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第一部
天蓋
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「本当にこれって、子竜さんの持ち物なんですか?」
私は天井を見上げた。完全なガラス張りのドーム型だ。子竜さんの持っているホテルでは流石に半ドーム型とか、海が見える方向だけがガラス張りだったりしたんだけど、母屋からの渡り廊下を辿りつけば、デッキチェアや防水のソファやベッドもある完全にリゾートのプールだ。
「そうだよ、透子ちゃんのために買ったんだよ。良くやったって褒めてくれても良いよ?」
子竜さんはプールの水温を確かめるようにすると、私に向かって手招きをした。私は着ていた大きめのパーカーをデッキチェアに掛けると、子竜さんの方に向かった。
「あったかい……」
「ちょっと温度高めに設定したんだよ。今日は結構冷えるからね」
「……ありがとうございます」
「ふ、どういたしまして。じゃあ早速泳ごうか?」
頷き、プールに入った私は背泳ぎでふわっと中央へと向かう。
ぷかぷかとプールに浮いたまま見る水色の青空はどこか寂しげで温かいはずなのにやっぱり寒そうだった。
「どうしたの、黄昏て。急にテンション下がったね」
近くまで泳いで来た子竜さんが顔を覗き込んで来た。水色の鮮やかな赤い髪が混じる。燃えるような灼熱の色。
「なんだか……夢みたいだなあって思ったんです。私の家そんなにお金がある方でもなかったから、余計にそう思うのかも……でも、私のためにって言ってこんな素敵な別荘買ってくれたの、すごく嬉しい。子竜さんありがとう」
そう言った私の体を抱きしめると、子竜さんはちゅっとキスをした。温かい水の中、ふわふわした気持ちになる。
「俺の持つものは全部透子ちゃんの物でもある」
「……私、そんなにたくさん要らないです」
そっと首に手をかけた。結構深くて足がつかない。
「もっと贅沢になって良いんだよ。俺達も、そうしてくれた方がちょっとやりやすいかな。遠慮されると動けなくなる」
「贅沢に、なった方が嬉しいですか?」
「そう、人狼の雄は伴侶を喜ばせることに、最上の喜びを感じるからね、控えめも可愛いけど、もっともっと欲しがっても良いよ」
子竜さんは私を抱きしめたままふわっと水の中に潜ると、水の中でキスをした。
息を交換するようなキスは初めてで、すごく不思議な感覚だった。一瞬だけ真剣な赤い目が私の心を見通すように真っ直ぐ射抜いた。
ざばっと水の上に出ると、子竜さんは悪戯っぽく笑ってクロールで泳ぎ出した。
私もきっと追いつけないけど、追いかけて泳ぐ。ひとしきり二人で泳いで、防水の大きなソファに腰掛けた。
「疲れた? 俺は飲み物持ってくるね」
と、言うと、気の利く子竜さんは近くにあった冷蔵庫からペットボトルを取り出してくれる。
「ありがとうございます」
冷たい水が喉に嬉しい。ちょっと高めの水温だし、空調も効いているから体がぽかぽかになってしまった。
「……子竜さんは何も言わないし、聞かないんですね」
私は隣に腰掛けている子竜さんに言った。夫達は、決してあの時のことを蒸し返したりしなかった。それにあの時無茶をしてしまった体にも触れることもない。怪我はもうすっかり治っているのに示し合わせたかのように、そういうことはしてこない。さっきのキスはすごく久しぶりのキスだった。
「……俺は待てる男だからね。透子ちゃんが話したくなって、俺に何かを聞いて欲しくなるまで、ずっと待てるよ」
私は天井を見上げた。完全なガラス張りのドーム型だ。子竜さんの持っているホテルでは流石に半ドーム型とか、海が見える方向だけがガラス張りだったりしたんだけど、母屋からの渡り廊下を辿りつけば、デッキチェアや防水のソファやベッドもある完全にリゾートのプールだ。
「そうだよ、透子ちゃんのために買ったんだよ。良くやったって褒めてくれても良いよ?」
子竜さんはプールの水温を確かめるようにすると、私に向かって手招きをした。私は着ていた大きめのパーカーをデッキチェアに掛けると、子竜さんの方に向かった。
「あったかい……」
「ちょっと温度高めに設定したんだよ。今日は結構冷えるからね」
「……ありがとうございます」
「ふ、どういたしまして。じゃあ早速泳ごうか?」
頷き、プールに入った私は背泳ぎでふわっと中央へと向かう。
ぷかぷかとプールに浮いたまま見る水色の青空はどこか寂しげで温かいはずなのにやっぱり寒そうだった。
「どうしたの、黄昏て。急にテンション下がったね」
近くまで泳いで来た子竜さんが顔を覗き込んで来た。水色の鮮やかな赤い髪が混じる。燃えるような灼熱の色。
「なんだか……夢みたいだなあって思ったんです。私の家そんなにお金がある方でもなかったから、余計にそう思うのかも……でも、私のためにって言ってこんな素敵な別荘買ってくれたの、すごく嬉しい。子竜さんありがとう」
そう言った私の体を抱きしめると、子竜さんはちゅっとキスをした。温かい水の中、ふわふわした気持ちになる。
「俺の持つものは全部透子ちゃんの物でもある」
「……私、そんなにたくさん要らないです」
そっと首に手をかけた。結構深くて足がつかない。
「もっと贅沢になって良いんだよ。俺達も、そうしてくれた方がちょっとやりやすいかな。遠慮されると動けなくなる」
「贅沢に、なった方が嬉しいですか?」
「そう、人狼の雄は伴侶を喜ばせることに、最上の喜びを感じるからね、控えめも可愛いけど、もっともっと欲しがっても良いよ」
子竜さんは私を抱きしめたままふわっと水の中に潜ると、水の中でキスをした。
息を交換するようなキスは初めてで、すごく不思議な感覚だった。一瞬だけ真剣な赤い目が私の心を見通すように真っ直ぐ射抜いた。
ざばっと水の上に出ると、子竜さんは悪戯っぽく笑ってクロールで泳ぎ出した。
私もきっと追いつけないけど、追いかけて泳ぐ。ひとしきり二人で泳いで、防水の大きなソファに腰掛けた。
「疲れた? 俺は飲み物持ってくるね」
と、言うと、気の利く子竜さんは近くにあった冷蔵庫からペットボトルを取り出してくれる。
「ありがとうございます」
冷たい水が喉に嬉しい。ちょっと高めの水温だし、空調も効いているから体がぽかぽかになってしまった。
「……子竜さんは何も言わないし、聞かないんですね」
私は隣に腰掛けている子竜さんに言った。夫達は、決してあの時のことを蒸し返したりしなかった。それにあの時無茶をしてしまった体にも触れることもない。怪我はもうすっかり治っているのに示し合わせたかのように、そういうことはしてこない。さっきのキスはすごく久しぶりのキスだった。
「……俺は待てる男だからね。透子ちゃんが話したくなって、俺に何かを聞いて欲しくなるまで、ずっと待てるよ」
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