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第一部
独り占め
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「明日、凛太と春が来るらしい」
ソファに座っている雄吾さんは電話を切りながらこちらを向いた。もう、私はお風呂にも入ってパジャマも着ているし寝る準備は万端だ。
結局子竜さんの急ぎの仕事は終わらなくて数日帰れなくなるってさっきメッセージが来たから、今日は、珍しく雄吾さんと二人きりだ。
雄吾さんも今夜はなんだか忙しそうに色々しているみたいだ。私の部屋にノートパソコンを持ってきて、慌ただしく入力をしている。私はその隣で大きなマグカップでハーブティを飲んでいた。
「すまない……遅くなるから先に寝ててくれ」
雄吾さんは顔をしかめながら言った。さっきまで普段通りだったのに、電話が入ってから急に忙しくなったんだよね。
「まだ眠くないから、起きてますね」
ゆっくり体を傾けて腕まくりした生身の腕に頬をつけた。筋張っていて硬い。
「寝かさないとか言っといて、悪い……どうも、投資先がヘマしたらしい」
私は首を振った。雄吾さんのお仕事が大変な仕事なのはわかっていた。
「お仕事、大事なのわかってます。でも眠くなるまで一緒に居て良いですか?」
「……ああ」
雄吾さんはちょっと顔を赤くしながら黒縁眼鏡を直してパソコンに向き直った。カタカタとタイプする音が響く。
「もうちょっとで終わる。後はデータを送るだけだから……」
私はタイプに夢中になっていた雄吾さんに膝枕してもらっていて、丁度真上にある顔を見上げた。くすっと笑うと、雄吾さんも笑う。
「……今日は出掛けて疲れただろう。眠たくなって来たか?」
低く甘い声で言うから私は首を振った。
「なんだか、ずっと考えていた謎が解けてすごくスッキリした気分なんです。気分爽快って言ったらおかしいですけど、今夜はまだまだ眠りたくないです」
「……そうか」
雄吾さんは体を抱き上げると私にキスをしてくれた。ぬるりと入り込んだ舌がゆっくりと私の舌を追い詰めるように動く。
「……ん、お仕事は良いんですか?」
ちゅ、ちゅっと優しく唇を啄まれている隙に問うた。
「良い。もうアップロード中だから、いずれ終わるだろう」
「終わった確認、しなくて良いんですか?」
雄吾さんはちょっと顔を離して優しく微笑んだ。
「透子がそれまで待っていてくれるなら」
「……どうしようかな」
私は悪戯っぽく囁くと雄吾さんは耳に齧り付いた。
「いつもは良い子なのに、こっちが本性? もう俺にはわからないな」
「良い子の方が好きですか?」
私が言うと、首筋に舌を這わせながら、ちいさく首を振った。
「俺は透子の全部が好きだからな。どこがとかは言えないな」
「……私も全部好きです」
「例えば?」
「顔、性格、声、体……とにかく全部です」
囁くような小さな声で言った私の顔の間近で目を細めた。
「体もお気に召して頂いていたとは知らなかったな……今夜は満足してもらえるように、お姫様に奉仕させてもらおう」
「……ダメです」
雄吾さんは首を傾げた。私がそんなことを言うとは思わなかったんだろう。すこし驚いたように目を見張っている。
そんな雄吾さんの耳元に近づいて囁く。
「今日は私が雄吾さんにしたいです。ダメですか?」
ソファに座っている雄吾さんは電話を切りながらこちらを向いた。もう、私はお風呂にも入ってパジャマも着ているし寝る準備は万端だ。
結局子竜さんの急ぎの仕事は終わらなくて数日帰れなくなるってさっきメッセージが来たから、今日は、珍しく雄吾さんと二人きりだ。
雄吾さんも今夜はなんだか忙しそうに色々しているみたいだ。私の部屋にノートパソコンを持ってきて、慌ただしく入力をしている。私はその隣で大きなマグカップでハーブティを飲んでいた。
「すまない……遅くなるから先に寝ててくれ」
雄吾さんは顔をしかめながら言った。さっきまで普段通りだったのに、電話が入ってから急に忙しくなったんだよね。
「まだ眠くないから、起きてますね」
ゆっくり体を傾けて腕まくりした生身の腕に頬をつけた。筋張っていて硬い。
「寝かさないとか言っといて、悪い……どうも、投資先がヘマしたらしい」
私は首を振った。雄吾さんのお仕事が大変な仕事なのはわかっていた。
「お仕事、大事なのわかってます。でも眠くなるまで一緒に居て良いですか?」
「……ああ」
雄吾さんはちょっと顔を赤くしながら黒縁眼鏡を直してパソコンに向き直った。カタカタとタイプする音が響く。
「もうちょっとで終わる。後はデータを送るだけだから……」
私はタイプに夢中になっていた雄吾さんに膝枕してもらっていて、丁度真上にある顔を見上げた。くすっと笑うと、雄吾さんも笑う。
「……今日は出掛けて疲れただろう。眠たくなって来たか?」
低く甘い声で言うから私は首を振った。
「なんだか、ずっと考えていた謎が解けてすごくスッキリした気分なんです。気分爽快って言ったらおかしいですけど、今夜はまだまだ眠りたくないです」
「……そうか」
雄吾さんは体を抱き上げると私にキスをしてくれた。ぬるりと入り込んだ舌がゆっくりと私の舌を追い詰めるように動く。
「……ん、お仕事は良いんですか?」
ちゅ、ちゅっと優しく唇を啄まれている隙に問うた。
「良い。もうアップロード中だから、いずれ終わるだろう」
「終わった確認、しなくて良いんですか?」
雄吾さんはちょっと顔を離して優しく微笑んだ。
「透子がそれまで待っていてくれるなら」
「……どうしようかな」
私は悪戯っぽく囁くと雄吾さんは耳に齧り付いた。
「いつもは良い子なのに、こっちが本性? もう俺にはわからないな」
「良い子の方が好きですか?」
私が言うと、首筋に舌を這わせながら、ちいさく首を振った。
「俺は透子の全部が好きだからな。どこがとかは言えないな」
「……私も全部好きです」
「例えば?」
「顔、性格、声、体……とにかく全部です」
囁くような小さな声で言った私の顔の間近で目を細めた。
「体もお気に召して頂いていたとは知らなかったな……今夜は満足してもらえるように、お姫様に奉仕させてもらおう」
「……ダメです」
雄吾さんは首を傾げた。私がそんなことを言うとは思わなかったんだろう。すこし驚いたように目を見張っている。
そんな雄吾さんの耳元に近づいて囁く。
「今日は私が雄吾さんにしたいです。ダメですか?」
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