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特別SS
あの日の子竜目線
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親友の奥さんを、可愛いと思ってしまった。
最初は認めたくなかった。面倒なのが何より嫌いな俺がよりによって学生時代からの親友の奥さんに一目惚れしてしまうとは、思わなかった。
「ボス、急に笑ってどうかしました?」
会社に戻る車を運転している綾翔が不思議そうにバックミラーを見る。
「おい、雄吾が奥さん連れてきてたぞ」
「雄吾が? あいつ女嫌いじゃなかったでしたっけ。しかもボスのお姉様のせいで」
揶揄するように綾翔は肩を竦めた。
「……まあな。あんな可愛い人間の奥さんもらえるなら、傷ついた心も癒えるだろうさ」
それだけ、だと思っていた。いくら可愛くたって、会えなければ何も出来ない。いつか忘れてしまうだろう。そう思った。
運命はそれを許してくれなかった。何度か会う内に囚われていってしまった心が痛い。手に入らないものを望むなんて俺らしくないと思った。
でも、幸運にも手に入ったんだ。君は俺を受け入れてくれた。絶対に離さないと、そう誓った。
「子竜? 透子が大変なんだ。置き手紙をしていなくなっている。小夜乃に会いに行ったって書いている」
どくりと鼓動が跳ねた。小夜乃に会いに行った? なんで。どうして。とにかく、急いで巣に向かった。仕事なんて後でどうにでもなる。俺には君が一番大事なんだ。
小夜乃はこんな状況なのに、恋をしている兄の理人に会えたことが嬉しいのか、終始にこにこしながら、話していた。森の奥に置いてきたから、迎えに行ってあげて、だと? 俺は自分の能力でこの女を消炭にすることが出来る。一瞬の内に。証拠も残さすに消してしまえるが、こんな女に一瞬でも時間を割くより透子ちゃんを探し出すことが先決だと思った。理人は冷静に見えるが、怒りで握っていた拳が震えていたのを俺は見た。
理人の指揮の元、俺達は走り出す。途中、理人が引き返すのが見えたがあいつのことだから、何か考えがあるんだろう。
俺は何時間も暗い森を駆けてそれでも見つからなくて焦れていた俺に春の遠吠えが聞こえてきた。
“透子を見つけた!“
“俺が行くまで近づくなよ!“
ぼろぼろの姿になっても可愛い透子ちゃんは俺達が近づくことを毛があったら逆立ってるだろうなって思うくらい全身で拒否していた。事情を聞くと、そりゃそうなる。納得した。やっぱりあの女消炭にしとけば良かったなと後悔した。
理人が阿仁の能力で病を消し去る。力を抜いた透子ちゃんに俺は近づいて頬を舐めた。君になら殺されても良いけどって軽口を叩きそうになって、やっぱり思いとどまった。くたくたになった体で懸命に森の中を歩いた彼女の胸の内がどれだけ辛かったかなんて想像もつかない。とにかく俺達はこの暗い森の中から彼女を連れ帰ることを先決にした。
怪我は……酷かった。女の子の手足にあれだけの傷をつけるような状況を作り出したあの女が許せなかった。治療師が来て綺麗に治してくれたが、傷を負った記憶までもは消してくれない。
今度こそ絶対に守る、そう誓った。忌まわしいと人に言われる俺の能力を使ったとしても、必ず。
やっぱり俺は誰よりも君が好きみたいだ。何も返さなくて良い。欲しいのは君からのすこしの愛だけ。あの時そう言っただろ?
最初は認めたくなかった。面倒なのが何より嫌いな俺がよりによって学生時代からの親友の奥さんに一目惚れしてしまうとは、思わなかった。
「ボス、急に笑ってどうかしました?」
会社に戻る車を運転している綾翔が不思議そうにバックミラーを見る。
「おい、雄吾が奥さん連れてきてたぞ」
「雄吾が? あいつ女嫌いじゃなかったでしたっけ。しかもボスのお姉様のせいで」
揶揄するように綾翔は肩を竦めた。
「……まあな。あんな可愛い人間の奥さんもらえるなら、傷ついた心も癒えるだろうさ」
それだけ、だと思っていた。いくら可愛くたって、会えなければ何も出来ない。いつか忘れてしまうだろう。そう思った。
運命はそれを許してくれなかった。何度か会う内に囚われていってしまった心が痛い。手に入らないものを望むなんて俺らしくないと思った。
でも、幸運にも手に入ったんだ。君は俺を受け入れてくれた。絶対に離さないと、そう誓った。
「子竜? 透子が大変なんだ。置き手紙をしていなくなっている。小夜乃に会いに行ったって書いている」
どくりと鼓動が跳ねた。小夜乃に会いに行った? なんで。どうして。とにかく、急いで巣に向かった。仕事なんて後でどうにでもなる。俺には君が一番大事なんだ。
小夜乃はこんな状況なのに、恋をしている兄の理人に会えたことが嬉しいのか、終始にこにこしながら、話していた。森の奥に置いてきたから、迎えに行ってあげて、だと? 俺は自分の能力でこの女を消炭にすることが出来る。一瞬の内に。証拠も残さすに消してしまえるが、こんな女に一瞬でも時間を割くより透子ちゃんを探し出すことが先決だと思った。理人は冷静に見えるが、怒りで握っていた拳が震えていたのを俺は見た。
理人の指揮の元、俺達は走り出す。途中、理人が引き返すのが見えたがあいつのことだから、何か考えがあるんだろう。
俺は何時間も暗い森を駆けてそれでも見つからなくて焦れていた俺に春の遠吠えが聞こえてきた。
“透子を見つけた!“
“俺が行くまで近づくなよ!“
ぼろぼろの姿になっても可愛い透子ちゃんは俺達が近づくことを毛があったら逆立ってるだろうなって思うくらい全身で拒否していた。事情を聞くと、そりゃそうなる。納得した。やっぱりあの女消炭にしとけば良かったなと後悔した。
理人が阿仁の能力で病を消し去る。力を抜いた透子ちゃんに俺は近づいて頬を舐めた。君になら殺されても良いけどって軽口を叩きそうになって、やっぱり思いとどまった。くたくたになった体で懸命に森の中を歩いた彼女の胸の内がどれだけ辛かったかなんて想像もつかない。とにかく俺達はこの暗い森の中から彼女を連れ帰ることを先決にした。
怪我は……酷かった。女の子の手足にあれだけの傷をつけるような状況を作り出したあの女が許せなかった。治療師が来て綺麗に治してくれたが、傷を負った記憶までもは消してくれない。
今度こそ絶対に守る、そう誓った。忌まわしいと人に言われる俺の能力を使ったとしても、必ず。
やっぱり俺は誰よりも君が好きみたいだ。何も返さなくて良い。欲しいのは君からのすこしの愛だけ。あの時そう言っただろ?
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