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第一部
敵意
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「……透子に敵意があるってことなら数えきれないくらい居るって考えて良いと思う」
巣の中に入り、リビングに集まって落ち着いたところで、春くんは言い辛そうに切り出した。
「え?」
何となく雄吾さんの隣に寄り添うように座った私は驚いてしまう。敵意? 数えきれないほど?
「……まず、理人の妹の小夜乃、雄吾の妹の小巻、俺の幼馴染の真理亜、子竜の姉で、雄吾の元彼女の環、身内だけで透子に何かしら言いたいようなのが、これだけ居る。あと、幼い頃から理人はいずれ持つであろう権力とあの顔ですごぶる雌に人気がある。雄吾だってそこまでではないけどしつこい縁談を何度も断ったりもしていたし、まあ、俺にもそう言う経験はある。俺達ももう何も持たないはぐれ人狼ではなくなったし、どこかで透子が恨まれていても……仕方ないかな……」
春くんはソファに腰掛けた凛太さんをすこし威嚇しながらも、言い放った。
そっか、私は何だか、今の状況が腑に落ちるような気がした。私の夫三人はタイプは違うけれど、美男揃いだ。だから、嫉妬という名の悪意を受けても多少はしょうがないのかもしれない。
「……今回は最初に電話がかかって来たんですよね?」
凛太さんは静かに問いかけた。私ははい、と頷く。
「えっと環さんから、雄吾さんが危ないって電話があって」
「環が!?」
雄吾さんが驚いて私の肩を揺すぶった。
「雄吾やめなよ、透子が驚いてる」
春くんが私を後ろから引っ張った。雄吾さんはちょっと恥ずかしそうに俯きながら言う。
「環が……あいつ、でも、透子のスマホをどうやって?」
「あの、もしかしたら……あの後お披露目の時の写真を送って来てくれたんです。写真を何枚か、だからもしかしたらそれが……?」
せっかくだから、とメッセージアプリも登録して、何枚か写真ファイルを送ってくれたのだ。もしかしたら、それが原因で?
「きっとそれです。ファイルを開くと感染するウイルスが入っていたのかもしれないですね」
凛太さんは唸るように言った。
「……環、という人に不用意におびき寄せられることはもうないとは思いますが、僕は……出来たら守りを固めるためにも、夫に立候補します」
静かに凛太さんは言う。決意を込めて、その焦げ茶色の目を光らせた。
「……僕も、それには賛成しよう」
その声に視線を移せば、玄関から続く扉にもたれかかるようにスーツ姿の理人さんが居た。お仕事から帰って来たみたいだ。私はそっと立ち上がるといつものように上着を受け取ろうと手を伸ばす。
理人さんはその手を取るとちょっと切なげに目を眇めて言った。
「透子さんを守るためなら、夫が増えることも許容しよう……」
「理人、何言って……!」
春くんが慌てたように立ち上がる。理人さんはそれを片手で制すると、凛太さんに向かって言った。
「ただし、凛太が夫になるのなら条件がある。それが飲めるのなら、という話だ」
「……俺もそれは考えていた。これから春も仕事を始めるとなると、三人では少なすぎる」
「雄吾も! 相手は凛太だよ?!」
多数対一になってしまった春くんは悔しそうだ。
「最終的には透子さんが選ぶことだ。お前の好き嫌いじゃない。凛太なら戦闘能力もその立場、持っている力も申し分なく、族長の肝いりの縁談だ……そして、透子さんのことを何よりも欲し、守ろうと決めている。望むべくもないと思うが、反論があるなら今言え、春」
春くんはぐっと歯を噛みしめたように俯いた。
「透子さん、僕達は貴方が凛太を望むのなら、文句はないです……決めるのは、貴方次第……ですが」
私は理人さんの手をきゅっと握りしめた。
巣の中に入り、リビングに集まって落ち着いたところで、春くんは言い辛そうに切り出した。
「え?」
何となく雄吾さんの隣に寄り添うように座った私は驚いてしまう。敵意? 数えきれないほど?
「……まず、理人の妹の小夜乃、雄吾の妹の小巻、俺の幼馴染の真理亜、子竜の姉で、雄吾の元彼女の環、身内だけで透子に何かしら言いたいようなのが、これだけ居る。あと、幼い頃から理人はいずれ持つであろう権力とあの顔ですごぶる雌に人気がある。雄吾だってそこまでではないけどしつこい縁談を何度も断ったりもしていたし、まあ、俺にもそう言う経験はある。俺達ももう何も持たないはぐれ人狼ではなくなったし、どこかで透子が恨まれていても……仕方ないかな……」
春くんはソファに腰掛けた凛太さんをすこし威嚇しながらも、言い放った。
そっか、私は何だか、今の状況が腑に落ちるような気がした。私の夫三人はタイプは違うけれど、美男揃いだ。だから、嫉妬という名の悪意を受けても多少はしょうがないのかもしれない。
「……今回は最初に電話がかかって来たんですよね?」
凛太さんは静かに問いかけた。私ははい、と頷く。
「えっと環さんから、雄吾さんが危ないって電話があって」
「環が!?」
雄吾さんが驚いて私の肩を揺すぶった。
「雄吾やめなよ、透子が驚いてる」
春くんが私を後ろから引っ張った。雄吾さんはちょっと恥ずかしそうに俯きながら言う。
「環が……あいつ、でも、透子のスマホをどうやって?」
「あの、もしかしたら……あの後お披露目の時の写真を送って来てくれたんです。写真を何枚か、だからもしかしたらそれが……?」
せっかくだから、とメッセージアプリも登録して、何枚か写真ファイルを送ってくれたのだ。もしかしたら、それが原因で?
「きっとそれです。ファイルを開くと感染するウイルスが入っていたのかもしれないですね」
凛太さんは唸るように言った。
「……環、という人に不用意におびき寄せられることはもうないとは思いますが、僕は……出来たら守りを固めるためにも、夫に立候補します」
静かに凛太さんは言う。決意を込めて、その焦げ茶色の目を光らせた。
「……僕も、それには賛成しよう」
その声に視線を移せば、玄関から続く扉にもたれかかるようにスーツ姿の理人さんが居た。お仕事から帰って来たみたいだ。私はそっと立ち上がるといつものように上着を受け取ろうと手を伸ばす。
理人さんはその手を取るとちょっと切なげに目を眇めて言った。
「透子さんを守るためなら、夫が増えることも許容しよう……」
「理人、何言って……!」
春くんが慌てたように立ち上がる。理人さんはそれを片手で制すると、凛太さんに向かって言った。
「ただし、凛太が夫になるのなら条件がある。それが飲めるのなら、という話だ」
「……俺もそれは考えていた。これから春も仕事を始めるとなると、三人では少なすぎる」
「雄吾も! 相手は凛太だよ?!」
多数対一になってしまった春くんは悔しそうだ。
「最終的には透子さんが選ぶことだ。お前の好き嫌いじゃない。凛太なら戦闘能力もその立場、持っている力も申し分なく、族長の肝いりの縁談だ……そして、透子さんのことを何よりも欲し、守ろうと決めている。望むべくもないと思うが、反論があるなら今言え、春」
春くんはぐっと歯を噛みしめたように俯いた。
「透子さん、僕達は貴方が凛太を望むのなら、文句はないです……決めるのは、貴方次第……ですが」
私は理人さんの手をきゅっと握りしめた。
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