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01 とりあえず乙女ゲーム転生です
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鑑賞専用で良いなと思う異性は、誰しも居るはず。
うちの学園……えっと、正式名称は長かったように思うんだけど、前世で乙女ゲームの舞台としていた時は『ときめく恋はエンドレス学園』だった。
そう、私は現在略して『ときエン』の世界の中で、主要人物でもなんでもない、ただその辺のなんでもない風景として出て来る名も無きモブ令嬢として転生していた。
乙女ゲームと言えば攻略対象者で、全員美形の上にスパダリでないといけないという括りで形造られたキャラクターたちは、新旧乙女の夢を叶えてくれる尊き存在。
私のもっとも近くに居る攻略対象者は、三年生で同じクラスのクラウス・ディケイド。
外見は、涼やかな銀髪に青い目を持ち常に眼鏡を掛けている成績優秀な知的な美形なんだけど、口が上手くとてもチャラチャラしていて軽い男性という、ギャップを持っている人だ。
そんな彼から見れば、特段裕福な家名出身でもなく、地味な下位貴族である男爵令嬢なんて、多分視界にも入っていない。視界に入っても風景の一部。だから、クラスメイトとは言え、挨拶しか……したことないけどね。
まあ、私はそんな彼のことを、外見の良い鑑賞専用と割り切って、時折目の保養を楽しんでいた。
時期的に言えば、乙女ゲームは一年前に既に始まっているはずだけど、私はゲームが今どうなっているとかは、あまり気にしていない。というか、気にならない。
何故かというと、ギリギリでこの学園に入れた私には、勉強があまりに大変過ぎるのだ。現代でいうところの有名な進学校を記念受験したけど、奇跡的に補欠合格して、案の定の結果として全く勉強について行けない。
そんなこんなで、私は高校時代にあたるこの二年半、必死で勉強して来た。
王家や貴族、そして、この国でも特に選ばれた優秀な学生が集まる学園には、あまりにも勉強することが多過ぎる。
乙女ゲームの登場人物たちは、元々優秀な頭脳を持ち、なんなくこなしてしまうだろう。
来世に転生する予定のある皆、乙女ゲームの舞台を舐めてかかると、痛い目に遭うよ!
……私みたいに。この学園入る前に記憶が戻っていたら、絶対入学しなかったのに……。
ただのモブのはずの私なんて、ヒロインがお目当ての攻略対象者と恋を深めている間、放課後の時間も泣きそうになりながら、勉強に当てても予習復習が間に合わないんだから。
こんなにやることを詰め込まれると、恋愛しようなんて気持ちになれる訳もなかった。
正直、赤の他人の恋愛事情とか、本当にどうでも良い。どうなろうが、どうでも良くない? 私からすると、明日受ける小テストの方が大事だもの。
何故かというと、この学園から卒業したという実績は良い嫁入り先にも関わる。貴族夫人というと、お茶会夜会など楽して遊んでいるイメージを持つ方も多いかも知れないけど、その生活は学力気力コミュ力など、様々な高いステータスを必要とする仕事で溢れている。
落ちこぼれ寸前の私だって、出来れば下位貴族より上流貴族へ嫁ぎたい。そうすると、ここを卒業しておくのが一番の近道なのだ。
例えるならば、最下位で資格試験合格したとしても、最高得点を取った人と同じように資格欄を記入することになる。その間の成績なんて、そこまで重要なものでもなかった。
それにしても……クラウスったら、今日も本当に顔が良い。遠目から見ても長い睫毛が目立つ、頬杖を付いた横顔も完璧。
私の席もクラウスの斜め後ろで、授業中に頭の中が煮詰まりそうになったら、彼を見てにこにこして授業へと戻る。身の程をわきまえている私にとっては、鑑賞専用の攻略対象者だけど、群を抜いた美形を見て、心が癒やされてしまうことは確か。
そういえば、ヒロインは誰のルートを選んだんだろう……まあ、もうすぐ卒業式だし、私の明るい未来と共に判明することだろう。
