4 / 20
04 素敵な辺境伯②
しおりを挟む
呆然とした王子様と何故か歓声を上げて拍手をした貴族たちに見送られ、両側に居たドアマンが大きく扉を開いて、私たちは夜会を開催していた大広間から出ることになった。
わー……すっごい。豪華ー! 私たちが居たのは、美しい白亜のお城だった。
ヴィクトルさんは迷いない足取りで、城の広い廊下を歩いた。足が長い人って、普通に歩いているだけで、こんなにも速度が出てしまうものなの……?
しかも、彼の身長が高いものだから、私からすると若干ジェットコースターみたいな感覚がある。
「レティシア……大丈夫ですか?」
考え事をしてぼうっとしていた私は、不意に声を掛けられて慌てて頷いた。
「あ……はい。大丈夫です」
「本当に?」
ヴィクトルさんの整った顔は息がかかるまで近く、私はもうそれだけで、顔から火が出そうなくらいに恥ずかしかった。
……近いー! 近いー! すっごく、格好良いけど!
美形の問い正し、ときめき過ぎて、一乙女の胸を痛くした罪で完全に有罪だよ……慰謝料を払ってもらいたい。
無理無理……こういうのって、画面越しだから、尊くてキュン死とか、愛し過ぎて病むとか悠長なこと言っていられるけど、リアルでこんなの難易度高すぎて、ここで可愛いこと言ったりなんなら強がりツンしたり、そんなの絶対無理ゲーだよ。
……これは、もう早々に恋が始まる予感しかしない。ここは乙女ゲームの世界っぽいけど、本当のところどうなんだろう。
……もし、そうならば、話は早いはず。多分、ヒロインはリアム殿下を攻略して結ばれているはずだから、ヴィクトルさんは攻略されていない。
ここで彼本人に、面と向かって聞くわけにはいかないけど……ヴィクトルさんは、私のことをどう思っているんだろう……。
乙女ゲームで婚約破棄されてしまう悪役令嬢って、役割上の問題で、ヒロインに負けていないくらい容姿は良いと思う。
だけど、私の脳内では自分を飾ることに興味がない独身喪女が、美男に抱きかかえられている光景しか想像出来なくて、なんだかシュール。
脳内自分像の修正が必要だから、取り急ぎ鏡が欲しいです。
というか、いけない。このままずっと見るだけでいられそうだけど、ヴィクトルさんは、私の反応を待っているみたいだった!
「あ……あのっ、ごめんなさい……初対面なのに、こうして助けて頂いて……ヴィクトルさんが居てくださって、本当に助かりました」
美男が間近なシチュエーションへの緊張のあまり、私がたどたどしく感謝の言葉を伝えると、ヴィクトルさんは不思議そうな表情をしてから頷いた。
「……? ああ。レティシア。僕のことは、ヴィクトルと。君の方が身分は上なので……しかし何故、君がリアム殿下に、婚約破棄されることになったんですか?」
ん? あ。私……つまり、レティシアが属するルブラン公爵家より、ヴィクトルさんのデストレ辺境伯家の方が、格下になってしまうって話なのかな?
公爵家って王家の血筋が入った最上位爵位だから、そうなっているのかもしれない。自分の死因もわからないうろ覚え現代知識によると、きっとそう。
それに……うんうん。ヴィクトルだって、婚約破棄されるなんて、どうしてって思うよね。
婚約破棄された理由、とても気になるよね……私だって、実際のところ、気にはなってる。普通に覚えてないし。
けど、大丈夫。
よしんば記憶がなかったとしても、悪役令嬢が婚約者の王子様から婚約破棄される理由は、大体、この理由一択だから。
わー……すっごい。豪華ー! 私たちが居たのは、美しい白亜のお城だった。
ヴィクトルさんは迷いない足取りで、城の広い廊下を歩いた。足が長い人って、普通に歩いているだけで、こんなにも速度が出てしまうものなの……?
しかも、彼の身長が高いものだから、私からすると若干ジェットコースターみたいな感覚がある。
「レティシア……大丈夫ですか?」
考え事をしてぼうっとしていた私は、不意に声を掛けられて慌てて頷いた。
「あ……はい。大丈夫です」
「本当に?」
ヴィクトルさんの整った顔は息がかかるまで近く、私はもうそれだけで、顔から火が出そうなくらいに恥ずかしかった。
……近いー! 近いー! すっごく、格好良いけど!
美形の問い正し、ときめき過ぎて、一乙女の胸を痛くした罪で完全に有罪だよ……慰謝料を払ってもらいたい。
無理無理……こういうのって、画面越しだから、尊くてキュン死とか、愛し過ぎて病むとか悠長なこと言っていられるけど、リアルでこんなの難易度高すぎて、ここで可愛いこと言ったりなんなら強がりツンしたり、そんなの絶対無理ゲーだよ。
……これは、もう早々に恋が始まる予感しかしない。ここは乙女ゲームの世界っぽいけど、本当のところどうなんだろう。
……もし、そうならば、話は早いはず。多分、ヒロインはリアム殿下を攻略して結ばれているはずだから、ヴィクトルさんは攻略されていない。
ここで彼本人に、面と向かって聞くわけにはいかないけど……ヴィクトルさんは、私のことをどう思っているんだろう……。
乙女ゲームで婚約破棄されてしまう悪役令嬢って、役割上の問題で、ヒロインに負けていないくらい容姿は良いと思う。
だけど、私の脳内では自分を飾ることに興味がない独身喪女が、美男に抱きかかえられている光景しか想像出来なくて、なんだかシュール。
脳内自分像の修正が必要だから、取り急ぎ鏡が欲しいです。
というか、いけない。このままずっと見るだけでいられそうだけど、ヴィクトルさんは、私の反応を待っているみたいだった!
「あ……あのっ、ごめんなさい……初対面なのに、こうして助けて頂いて……ヴィクトルさんが居てくださって、本当に助かりました」
美男が間近なシチュエーションへの緊張のあまり、私がたどたどしく感謝の言葉を伝えると、ヴィクトルさんは不思議そうな表情をしてから頷いた。
「……? ああ。レティシア。僕のことは、ヴィクトルと。君の方が身分は上なので……しかし何故、君がリアム殿下に、婚約破棄されることになったんですか?」
ん? あ。私……つまり、レティシアが属するルブラン公爵家より、ヴィクトルさんのデストレ辺境伯家の方が、格下になってしまうって話なのかな?
公爵家って王家の血筋が入った最上位爵位だから、そうなっているのかもしれない。自分の死因もわからないうろ覚え現代知識によると、きっとそう。
それに……うんうん。ヴィクトルだって、婚約破棄されるなんて、どうしてって思うよね。
婚約破棄された理由、とても気になるよね……私だって、実際のところ、気にはなってる。普通に覚えてないし。
けど、大丈夫。
よしんば記憶がなかったとしても、悪役令嬢が婚約者の王子様から婚約破棄される理由は、大体、この理由一択だから。
370
お気に入りに追加
543
あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる