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第一部
血縁
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とりあえず、と言うことで応接室に入ってもらうことにした。小巻さんは無遠慮に凛太さんをじろじろと見ているし、すごく居心地が悪い。
「あの……雄吾さんの大事な話って何ですか?」
私は人数分のお茶を置き終わってから、とりあえず話を切り出した。
出来たら早く帰って欲しい……。
「とぼけないで。兄さんがもう私にお金を送金出来ないって言って来た。あなたが何か言ったんじゃないの?」
「……え?」
思いも寄らなかった答えに、ぽかんとした顔になってしまう。恥ずかしながらお金のことは私は夫達に任せっきりだから、雄吾さんのお金がどうこうって言えることは何もない。
「あの私は何も……」
「じゃあ、あなたからお願いしてくれない? 私すごく困っているの、兄さんのお金がなかったらとても生活していけないし、夫達も突然のことで戸惑っている……あなたもわかるでしょう? 女ってすごくお金がかかるの。お願いだから、兄さんになんとか言って……」
「出て行ってもらえませんか」
言い募る小巻さんに凛太さんは冷たく言い放った。
「雄吾の大事な話だと言うから巣にあげたのに、嘘だったんですね……本人が渡せない、と言っている以上僕達が何も言えることはありません」
「……何よ、私にはこの巣を木っ端微塵にすることだって出来るのよ?」
きりっと大きな黒い目を細めて、小巻さんは私たちを睨んだ。
「……僕を脅すとはね……何も知らないのか……身の程知らずにも程があるな」
ふっと凛太さんは嘲笑するように笑い、小巻さんは眉を寄せてはっとした顔をした。
「凛太は確か……不死者……だったはず……そうなのね……」
「なんだ、やり合う前に思い出してくれて良かったよ。僕も自分の住む巣は荒らしたくないし、どんな雌でも一応は雌なんでね」
小巻さんは悔しそうな顔をすると、私に向かってお茶を掛けた。
「……絶対引き下がらないから……!」
そう叫ぶと応接室のドアを開けて去って行ってしまう。数秒後に玄関のドアがバタンと大きく鳴る音がした。
「透子さん大丈夫ですか? ……火傷は?」
凛太さんが眉を寄せて私の方に向いて言った。髪の毛からぽたぽたと落ちる水滴に唖然としてしまった。だいぶ冷めていたからか、まったく熱くはないけど、こんなことされるとは微塵も思っていなくて、お茶を掛けられたことに対する驚きの方が勝ってしまった。
「えっと大丈夫です……とりあえず、お風呂に入って来ますね」
しまった。
私はお風呂でふわふわした泡でもこもこにしながら髪と体を洗いながら気がついた。慌ててお風呂に入りに来てしまったから、着替えを持ってくるのを忘れてしまった。かと言ってぐっしょりお茶で濡れてしまった服をまた着るのも……。
「透子さん」
お風呂の扉越しに凛太さんに声をかけられた。
「あ、はい」
「すみません、余計なことかと思ったんですが、僕の寝巻きを置いておきますね」
「あ、すみません。ありがとうございます」
私はほっと息を吐いた。良かった。
ざっとシャワーで流してからお風呂を出て凛太さんが置いてくれた着替えに手をかけた。凛太さんはかなり体格も良いし当たり前なんだけど、ぶかぶかになってしまう。下のズボンを履くのは諦めた方が良さそう。
私は自分の部屋に入るまでの我慢と考えて下着を着ずに大きなスウェットの上だけを着た。
「わ」
私はドアを開けて驚いた。そこに凛太さんが立っていたからだ。肩からスウェットがずり落ちそうな私の格好を見て顔が真っ赤になっているし、まさかそんな格好で出てくるとは思わなかったのか、一気に焦げ茶色のふさふさした尻尾が出てしまっている。
夫の一人だし、こういう状況でも確かに問題はないんだけど、やっぱり恥ずかしくて、私は俯いて顔を熱くした。
