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第一部
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「何してくれるんだ?」
耳元で囁き返されてくすぐったい。彼の短い黒髪に触れて、ゆっくり頭を撫でた。
「雄吾さんがいつも私にしてくれてることをしてあげたいです」
片眉を上げると、不思議そうに笑った。その大きな腕で包むように私を抱きしめると髪を撫でた。
「無理だな」
「どうしてですか」
「俺と同じようにするのは無理」
「……理由を教えてください」
私は胸元から顔を出して見上げた。雄吾さんはいつになく優しく微笑むと、鼻をぶつけるくらい近くで言った。
「俺と同じくらい好きになるのは無理だよ。これ以上ないくらい君が好きだ」
ぎゅっとつよく抱きしめられて長いキスをした。比喩じゃなく食べられるようなキスが続いて息がしづらくて頭がクラクラする。ちゅっと一度離すと、雄吾さんは私を抱き上げた。
「そうだな。今日はせっかくの透子を独り占めだからな。夜空の下でしようか」
「……外は寒いですよ?」
「プールにもベッドがあったな……」
そうか、室内プールはガラス張りだから……私はこくんと頷いた。あの場所ならちゃんと室内だから暖かいはずで。
「……良いか?」
「雄吾さんって意外とロマンチストなんですね」
ふっと笑ったまま、雄吾さんは私を抱き上げたまま、プールまで連れて行ってくれた。
日が暮れた後でも入れるようにだろう、お洒落な間接照明が付いている。本当にどの部分にも行き届いていて、この別荘のデザイナーさんの心遣いが感じられた。
灯りがプールの水に当たって光を弾く。揺らめく水面の複雑な模様の影が綺麗。
私はあっという間にパジャマを脱がされたところでちょっと悪戯心に火がついた。
素早く雄吾さんの手を離れるとそのままプールに飛び込む。顔をあげた私は呆気に取られたように立ちすくむ雄吾さんを見た。
「ふふっ、気持ち良いですよ?」
ゆっくりと立ち泳ぎする私に困ったように笑う雄吾さん。
「透子、人魚の絵みたいで綺麗だ」
まさかそんなことを言われるなんて思ってなくて、驚いて顔を覆ってしまう。
雄吾さんはそろっとプールに入り、私に近づく。私は足はつかないけど、背の高い雄吾さんは余裕で足がついているみたい。手を伸ばしてくれるから、私もその手を取った。
「せっかくお風呂にも入ったのに洗った髪もびしょびしょだな」
「……ごめんなさい。プール見たらつい飛び込んじゃうんです」
私の言葉にクッと雄吾さんは笑った。
「透子は本当に可愛いな」
反対に私はちょっと眉を寄せた。
「ありがとうございます?」
「なんで疑問形なんだ」
「なんだか、子ども扱いされている感じがしました」
「子どもと子どもは作れないな?」
雄吾さんは水の浮力で浮いている私の胸の先を押した。すっかり敏感になってしまっていてすこしの刺激にも熱が走る。
「きゃっ、雄吾さん」
「……おいで」
私はその厚い胸に顔をつけた。何よりも安心できるところ。
「ずっと一緒に居るって約束しても……何度約束しても不安なんだ。あんなに簡単な方法だったなんて……思いもしなかったから」
ぎゅっと抱きしめられて、そっとキスを落とす。
「……私がこの世界に来た時」
「なんだ?」
「願ったのかもしれないです。もしかしたら、こんな風につよく愛されたいって強く。……そうしたら」
「そうしたら?」
「きっと、願いが叶ったんだと思います。この世界から帰りたいなんて、絶対に思わないです」
今日の月は三日月。どこか誰かが笑うように私を見つめている気がした。
「……俺はこの世の中に絶対がないことも知ってるんだ。だから、出来るだけ、足掻きたい」
耳元で囁き返されてくすぐったい。彼の短い黒髪に触れて、ゆっくり頭を撫でた。
「雄吾さんがいつも私にしてくれてることをしてあげたいです」
片眉を上げると、不思議そうに笑った。その大きな腕で包むように私を抱きしめると髪を撫でた。
「無理だな」
「どうしてですか」
「俺と同じようにするのは無理」
「……理由を教えてください」
私は胸元から顔を出して見上げた。雄吾さんはいつになく優しく微笑むと、鼻をぶつけるくらい近くで言った。
「俺と同じくらい好きになるのは無理だよ。これ以上ないくらい君が好きだ」
ぎゅっとつよく抱きしめられて長いキスをした。比喩じゃなく食べられるようなキスが続いて息がしづらくて頭がクラクラする。ちゅっと一度離すと、雄吾さんは私を抱き上げた。
「そうだな。今日はせっかくの透子を独り占めだからな。夜空の下でしようか」
「……外は寒いですよ?」
「プールにもベッドがあったな……」
そうか、室内プールはガラス張りだから……私はこくんと頷いた。あの場所ならちゃんと室内だから暖かいはずで。
「……良いか?」
「雄吾さんって意外とロマンチストなんですね」
ふっと笑ったまま、雄吾さんは私を抱き上げたまま、プールまで連れて行ってくれた。
日が暮れた後でも入れるようにだろう、お洒落な間接照明が付いている。本当にどの部分にも行き届いていて、この別荘のデザイナーさんの心遣いが感じられた。
灯りがプールの水に当たって光を弾く。揺らめく水面の複雑な模様の影が綺麗。
私はあっという間にパジャマを脱がされたところでちょっと悪戯心に火がついた。
素早く雄吾さんの手を離れるとそのままプールに飛び込む。顔をあげた私は呆気に取られたように立ちすくむ雄吾さんを見た。
「ふふっ、気持ち良いですよ?」
ゆっくりと立ち泳ぎする私に困ったように笑う雄吾さん。
「透子、人魚の絵みたいで綺麗だ」
まさかそんなことを言われるなんて思ってなくて、驚いて顔を覆ってしまう。
雄吾さんはそろっとプールに入り、私に近づく。私は足はつかないけど、背の高い雄吾さんは余裕で足がついているみたい。手を伸ばしてくれるから、私もその手を取った。
「せっかくお風呂にも入ったのに洗った髪もびしょびしょだな」
「……ごめんなさい。プール見たらつい飛び込んじゃうんです」
私の言葉にクッと雄吾さんは笑った。
「透子は本当に可愛いな」
反対に私はちょっと眉を寄せた。
「ありがとうございます?」
「なんで疑問形なんだ」
「なんだか、子ども扱いされている感じがしました」
「子どもと子どもは作れないな?」
雄吾さんは水の浮力で浮いている私の胸の先を押した。すっかり敏感になってしまっていてすこしの刺激にも熱が走る。
「きゃっ、雄吾さん」
「……おいで」
私はその厚い胸に顔をつけた。何よりも安心できるところ。
「ずっと一緒に居るって約束しても……何度約束しても不安なんだ。あんなに簡単な方法だったなんて……思いもしなかったから」
ぎゅっと抱きしめられて、そっとキスを落とす。
「……私がこの世界に来た時」
「なんだ?」
「願ったのかもしれないです。もしかしたら、こんな風につよく愛されたいって強く。……そうしたら」
「そうしたら?」
「きっと、願いが叶ったんだと思います。この世界から帰りたいなんて、絶対に思わないです」
今日の月は三日月。どこか誰かが笑うように私を見つめている気がした。
「……俺はこの世の中に絶対がないことも知ってるんだ。だから、出来るだけ、足掻きたい」
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