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09 結婚式の日①

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 結婚式の日。豪華な式用のドレスを着た私は、教会の控え室で夫が迎えに来てくれるのを待っていた。

 ただ、小国が集まったとはいえ、三国の連合軍が攻めて来るかもしれないというきなくさい噂を聞いたのは、結婚式の日のほんの三日前だった。

 天才的な戦略家アーロン・キーブルグは、それまでにも多忙を極めていたらしく、私は結婚する前には彼に会うことは出来なかった。

 もうすぐ夫となる人が特別に用意したという豪華なウェディングドレスは、きらきらと光り輝く美しい宝石が散りばめられて、アーロン・キーブルグが私との結婚を希望したという言葉は信じられそうだと思った。

 結婚式の日には必ず式場へ行くからという約束の書かれた短い手紙を貰い、私はいよいよ夫となる彼と会うのだと思い、胸が痛いくらいに高鳴った。

 キーブルグ侯爵アーロン・キーブルグ。シュレイド王国軍では『血煙の軍神』として将軍職を務め、生涯不敗の戦術の天才と言われている男性。

 人伝てに噂を聞くばかりで、夫となるアーロンがどんな人なのか、これまでにだって、とても気になっていた。

 けれど……もうすぐ、今まで会えなかった彼と会える。

 控えめなノックの音がして、心臓が飛び跳ねたようになり、緊張感が高まり、いよいよその時が来たと思った。

 落ち着けるように何度も深呼吸をしてから、私は扉の前で待っている人へ声を掛けた。

「……どうぞ」

 私はその時、今日自分と結婚する夫が、迎えに来てくれたんだと思っていた。

 けれど、そこに居たのは品の良い執事服を見に纏う、私と同じくらいの年若い男性だった。

 ……誰かしら?

「私はアーロン様に仕える執事クウェンティンと申します。ブランシュ奥様。はじめまして……申し訳ありません。旦那様は、つい先ほど、火急の事態を受けて、急遽出征なさることになりました」

「……え? ……けど、あの……結婚式はどうするの?」

 アーロンは軍人で国が危ない時には、急ぎ出征しなければいけないことは理解していた。

 けれど、古くから歴史を持つキーブルグ侯爵家の結婚式なので、両家の親類たちや縁のある家から招待客なども華々しく、なんなら王族だって出席されていた。

 ……だと言うのに、結婚式を中止するの?

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