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第一部
疑問
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ひとしきり仕事を黙々とやり終えてふーっと息をつくとじっと興味深そうに見てくる子竜さんに気がついた。
「子竜さん? 何か?」
「いや……本当に真面目な子なんだなって思ってね。こっちの世界での……女の子は大抵堪え性がないからな」
子竜さんはまた苦笑すると、わざわざ私のために用意してくれたコーヒーメーカーから、コーヒーを淹れてくれた。受け取ってこくりと飲む。
「うーん、私も元の世界では、こういう作業するアルバイトをしていたんです。だから、多少は慣れているのかもしれないですね」
「奥さんって、元々学生さんだろ? それでアルバイト?」
「うちは家があまりお金がなくて……でもどうしても行きたくて、大学も無理して入ってて。だから、生活費とかはほとんどアルバイトでした」
私がちょっと微笑みながら言うと、子竜さんは優しい目で頷く。
「そっか、苦学生ってやつね……こっちの世界に来てどう思った?」
「……未だ夢を見ているような感覚がします。素敵な旦那さんを三人も持って、こんなに幸せで良いのかなって。ずっとずっとこれが続けば良いのにって」
「……元の世界は嫌いだった?」
子竜さんは静かに聞いて、私は首を振った。嫌いじゃなかった。毎日の忙しさに忙殺されてしまって、勉強やアルバイト、休む暇もなく、ずっと繋がっていく生活。でも……。
「嫌いじゃないけど、戻りたいとは思えないんです。こっちの世界には皆が居るから」
「そっか、じゃあ、俺とも結婚しない?」
え?
私は目を見開いて止まってしまった。
子竜さん、今さらっと私にプロポーズしなかった?
赤色の派手な髪の人が甘い眼差しで私を見る。
「春はまだ未熟だし、後の二人は多忙だ。俺もそこそこ多忙だけど自分が経営者な分、自由が利く。君に損はさせないと思うが」
「……本気で言ってます?」
「もちろん。前に愛し愛される結婚が良いと言ったと思うが、それが君となら叶えられそうだと思った……ただの直感だけどね」
「えっと……私もう三人も夫が居て」
そして、雄吾さんのお友達なんじゃないだろうか? しかも特別に仲が良さそうだったし……。
「それを言うならこちらの雌は大体五人以上は夫を持っているな。それでも比率的には選ばれし者なんだが」
「あの、えっとすぐにはお返事できません。ごめんなさい」
私はとっさに、縁談を勧められた時の断り文句を口にした。
「うん、わかってる。俺もダメ元なんで、断るのも変な罪悪感持たなくて良いよ。ただ、欲しいものは欲しいと主張するタイプなんでね。……俺は君が欲しい」
「……子竜さん」
「君には悪い話じゃないと思うよ。俺と結婚すれば……他の夫達と協議の上になるだろうが、お金を得るための仕事も持たせてあげることもできるよ。ゆっくりと考えてくれ」
子竜さんはにやっと悪い笑みを浮かべた。悔しいけど、すっごく、魅力的だ。
「決して損はさせないよ。俺なら今の夫の三人だけじゃ足りないところを上手く埋めることが出来るし、あの面倒な事情を持っている奴らとも上手くやれるだろう。君の得になる事ばかりだ。見返りは君からの愛で良い。それ以外は何も、そう何も望まないから」
「子竜さん? 何か?」
「いや……本当に真面目な子なんだなって思ってね。こっちの世界での……女の子は大抵堪え性がないからな」
子竜さんはまた苦笑すると、わざわざ私のために用意してくれたコーヒーメーカーから、コーヒーを淹れてくれた。受け取ってこくりと飲む。
「うーん、私も元の世界では、こういう作業するアルバイトをしていたんです。だから、多少は慣れているのかもしれないですね」
「奥さんって、元々学生さんだろ? それでアルバイト?」
「うちは家があまりお金がなくて……でもどうしても行きたくて、大学も無理して入ってて。だから、生活費とかはほとんどアルバイトでした」
私がちょっと微笑みながら言うと、子竜さんは優しい目で頷く。
「そっか、苦学生ってやつね……こっちの世界に来てどう思った?」
「……未だ夢を見ているような感覚がします。素敵な旦那さんを三人も持って、こんなに幸せで良いのかなって。ずっとずっとこれが続けば良いのにって」
「……元の世界は嫌いだった?」
子竜さんは静かに聞いて、私は首を振った。嫌いじゃなかった。毎日の忙しさに忙殺されてしまって、勉強やアルバイト、休む暇もなく、ずっと繋がっていく生活。でも……。
「嫌いじゃないけど、戻りたいとは思えないんです。こっちの世界には皆が居るから」
「そっか、じゃあ、俺とも結婚しない?」
え?
私は目を見開いて止まってしまった。
子竜さん、今さらっと私にプロポーズしなかった?
赤色の派手な髪の人が甘い眼差しで私を見る。
「春はまだ未熟だし、後の二人は多忙だ。俺もそこそこ多忙だけど自分が経営者な分、自由が利く。君に損はさせないと思うが」
「……本気で言ってます?」
「もちろん。前に愛し愛される結婚が良いと言ったと思うが、それが君となら叶えられそうだと思った……ただの直感だけどね」
「えっと……私もう三人も夫が居て」
そして、雄吾さんのお友達なんじゃないだろうか? しかも特別に仲が良さそうだったし……。
「それを言うならこちらの雌は大体五人以上は夫を持っているな。それでも比率的には選ばれし者なんだが」
「あの、えっとすぐにはお返事できません。ごめんなさい」
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「うん、わかってる。俺もダメ元なんで、断るのも変な罪悪感持たなくて良いよ。ただ、欲しいものは欲しいと主張するタイプなんでね。……俺は君が欲しい」
「……子竜さん」
「君には悪い話じゃないと思うよ。俺と結婚すれば……他の夫達と協議の上になるだろうが、お金を得るための仕事も持たせてあげることもできるよ。ゆっくりと考えてくれ」
子竜さんはにやっと悪い笑みを浮かべた。悔しいけど、すっごく、魅力的だ。
「決して損はさせないよ。俺なら今の夫の三人だけじゃ足りないところを上手く埋めることが出来るし、あの面倒な事情を持っている奴らとも上手くやれるだろう。君の得になる事ばかりだ。見返りは君からの愛で良い。それ以外は何も、そう何も望まないから」
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