まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え~もふもふ人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

待鳥園子

文字の大きさ
上 下
77 / 151
第一部

アルバイト

しおりを挟む
「あの、三日くらい短期間なんですけど、子竜さんのお店でアルバイトして来ても良いですか?」
 朝ご飯を食べていた三人はそのままの体勢で固まった。

 しん、としてしまった三人に私はやっぱりダメか、としゅんと肩を落とした。

 実はもうすぐ、雄吾さんの誕生日なのだ。どうしてもお祝いがしたくて、自分でネットで色々と検索したところ、ちょっと背伸びした価格のプレゼントに目星をつけた私は早速新しく買ってもらったスマホで子竜さんに連絡して相談したところ、この前のイタリアンレストランのお店の裏方として、お客様の目に触れないところでの作業をすることを条件に雇ってもらえることになったのだ。

「透子さんは……絶対にアルバイトがしたいんですね?」
 理人さんが静かに聞くから、私はこくんと頷きながら言った。
「はい。許してもらえるなら」

 理人さんは考えるようにして雄吾さんと春くんに目を向けた。
「僕は透子さんのしたいことならさせてあげたいと思う。……どう思う?」
「……俺はあまり気乗りはしないが、子竜の店なら安全にも十分注意は払っているだろうし、良いんじゃないか?」
「子竜の店ね……だったら良いんじゃない? あいつも透子に何かあればどうなるかくらいは重々わかっているだろうし」
 渋々、と言った様子だったけど、何とかお許しを貰えて、私はほっとして喜んだ。



 子竜さんのイタリアンのお店は個室っぽくひとつひとつの席をたっぷりとしたカーテンで区切っているプライベートな空間が売りのお洒落なレストランだ。この前は客として来店したけど、今日は雄吾さんに送って来てもらって一従業員として働くことが出来るのだ。もしかして交通費だけで一日のアルバイト代が飛ぶかも、とかは決して考えてはいけない。人間であり、女性の私が働けることに意義があるのだ。うん。

「よ、そんなに緊張せずにリラックスしてな」
 なるべく目立たないようにウエイター風の服装に身を包み、強張った表情の私を見て子竜さんは苦笑した。夫達からはボディガードも頼まれているようで、三日の間はずっとこの店に詰めていてくれるみたいだ。申し訳ないけれど、協力をしてくれるからにはプレゼントを買える金額に届くまでは何とか頑張りたい。

「ありがとうございます。頑張ります。よろしくお願いします」
「うん、まあ、とりあえず三日間だけど、よろしく……それとこの前姉貴が悪戯を仕掛けたみたいだな、申し訳ない」
「あ、はい。えっと知ってるんですか?」
 私は驚いた。この前仕事の相談をした時には何も言っていなかったからだ。

「あの人も五人目と結婚して落ち着いて来ていたんだけど、また悪い癖が再発したのかもしれないな……」
「悪い癖?」
 首を傾げた私に子竜さんは唸った。
「そう、雄吾の件も知っているとは思うが、あの人は落としにくい雄に惹かれる性質みたいでね。お宅のところの元はぐれ人狼は揃いも揃って一筋縄ではいかない連中だから、ちょっと悪戯したかっただけだと思う。それにしても奥さんのスマホをハッキングするなんて、そこまでやるとは思わなかったが……」

「環さんはそういうの詳しいんですか?」
「確か三番目の夫がそういう情報処理関係に強い人だったな、あの人も本当にしょうがない人だからな……」
 すこし考え込むようにすると、子竜さんはハッとして私の頭をぽんぽんと叩いた。

「さ、こっちのナプキンを畳んでこの形に折ってくれ、それが終わったらこちらの食器を磨いて欲しい。俺はこの部屋で一緒に書類仕事をするから、何かわからないことがあったら聞いてくれ」
 そういうと器用にウインクをしてくれた。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

目が覚めたら男女比がおかしくなっていた

いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。 一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!? 「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」 ##### r15は保険です。 2024年12月12日 私生活に余裕が出たため、投稿再開します。 それにあたって一部を再編集します。 設定や話の流れに変更はありません。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

囚われの姫〜異世界でヴァンパイアたちに溺愛されて〜

月嶋ゆのん
恋愛
志木 茉莉愛(しき まりあ)は図書館で司書として働いている二十七歳。 ある日の帰り道、見慣れない建物を見かけた茉莉愛は導かれるように店内へ。 そこは雑貨屋のようで、様々な雑貨が所狭しと並んでいる中、見つけた小さいオルゴールが気になり、音色を聞こうとゼンマイを回し音を鳴らすと、突然強い揺れが起き、驚いた茉莉愛は手にしていたオルゴールを落としてしまう。 すると、辺り一面白い光に包まれ、眩しさで目を瞑った茉莉愛はそのまま意識を失った。 茉莉愛が目覚めると森の中で、酷く困惑する。 そこへ現れたのは三人の青年だった。 行くあてのない茉莉愛は彼らに促されるまま森を抜け彼らの住む屋敷へやって来て詳しい話を聞くと、ここは自分が住んでいた世界とは別世界だという事を知る事になる。 そして、暫く屋敷で世話になる事になった茉莉愛だが、そこでさらなる事実を知る事になる。 ――助けてくれた青年たちは皆、人間ではなくヴァンパイアだったのだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...