モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?

待鳥園子

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39 ひどい雨の中②

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「澪。少し待ってって」

 重い通学バッグを持って早足で歩く私と、手ぶらでリーチの長い行高との競争なんて、ほんとすぐに決着がついてしまう。

 靴箱の前で、ぐいっと肩を引かれてしまった。

「なんで? 助けたつもりだったけど、俺間違えた?」

「ううん。間違えてない。けど」

 なんだろう。鷹羽くんのことが好きになりかけているのは認めるのは難しい。恥ずかしい。それを、行高には言い難い。

「あいつと……もう付き合ってるって?」

「付き合ってない。けど、正直、気になってる」

 気になっている。別に一番最初に告白されたからって訳でもなくて、鷹羽くんが私のことを好きで居てくれて、それなのに、よくわからない態度を取られてショックだった。

 けど、理由を聞けばそれも仕方ないと思った。

 大会手前でもうすぐ引退する先輩たちのことを考えて、後輩たちの写真を使って騒ぎになることは避けたいって……そういう気持ちも理解することが出来た。

 だから、私も鷹羽くんと話してみたくなった。行高も良い人だと思うけど、なんだか話すことも緊張してしまって、胸がドキドキしてしまうのは、鷹羽くんなのだ。

「あんな風に不安なままに放ったらかしにして、ひどい奴なのに……もしかして、好きなのか?」

「……私は別に、私を一番に優先して欲しいだなんて、言えない。そうして欲しい女の子なら、行高の方が好きだと思う。けど、鷹羽くんは部活の先輩後輩の気持ちを考えて、自分の気持ちを抑えたんだよ」

 私だって、行高の言わんとしている事はわかる。自分から告白しておいて、何を言わないままで不安にさせて、なのに今更何を言ってるんだよって、それって皆思ってしまうと思う。

 けど、これまでに謎に包まれていた鷹羽くん側の事情とか、彼の気持ちとか……そういう事を知って、私は鷹羽くんが気になってしまった。

 これって、私でなかったら違うかもしれないけど、鷹羽くんだって完璧な人でもないんだから、その時その時で一番に良い判断できなくたって仕方ないと思った。

 彼側の事情を聞いて許すって言ったら上から言っているようかもしれないけれど、私でもそうすると思えば、理解したいって思った。

「そっか。ごめん……」

 項垂れた行高は私の気持ちを知って、落ち込んでいたようだった。けど、ここで私が慰めても、なんだかそれはおかしいので私も謝った。

「ううん。私の方こそ、ごめんなさい」

 私はこれまでの一連の流れを普通に謝ったつもりだったけど、彼からすれば自らの告白を断られたように思えたのかもしれない。

 顔を上げた行高は、傷ついた目をしていた。

 けど、二人と付き合う訳にもいかないし、私はそこで何も言えなかった。
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