二人して無言のままで数秒が過ぎてから、急に凛太さんが息を荒くして口を押さえながら言った。
「うっわ。めちゃくちゃ良い匂いがする……舐め回してえ」
「あの……雄吾さんの大事な話って何ですか?」
私は人数分のお茶を置き終わってから、とりあえず話を切り出した。
出来たら早く帰って欲しい……。
「とぼけないで。兄さんがもう私にお金を送金出来ないって言って来た。あなたが何か言ったんじゃないの?」
「……え?」
思いも寄らなかった答えに、ぽかんとした顔になってしまう。恥ずかしながらお金のことは私は夫達に任せっきりだから、雄吾さんのお金がどうこうって言えることは何もない。
「あの私は何も……」
「じゃあ、あなたからお願いしてくれない? 私すごく困っているの、兄さんのお金がなかったらとても生活していけないし、夫達も突然のことで戸惑っている……あなたもわかるでしょう? 女ってすごくお金がかかるの。お願いだから、兄さんになんとか言って……」
「出て行ってもらえませんか」
言い募る小巻さんに凛太さんは冷たく言い放った。
「雄吾の大事な話だと言うから巣にあげたのに、嘘だったんですね……本人が渡せない、と言っている以上僕達が何も言えることはありません」
「……何よ、私にはこの巣を木っ端微塵にすることだって出来るのよ?」
きりっと大きな黒い目を細めて、小巻さんは私たちを睨んだ。
「……僕を脅すとはね……何も知らないのか……身の程知らずにも程があるな」
ふっと凛太さんは嘲笑するように笑い、小巻さんは眉を寄せてはっとした顔をした。
「凛太は確か……不死者……だったはず……そうなのね……」
「なんだ、やり合う前に思い出してくれて良かったよ。僕も自分の住む巣は荒らしたくないし、どんな雌でも一応は雌なんでね」
小巻さんは悔しそうな顔をすると、私に向かってお茶を掛けた。
「……絶対引き下がらないから……!」
そう叫ぶと応接室のドアを開けて去って行ってしまう。数秒後に玄関のドアがバタンと大きく鳴る音がした。
「透子さん大丈夫ですか? ……火傷は?」
凛太さんが眉を寄せて私の方に向いて言った。髪の毛からぽたぽたと落ちる水滴に唖然としてしまった。だいぶ冷めていたからか、まったく熱くはないけど、こんなことされるとは微塵も思っていなくて、お茶を掛けられたことに対する驚きの方が勝ってしまった。
「えっと大丈夫です……とりあえず、お風呂に入って来ますね」
しまった。
私はお風呂でふわふわした泡でもこもこにしながら髪と体を洗いながら気がついた。慌ててお風呂に入りに来てしまったから、着替えを持ってくるのを忘れてしまった。かと言ってぐっしょりお茶で濡れてしまった服をまた着るのも……。
「透子さん」
お風呂の扉越しに凛太さんに声をかけられた。
「あ、はい」
「すみません、余計なことかと思ったんですが、僕の寝巻きを置いておきますね」
「あ、すみません。ありがとうございます」
私はほっと息を吐いた。良かった。
ざっとシャワーで流してからお風呂を出て凛太さんが置いてくれた着替えに手をかけた。凛太さんはかなり体格も良いし当たり前なんだけど、ぶかぶかになってしまう。下のズボンを履くのは諦めた方が良さそう。
私は自分の部屋に入るまでの我慢と考えて下着を着ずに大きなスウェットの上だけを着た。
「わ」
私はドアを開けて驚いた。そこに凛太さんが立っていたからだ。肩からスウェットがずり落ちそうな私の格好を見て顔が真っ赤になっているし、まさかそんな格好で出てくるとは思わなかったのか、一気に焦げ茶色のふさふさした尻尾が出てしまっている。
夫の一人だし、こういう状況でも確かに問題はないんだけど、やっぱり恥ずかしくて、私は俯いて顔を熱くした。
二人して無言のままで数秒が過ぎてから、急に凛太さんが息を荒くして口を押さえながら言った。
「うっわ。めちゃくちゃ良い匂いがする……舐め回してえ」
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