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第一部
手紙
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千里ちゃんとのやりとりはスムーズに行った。メッセージアプリでまずは挨拶から交わして、自己紹介、今の状況の説明。
どうも私より二つ上で向こうの世界ではOLをしていた彼女には今四人の夫が居て、何も会社の重役や青年実業家や華々しい職業の方みたいだった。今は黄花の里というところに住んでいるみたいだ。
今は私達の結婚式に出席するのと合わせて深青の里の観光も兼ねて滞在しているみたい。その滞在期間中に出来れば会いたいという千里ちゃんに、春くんと相談して女の子が好みそうなカフェを提案してすぐに会うことになった。
朝からそわそわとしてしまう。昨夜は何話そうかずっと考えていて、深夜に仕事を終えてベッドに潜り込んで来た理人さんにはまだ起きてるんですねって苦笑されてしまった。
「透子ー、準備良い?」
春くんが車の鍵をちゃらっと鳴らしながら言った。
「この組み合わせ、変じゃない?」
マスタード色のすっきりしたワンピースの上にふわっとしたブラウンのカーディガンを羽織っている。最初から春くんに見立ててもらった方が良かったかなと不安になる私の額にキスをする。
「めっちゃくちゃ可愛いけど、なんかデートっぽいよね。まあ、今日は俺ともデートみたいなものだから、良いんじゃない?」
「こんにちは。今日は来てくれてありがとうございます」
「改めて、千里です。私ももう一回お会いできて嬉しい」
私たちが挨拶し合っている横で春くんは千里ちゃんの旦那さんと挨拶しているみたい。黒毛のすらっとして優しそうな人。
「透子さんは大学生だったんですよね。どうやってこの世界に?」
「あの……何だか、不思議なんですけど、帰り道に誰かに呼ばれた気がして、振り返ったら。この世界の誘いの森の中に居たんです。そこを今の夫達に保護してもらいました」
「……そう、あの、夫選びはしなかったの? たくさん候補がいなかった?」
「えっと、したんですけど……そのどうしても保護してくれた今の夫達が忘れられなくて……」
春くんの前で言うと照れくさい。夫達二人は時事問題や、深青の里のおすすめスポットなどの情報交換に余念がないみたいだ。
「ふふ、よっぽど好きなのね。見てて微笑ましい」
千里ちゃんはちょっと寂しげに笑った。私は、その理由を聞きたいと思ったりもしたけど、旦那さんの前ではちょっと憚られる話題なのかもしれなかった。
「……千里ちゃんは家では何を?」
「そうね、本を読んだり、楽器を習ったり。私はバイオリンを習うのが小さな頃からの夢だったの。この世界に来て夫達がすぐに叶えてくれたわ」
儚げな雰囲気の千里ちゃんにはバイオリンの音色がよく似合いそうだ。頭の中で想像してみたらしっくりと来た。
「バイオリン、素敵ですね。私も聞いてみたいな」
「透子ちゃんもぜひ、黄花の里にも来て欲しいわ。美味しいものもたくさんあるし……それに、夫達は優しいけれど、たまには同性を話したくなることもあるもの」
「ぜひ! 旅行にも行ってみたいです」
ひとしきり盛り上がって、そろそろ、というタイミングで千里ちゃんがそっと、私に手紙を差し出してきた。夫達も別れの挨拶をしてこちらには注目していない。私は驚いたけれど、黙って受け取ると自分のバッグへと手紙を忍ばせた。
夜、その手紙を開くと……。
『いきなりこんな手紙を書いてごめんなさい。透子さんはこの世界からもう帰れない、と言われてないですか? 実は帰る方法はあります。もし、興味があるなら黄花の里に来てください。そこで詳しくお話しします。私達は……騙されているのかもしれません。』
衝撃、だった。
どうも私より二つ上で向こうの世界ではOLをしていた彼女には今四人の夫が居て、何も会社の重役や青年実業家や華々しい職業の方みたいだった。今は黄花の里というところに住んでいるみたいだ。
今は私達の結婚式に出席するのと合わせて深青の里の観光も兼ねて滞在しているみたい。その滞在期間中に出来れば会いたいという千里ちゃんに、春くんと相談して女の子が好みそうなカフェを提案してすぐに会うことになった。
朝からそわそわとしてしまう。昨夜は何話そうかずっと考えていて、深夜に仕事を終えてベッドに潜り込んで来た理人さんにはまだ起きてるんですねって苦笑されてしまった。
「透子ー、準備良い?」
春くんが車の鍵をちゃらっと鳴らしながら言った。
「この組み合わせ、変じゃない?」
マスタード色のすっきりしたワンピースの上にふわっとしたブラウンのカーディガンを羽織っている。最初から春くんに見立ててもらった方が良かったかなと不安になる私の額にキスをする。
「めっちゃくちゃ可愛いけど、なんかデートっぽいよね。まあ、今日は俺ともデートみたいなものだから、良いんじゃない?」
「こんにちは。今日は来てくれてありがとうございます」
「改めて、千里です。私ももう一回お会いできて嬉しい」
私たちが挨拶し合っている横で春くんは千里ちゃんの旦那さんと挨拶しているみたい。黒毛のすらっとして優しそうな人。
「透子さんは大学生だったんですよね。どうやってこの世界に?」
「あの……何だか、不思議なんですけど、帰り道に誰かに呼ばれた気がして、振り返ったら。この世界の誘いの森の中に居たんです。そこを今の夫達に保護してもらいました」
「……そう、あの、夫選びはしなかったの? たくさん候補がいなかった?」
「えっと、したんですけど……そのどうしても保護してくれた今の夫達が忘れられなくて……」
春くんの前で言うと照れくさい。夫達二人は時事問題や、深青の里のおすすめスポットなどの情報交換に余念がないみたいだ。
「ふふ、よっぽど好きなのね。見てて微笑ましい」
千里ちゃんはちょっと寂しげに笑った。私は、その理由を聞きたいと思ったりもしたけど、旦那さんの前ではちょっと憚られる話題なのかもしれなかった。
「……千里ちゃんは家では何を?」
「そうね、本を読んだり、楽器を習ったり。私はバイオリンを習うのが小さな頃からの夢だったの。この世界に来て夫達がすぐに叶えてくれたわ」
儚げな雰囲気の千里ちゃんにはバイオリンの音色がよく似合いそうだ。頭の中で想像してみたらしっくりと来た。
「バイオリン、素敵ですね。私も聞いてみたいな」
「透子ちゃんもぜひ、黄花の里にも来て欲しいわ。美味しいものもたくさんあるし……それに、夫達は優しいけれど、たまには同性を話したくなることもあるもの」
「ぜひ! 旅行にも行ってみたいです」
ひとしきり盛り上がって、そろそろ、というタイミングで千里ちゃんがそっと、私に手紙を差し出してきた。夫達も別れの挨拶をしてこちらには注目していない。私は驚いたけれど、黙って受け取ると自分のバッグへと手紙を忍ばせた。
夜、その手紙を開くと……。
『いきなりこんな手紙を書いてごめんなさい。透子さんはこの世界からもう帰れない、と言われてないですか? 実は帰る方法はあります。もし、興味があるなら黄花の里に来てください。そこで詳しくお話しします。私達は……騙されているのかもしれません。』
衝撃、だった。
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