ん……え!? クラウスがパッとこちらを見て私を見て、何か唇を動かして伝えたいようだ。
うちの学園……えっと、正式名称は長かったように思うんだけど、前世で乙女ゲームの舞台としていた時は『ときめく恋はエンドレス学園』だった。
そう、私は現在略して『ときエン』の世界の中で、主要人物でもなんでもない、ただその辺のなんでもない風景として出て来る名も無きモブ令嬢として転生していた。
乙女ゲームと言えば攻略対象者で、全員美形の上にスパダリでないといけないという括りで形造られたキャラクターたちは、新旧乙女の夢を叶えてくれる尊き存在。
私のもっとも近くに居る攻略対象者は、三年生で同じクラスのクラウス・ディケイド。
外見は、涼やかな銀髪に青い目を持ち常に眼鏡を掛けている成績優秀な知的な美形なんだけど、口が上手くとてもチャラチャラしていて軽い男性という、ギャップを持っている人だ。
そんな彼から見れば、特段裕福な家名出身でもなく、地味な下位貴族である男爵令嬢なんて、多分視界にも入っていない。視界に入っても風景の一部。だから、クラスメイトとは言え、挨拶しか……したことないけどね。
まあ、私はそんな彼のことを、外見の良い鑑賞専用と割り切って、時折目の保養を楽しんでいた。
時期的に言えば、乙女ゲームは一年前に既に始まっているはずだけど、私はゲームが今どうなっているとかは、あまり気にしていない。というか、気にならない。
何故かというと、ギリギリでこの学園に入れた私には、勉強があまりに大変過ぎるのだ。現代でいうところの有名な進学校を記念受験したけど、奇跡的に補欠合格して、案の定の結果として全く勉強について行けない。
そんなこんなで、私は高校時代にあたるこの二年半、必死で勉強して来た。
王家や貴族、そして、この国でも特に選ばれた優秀な学生が集まる学園には、あまりにも勉強することが多過ぎる。
乙女ゲームの登場人物たちは、元々優秀な頭脳を持ち、なんなくこなしてしまうだろう。
来世に転生する予定のある皆、乙女ゲームの舞台を舐めてかかると、痛い目に遭うよ!
……私みたいに。この学園入る前に記憶が戻っていたら、絶対入学しなかったのに……。
ただのモブのはずの私なんて、ヒロインがお目当ての攻略対象者と恋を深めている間、放課後の時間も泣きそうになりながら、勉強に当てても予習復習が間に合わないんだから。
こんなにやることを詰め込まれると、恋愛しようなんて気持ちになれる訳もなかった。
正直、赤の他人の恋愛事情とか、本当にどうでも良い。どうなろうが、どうでも良くない? 私からすると、明日受ける小テストの方が大事だもの。
何故かというと、この学園から卒業したという実績は良い嫁入り先にも関わる。貴族夫人というと、お茶会夜会など楽して遊んでいるイメージを持つ方も多いかも知れないけど、その生活は学力気力コミュ力など、様々な高いステータスを必要とする仕事で溢れている。
落ちこぼれ寸前の私だって、出来れば下位貴族より上流貴族へ嫁ぎたい。そうすると、ここを卒業しておくのが一番の近道なのだ。
例えるならば、最下位で資格試験合格したとしても、最高得点を取った人と同じように資格欄を記入することになる。その間の成績なんて、そこまで重要なものでもなかった。
それにしても……クラウスったら、今日も本当に顔が良い。遠目から見ても長い睫毛が目立つ、頬杖を付いた横顔も完璧。
私の席もクラウスの斜め後ろで、授業中に頭の中が煮詰まりそうになったら、彼を見てにこにこして授業へと戻る。身の程をわきまえている私にとっては、鑑賞専用の攻略対象者だけど、群を抜いた美形を見て、心が癒やされてしまうことは確か。
そういえば、ヒロインは誰のルートを選んだんだろう……まあ、もうすぐ卒業式だし、私の明るい未来と共に判明することだろう。
ん……え!? クラウスがパッとこちらを見て私を見て、何か唇を動かして伝えたいようだ。
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