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39 行き先①

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 結局、クウェンティンやキーブルグ侯爵家で雇われた護衛や騎士団総出で探しても、逃げてしまったヒルデガードは見つからず、不法侵入をした弟を取り逃してしまったことに、夫アーロンは怒り心頭のようだ。

 これは、職権濫用とも言えるけれど、軍関係の部下たちも駆り出され、王都内のどこかに潜んでいるはずのヒルデガードの行方を追っているらしい。

 ううん……ヒルデガードは、もう立ち入るなと兄に勘当された家に無断で入り込むという罪を犯しているのだから、職権濫用とは言い切れないのかもしれないけれど……。

 私も血眼になって探しているアーロンと違う理由で、ヒルデガードに会いたいと思っていた。

 あの言葉の意味。そして、やけに自信満々な態度の理由を知りたい。

「……奥様。旦那様は本日、いつもより早い時間に帰られるようです。近くのレストランに予約してあるので、そこで待ち合わせようとのご伝言です」

 私が自室でぼんやりとしていると、執事クウェンティンが、城で忙しく仕事をしているはずのアーロンからの伝言を預かって来たようだった。

 事件が立て続けにあったせいか、ここ数日、私があまりにも元気がないから、心配して気分を変えようとしてくれたのかもしれない。

 わかっているのに、ヒルデガードの言葉が頭を離れていかない。

「……わかったわ。準備します」

 クウェンティンは、私の返事を聞いて、無言で礼をして出て行った。

 最近は彼から何か教わることもないし、アーロンからの伝言であるとか、こういった機会でもないと会わない。

 夫アーロンが帰る前は、クウェンティンが唯一の味方のようにも思えていた。けれど、彼はアーロンに命じられて私の傍に居てくれただけで、ただ職務に忠実なだけだ。

 ……私の味方なんて、何処にも居ない。

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