まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え~もふもふ人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

待鳥園子

文字の大きさ
上 下
117 / 151
第一部

飛び込む

しおりを挟む
「何してくれるんだ?」
 耳元で囁き返されてくすぐったい。彼の短い黒髪に触れて、ゆっくり頭を撫でた。
「雄吾さんがいつも私にしてくれてることをしてあげたいです」
 片眉を上げると、不思議そうに笑った。その大きな腕で包むように私を抱きしめると髪を撫でた。
「無理だな」
「どうしてですか」
「俺と同じようにするのは無理」
「……理由を教えてください」
 私は胸元から顔を出して見上げた。雄吾さんはいつになく優しく微笑むと、鼻をぶつけるくらい近くで言った。
「俺と同じくらい好きになるのは無理だよ。これ以上ないくらい君が好きだ」
 ぎゅっとつよく抱きしめられて長いキスをした。比喩じゃなく食べられるようなキスが続いて息がしづらくて頭がクラクラする。ちゅっと一度離すと、雄吾さんは私を抱き上げた。

「そうだな。今日はせっかくの透子を独り占めだからな。夜空の下でしようか」
「……外は寒いですよ?」
「プールにもベッドがあったな……」
 そうか、室内プールはガラス張りだから……私はこくんと頷いた。あの場所ならちゃんと室内だから暖かいはずで。
「……良いか?」
「雄吾さんって意外とロマンチストなんですね」
 ふっと笑ったまま、雄吾さんは私を抱き上げたまま、プールまで連れて行ってくれた。

 日が暮れた後でも入れるようにだろう、お洒落な間接照明が付いている。本当にどの部分にも行き届いていて、この別荘のデザイナーさんの心遣いが感じられた。
 灯りがプールの水に当たって光を弾く。揺らめく水面の複雑な模様の影が綺麗。

 私はあっという間にパジャマを脱がされたところでちょっと悪戯心に火がついた。
 素早く雄吾さんの手を離れるとそのままプールに飛び込む。顔をあげた私は呆気に取られたように立ちすくむ雄吾さんを見た。
「ふふっ、気持ち良いですよ?」
 ゆっくりと立ち泳ぎする私に困ったように笑う雄吾さん。
「透子、人魚の絵みたいで綺麗だ」
 まさかそんなことを言われるなんて思ってなくて、驚いて顔を覆ってしまう。
 雄吾さんはそろっとプールに入り、私に近づく。私は足はつかないけど、背の高い雄吾さんは余裕で足がついているみたい。手を伸ばしてくれるから、私もその手を取った。
「せっかくお風呂にも入ったのに洗った髪もびしょびしょだな」
「……ごめんなさい。プール見たらつい飛び込んじゃうんです」
 私の言葉にクッと雄吾さんは笑った。
「透子は本当に可愛いな」
 反対に私はちょっと眉を寄せた。
「ありがとうございます?」
「なんで疑問形なんだ」
「なんだか、子ども扱いされている感じがしました」
「子どもと子どもは作れないな?」
 雄吾さんは水の浮力で浮いている私の胸の先を押した。すっかり敏感になってしまっていてすこしの刺激にも熱が走る。
「きゃっ、雄吾さん」
「……おいで」

 私はその厚い胸に顔をつけた。何よりも安心できるところ。
「ずっと一緒に居るって約束しても……何度約束しても不安なんだ。あんなに簡単な方法だったなんて……思いもしなかったから」
 ぎゅっと抱きしめられて、そっとキスを落とす。
「……私がこの世界に来た時」
「なんだ?」
「願ったのかもしれないです。もしかしたら、こんな風につよく愛されたいって強く。……そうしたら」
「そうしたら?」
「きっと、願いが叶ったんだと思います。この世界から帰りたいなんて、絶対に思わないです」
 今日の月は三日月。どこか誰かが笑うように私を見つめている気がした。

「……俺はこの世の中に絶対がないことも知ってるんだ。だから、出来るだけ、足掻きたい」
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

目が覚めたら男女比がおかしくなっていた

いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。 一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!? 「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」 ##### r15は保険です。 2024年12月12日 私生活に余裕が出たため、投稿再開します。 それにあたって一部を再編集します。 設定や話の流れに変更はありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

囚われの姫〜異世界でヴァンパイアたちに溺愛されて〜

月嶋ゆのん
恋愛
志木 茉莉愛(しき まりあ)は図書館で司書として働いている二十七歳。 ある日の帰り道、見慣れない建物を見かけた茉莉愛は導かれるように店内へ。 そこは雑貨屋のようで、様々な雑貨が所狭しと並んでいる中、見つけた小さいオルゴールが気になり、音色を聞こうとゼンマイを回し音を鳴らすと、突然強い揺れが起き、驚いた茉莉愛は手にしていたオルゴールを落としてしまう。 すると、辺り一面白い光に包まれ、眩しさで目を瞑った茉莉愛はそのまま意識を失った。 茉莉愛が目覚めると森の中で、酷く困惑する。 そこへ現れたのは三人の青年だった。 行くあてのない茉莉愛は彼らに促されるまま森を抜け彼らの住む屋敷へやって来て詳しい話を聞くと、ここは自分が住んでいた世界とは別世界だという事を知る事になる。 そして、暫く屋敷で世話になる事になった茉莉愛だが、そこでさらなる事実を知る事になる。 ――助けてくれた青年たちは皆、人間ではなくヴァンパイアだったのだ。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...