23 / 43
23 彼の事情②
しおりを挟む
「告白してからすぐに、有馬と一緒に帰ろうとしていた時、夕凪さんが僕に声を掛けて来た。そこまでは有馬も知っていると思うんだけど……」
「うん」
「実はあの時、僕は彼女から一枚の写真を見せられた」
「写真?」
「バスケ部の後輩の一年生二人が、煙草を吸っているだろう写真だった」
「……え?」
私は絶句した。二十歳以下の煙草と飲酒は違法行為。もし、そんなことが公になってしまったら、大変なことになる。
その二人は退学かもしくは停学、そして所属しているバスケ部もただでは済まないだろう。
「写真は……正直言うと、良くわからなかった。言われればそう見えるし、僕には知識がなくてわかりづらいけど合成なのかもしれない。微妙なラインにある写真だ。けど、夕凪さんは僕にそれをばら撒かれたくなかったら、自分の言う事を聞くように言って来た。あの二人が違うと言ったとしても、ばらまかれた時点で色んな人に疑われてしまう。僕のせいでそんな目に遭わせる訳にはいかないと思った」
「なんだよ! それ!」
後輩を大事に思う彼の気持ちを盾に取った卑劣な行為だ。酷い。我慢出来なくなったのか、行高は立ち上がって言った。
私だって同じ気持ちだ。完全に後輩を想う気持ちを利用されて脅されている。
夕凪さんはそんな酷い行為でで鷹羽くんに言う事を聞かせて、それで満足なのだろうか?
「……バスケ部の先輩たちは可愛がっているし、部の仲間は今回の県大会はすごく力を入れているんだ……せめて大会が終わるまではと、脅された瞬間に思ってしまった。疑惑だけだとしても、それを晴らすまでに時間がかかってしまう。それと、あの二人にも確かめたかったのもある。合成されただけだったり、他人の空似という可能性もあるからね」
「その後輩二人は……なんて?」
当の本人たちが違うと言ってしまえばそれまでなのかもしれない。けれど、一度そういう写真がばらまかれてしまえば、一度でも疑われたという過去と、そういう写真があるというデジタルタトゥーになってしまう。
鷹羽くんは大きく息をついて、首を振った。
「まだ、何も話せていない。話も話だから、スマホのメッセージに残ってしまうのもためらわれて。後、知っての通り、休み時間なんかは夕凪さんに監視されている。だから、今日の部活終わり捕まえるつもりだったんだけど……」
「あ、私が待っていたから……」
私が話したいと待っていたから、その当事者の二人と話せなかったのかもしれない。
「……違う! それは嬉しかった……んだけど、まあ、そういう訳でまだ確認も出来ていない状態なんだ」
否定する意見で首を横に振り、最後に照れるようにして話を終わらせると、鷹羽くんはため息をついた。
「僕もあの後輩たちが本当にそれをしたのなら、罰は受けるべきだとは思う。ほんの出来心だとしても、やったことは事実だ。けど、今年が最後になる先輩たちの今までの頑張りや、これまで積み重ねてきたことを僕の勝手で無にしてしまって良いのかっていう葛藤もあったんだ」
鷹羽くんの机の上の手が、ぎゅっと強く握られる。
それは、そうだろう。三年生は次の大会で引退だし、その後は受験漬けの日々が始まる。鷹羽くんの葛藤はもっともなことだと思えた。
「……そんなこと関係あるのかよ」
「うん」
「実はあの時、僕は彼女から一枚の写真を見せられた」
「写真?」
「バスケ部の後輩の一年生二人が、煙草を吸っているだろう写真だった」
「……え?」
私は絶句した。二十歳以下の煙草と飲酒は違法行為。もし、そんなことが公になってしまったら、大変なことになる。
その二人は退学かもしくは停学、そして所属しているバスケ部もただでは済まないだろう。
「写真は……正直言うと、良くわからなかった。言われればそう見えるし、僕には知識がなくてわかりづらいけど合成なのかもしれない。微妙なラインにある写真だ。けど、夕凪さんは僕にそれをばら撒かれたくなかったら、自分の言う事を聞くように言って来た。あの二人が違うと言ったとしても、ばらまかれた時点で色んな人に疑われてしまう。僕のせいでそんな目に遭わせる訳にはいかないと思った」
「なんだよ! それ!」
後輩を大事に思う彼の気持ちを盾に取った卑劣な行為だ。酷い。我慢出来なくなったのか、行高は立ち上がって言った。
私だって同じ気持ちだ。完全に後輩を想う気持ちを利用されて脅されている。
夕凪さんはそんな酷い行為でで鷹羽くんに言う事を聞かせて、それで満足なのだろうか?
「……バスケ部の先輩たちは可愛がっているし、部の仲間は今回の県大会はすごく力を入れているんだ……せめて大会が終わるまではと、脅された瞬間に思ってしまった。疑惑だけだとしても、それを晴らすまでに時間がかかってしまう。それと、あの二人にも確かめたかったのもある。合成されただけだったり、他人の空似という可能性もあるからね」
「その後輩二人は……なんて?」
当の本人たちが違うと言ってしまえばそれまでなのかもしれない。けれど、一度そういう写真がばらまかれてしまえば、一度でも疑われたという過去と、そういう写真があるというデジタルタトゥーになってしまう。
鷹羽くんは大きく息をついて、首を振った。
「まだ、何も話せていない。話も話だから、スマホのメッセージに残ってしまうのもためらわれて。後、知っての通り、休み時間なんかは夕凪さんに監視されている。だから、今日の部活終わり捕まえるつもりだったんだけど……」
「あ、私が待っていたから……」
私が話したいと待っていたから、その当事者の二人と話せなかったのかもしれない。
「……違う! それは嬉しかった……んだけど、まあ、そういう訳でまだ確認も出来ていない状態なんだ」
否定する意見で首を横に振り、最後に照れるようにして話を終わらせると、鷹羽くんはため息をついた。
「僕もあの後輩たちが本当にそれをしたのなら、罰は受けるべきだとは思う。ほんの出来心だとしても、やったことは事実だ。けど、今年が最後になる先輩たちの今までの頑張りや、これまで積み重ねてきたことを僕の勝手で無にしてしまって良いのかっていう葛藤もあったんだ」
鷹羽くんの机の上の手が、ぎゅっと強く握られる。
それは、そうだろう。三年生は次の大会で引退だし、その後は受験漬けの日々が始まる。鷹羽くんの葛藤はもっともなことだと思えた。
「……そんなこと関係あるのかよ」
25
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1、ブザービートからはじまる恋〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※第15回童話・児童書大賞用作品のため、アルファポリス様のみで掲載中。→noichigoさんに転載。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
わたしの婚約者は学園の王子さま!
久里
児童書・童話
平凡な女子中学生、野崎莉子にはみんなに隠している秘密がある。実は、学園中の女子が憧れる王子、漣奏多の婚約者なのだ!こんなことを奏多の親衛隊に知られたら、平和な学校生活は望めない!周りを気にしてこの関係をひた隠しにする莉子VSそんな彼女の態度に不満そうな奏多によるドキドキ学園ラブコメ。
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)

四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる