだか色っぽい。
……待って、待って。私の周囲、全然空いている席があるんだけど? なんで、確認してまで、私の隣に?
「ありがとう」
「いえ……あの、良かったら私、この席移動しましょうか……?」
にこやかにお礼を言ったクラウスに、私は遠慮がちに声を掛けた。だって、もしかしたら、ただ単にこの席にどうしても座りたかったのかもしれない。
「くっ……いや、ごめん。君って、とっても面白いね。アドリアナ・レオーネ男爵令嬢……良かったら、アドリアナと呼んでも?」
「おっ……お好きにどうぞ」
親しげなクラウスに、私は戸惑いつつも頷いた。
118
お気に入りに追加
387
あなたにおすすめの小説
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
勇者の幼馴染という負けポジションの妹の身代わりになったつもりで、つもりだったのに何故か執着溺愛されちゃった私の誤算。
待鳥園子
恋愛
将来あっさり捨てられて辛い目にあうことが確定している妹の身代わりになろうと、幼い頃の勇者からわざと好かれるように振舞ったら、予想外にめちゃくちゃ執着されちゃった。どうしよう★みたいなお話。
砂月美乃先生と清白妙先生お二人共催のみのたえ企画の「身代わりアンソロ」参加作品です。
※他サイトにも掲載あります。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
洞窟ダンジョン体験ツアー案内人役のイケメン冒険者に、ラッキースケベを連発してしまった私が患う恋の病。
待鳥園子
恋愛
人気のダンジョン冒険ツアーに参加してきたけど、案内人のイケメン冒険者にラッキースケベを連発してしまった。けど、もう一度彼に会いたいと冒険者ギルド前で待ち伏せしたら、思いもよらぬことになった話。
離縁希望の側室と王の寵愛
イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。
国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。
いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──?
※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。
シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み
師匠の選択を誤ったと思います。
イセヤ レキ
恋愛
「魔術師としては最高、師匠としては最低」のエドガーを師事するジェシカ。ジェシカは悪鬼師匠であるエドガーに想いを寄せていた。
しかし、エドガーはジェシカに手を出さない。
自分に魅力がないのだと思うジェシカだったが‥‥
ギャグ /一部シリアス /ほのぼの /一部ダーク/ 女主人公 /魔法 /ハッピーエンド /男目線あり /師弟関係
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
偶然同じ集合住宅の同じ階に住んでいるだけなのに、有名な美形魔法使いに付き纏いする熱烈なファンだと完全に勘違いされていた私のあやまり。
待鳥園子
恋愛
同じ集合住宅で同じ階に住んでいた美形魔法使い。たまに帰り道が一緒になるだけなんだけど、絶対あの人私を熱烈な迷惑ファンだと勘違いしてる!
誤解を解きたくても、嫌がられて避けられている気もするし……と思っていたら、彼の部屋に連れ込まれて良くわからない事態になった話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる