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第一部
一番したいこと
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「あの、」
言葉を発した私に皆の目が集まった。真剣な眼差しで私のことを見つめている。
「私は……その、凛太さんと私の一生の問題になりますし、ここですぐに決めろと言われても、難しいです」
「それは……そうだな、すみません。結論を急ぎすぎました」
理人さんはすぐに謝ってくれる。私は凛太さんを真っ直ぐに見た。焦げ茶色の毛の色、俳優というお仕事に相応しいすごくすごく整ったお顔。
だから、すごく不思議になる。この世界では珍しい人間だけど……千里ちゃんが居るように、人間だって一人じゃないはず。何で、どうして、私なんだろう? どうして、私にこんなにこだわってくれるんだろう?
とりあえず、その後すぐに凛太さんは帰ってしまって、私のスマホは買い換えると言って理人さんの手の元に。
私は自分の部屋に戻って、何だか久しぶりに一人で何となくぼーっとしたまま過ごした。今まで、千里ちゃんの手紙のことで思い悩んだり、凛太さんとのデートのことで気が立っていた夫達と過ごすことが多かったから。
コンコン、とノックの音がして、私はドアを開けた。
「春くん」
いつもくしゅくしゅの髪の毛はちょっと濡れているのか、いつもより真っ直ぐだ。春くんの真っ直ぐの髪ってあまり見たことないけど、それはそれでかなり可愛いかも。……想像してみるとすごく可愛いかも。
「今、良い?」
「うん。もちろん。入って」
ソファに並んで腰掛けるとにこーっと笑って春くんは私の頭を抱え込んだ。
「透子、上向いて少し口空けて」
春くんは私の上唇を少し噛んでキスをした。春くんとのキスは甘いキス。嫌なこと全部忘れさせてくれるような蕩けそうなキス。どんなに私が腹を立てていてもすべてをゼロに戻してしまう。魔法のような触れ合い。
うっとりしてくたりとしそうな、私の体を抱きしめると切なそうに言った。
「……あいつの前では絶対そんな顔しないで」
「春くん?」
「凛太だよ、もちろん俺は……あまり賛成ではない、けど。こればっかりは透子の気持ち次第だから」
「……私、春くんが反対するなら、凛太さんと結婚しない」
さっきまでずっと心の中で思っていたことを、はっきりと言うと、春くんは驚いた顔をしてくしゃっと花が咲くように笑うと、私をぎゅっと抱きしめた。
「嬉しい。……でも何で? あいつは俳優だし、顔はめちゃくちゃ良いし、不死者と言われる特殊な能力も持ってて、それに金持ちだよ」
「春くんだって、御曹司だし、顔はめちゃくちゃ可愛いし、特殊な能力を持ってるし、春くんのお金のことについてはそんなに知らないけど、私を甘やかすくらいは持ってるんでしょ?」
「……なんか、俺、凛太からちょっとグレードダウンしてない?」
真面目にしかめっ面をするから、思わず吹き出して笑ってしまった。
「ふふっ、してないよ。大好きだよ」
「……俺も大好きだよ、透子。前言撤回。俺は透子の意思を尊重する」
額と額を重ね合わせて春くんは目を合わせた。
「うん、ありがとう。春くん。私もいっぱい考えて一番良い方法を考えてみる。この世界で生きていく上で一番良い方法」
千里ちゃんは騙されているかもしれない、と言っていた。でも、騙されていたとしても、後悔したくない道を選びたい。好きな人と、夫達と一緒に居たい。それが今の私の一番にしたいこと、なんだ。
言葉を発した私に皆の目が集まった。真剣な眼差しで私のことを見つめている。
「私は……その、凛太さんと私の一生の問題になりますし、ここですぐに決めろと言われても、難しいです」
「それは……そうだな、すみません。結論を急ぎすぎました」
理人さんはすぐに謝ってくれる。私は凛太さんを真っ直ぐに見た。焦げ茶色の毛の色、俳優というお仕事に相応しいすごくすごく整ったお顔。
だから、すごく不思議になる。この世界では珍しい人間だけど……千里ちゃんが居るように、人間だって一人じゃないはず。何で、どうして、私なんだろう? どうして、私にこんなにこだわってくれるんだろう?
とりあえず、その後すぐに凛太さんは帰ってしまって、私のスマホは買い換えると言って理人さんの手の元に。
私は自分の部屋に戻って、何だか久しぶりに一人で何となくぼーっとしたまま過ごした。今まで、千里ちゃんの手紙のことで思い悩んだり、凛太さんとのデートのことで気が立っていた夫達と過ごすことが多かったから。
コンコン、とノックの音がして、私はドアを開けた。
「春くん」
いつもくしゅくしゅの髪の毛はちょっと濡れているのか、いつもより真っ直ぐだ。春くんの真っ直ぐの髪ってあまり見たことないけど、それはそれでかなり可愛いかも。……想像してみるとすごく可愛いかも。
「今、良い?」
「うん。もちろん。入って」
ソファに並んで腰掛けるとにこーっと笑って春くんは私の頭を抱え込んだ。
「透子、上向いて少し口空けて」
春くんは私の上唇を少し噛んでキスをした。春くんとのキスは甘いキス。嫌なこと全部忘れさせてくれるような蕩けそうなキス。どんなに私が腹を立てていてもすべてをゼロに戻してしまう。魔法のような触れ合い。
うっとりしてくたりとしそうな、私の体を抱きしめると切なそうに言った。
「……あいつの前では絶対そんな顔しないで」
「春くん?」
「凛太だよ、もちろん俺は……あまり賛成ではない、けど。こればっかりは透子の気持ち次第だから」
「……私、春くんが反対するなら、凛太さんと結婚しない」
さっきまでずっと心の中で思っていたことを、はっきりと言うと、春くんは驚いた顔をしてくしゃっと花が咲くように笑うと、私をぎゅっと抱きしめた。
「嬉しい。……でも何で? あいつは俳優だし、顔はめちゃくちゃ良いし、不死者と言われる特殊な能力も持ってて、それに金持ちだよ」
「春くんだって、御曹司だし、顔はめちゃくちゃ可愛いし、特殊な能力を持ってるし、春くんのお金のことについてはそんなに知らないけど、私を甘やかすくらいは持ってるんでしょ?」
「……なんか、俺、凛太からちょっとグレードダウンしてない?」
真面目にしかめっ面をするから、思わず吹き出して笑ってしまった。
「ふふっ、してないよ。大好きだよ」
「……俺も大好きだよ、透子。前言撤回。俺は透子の意思を尊重する」
額と額を重ね合わせて春くんは目を合わせた。
「うん、ありがとう。春くん。私もいっぱい考えて一番良い方法を考えてみる。この世界で生きていく上で一番良い方法」
千里ちゃんは騙されているかもしれない、と言っていた。でも、騙されていたとしても、後悔したくない道を選びたい。好きな人と、夫達と一緒に居たい。それが今の私の一番にしたいこと、なんだ。
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