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第一部
朝食
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「おはよ~、透子」
「春くん、おはよ」
私は階段を降りて春くんが用意してくれた柄が可愛いエプロンをつけた。春くんはセンスも良くてオシャレなんだけど、私の身に付けるものにもわりとこだわりを見せてくる。私はそんなにこだわりを持っている方じゃないから言われるがままにしているんだけど、周りから見たらすごいオシャレっぽい人になっているのちょっとこそばゆい。
「今日は何作る?」
「んー、簡単なのにしよう。理人も雄吾も今日は休みにするって言っていたから、二人とも起きてくるの遅くなりそうだし……雄吾は大丈夫だった?」
春くんはバゲットを切りながら何気なく尋ねて来た。
「……えっと、うん。あの、環さんのこと、皆知ってるんだよね……?」
「あの性悪ね、知ってる。有名だから。子竜はめちゃくちゃ良い奴だけど、姉はね、まあ子竜もそれでどっか拗らせてるからあの歳でも独身なんだろうけど」
「しょうわる……」
私は取り出そうとした朝食用のプレートを落としそうになって慌てた。この花柄のプレート、可愛くて気に入ってるんだよね……。
「ごめん、透子に汚い言葉聞かせたくないんだけど、それ以外にうまく形容する言葉が思い浮かばなくて……」
大きな茶色の目を細めて春くんはすまなそうに言った。私は微笑んで首を振る。
「女嫌いの人を落として楽しんでるって言ってたけど……」
「そうそう、女嫌いに限らず、落とし難いとか、そういう雄を弄んで捨てる最低の雌。確か理人にもコナかけてたんじゃないかな」
「理人さんにも……」
「まあ、理人は雄吾の事知ってたし、全然あいつのタイプじゃないからね、見向きもしなかったよ」
理人さんの好みのタイプ……それはちょっと気になったけど、春くんの話の腰を折るのはやめにした。
「そうなんだ……何でそんな事を?」
「要するに自分の魅力を確認したいんでしょ。まあ、確かに見た目美人なのは認めるけど、俺はゼーったい嫌だけどね」
ふてくされた顔でフライパンに卵を落とし始めた。可愛い顔に眉が寄っている。そういう表情をしても可愛いことには変わりないけど。
「ふふ、春くん可愛い」
「そこ、可愛いっていうとこ? ……んー、でも透子限定での可愛いは嬉しいかな」
「どうして?」
「透子には俺の魅力を余すところなく、知って欲しいから! 可愛いのもある意味、魅力でしょ? 理人にも雄吾にもない魅力を俺は持ってるからね」
「春くん好き」
春くんは目玉焼きを作っていたフライパンを落としそうになって慌てた。
「え!? 嬉しいけど、どうしたの? 透子」
「私、春くん好きだなって思ったの。そういう前向きなとこも、自信があるとこも全部好き」
「ありがとう。俺も透子、めちゃくちゃ好きだよ」
えへへ、と言って二人で笑い合う。こうやって好きって言ったら好きが返ってくるの、すごく幸せだなあって思った。
「あ、そういえば透子」
「何? 春くん」
「あの、人間の女の子、連絡あった?」
千里ちゃん……! 疲れていたし、雄吾さんのこともあったりで、大事なことなのに、頭からすっかり抜け落ちていた。
「あ、えっと、スマホ! 見てみないと」
慌てて私は階段の方に行こうとするけど、春くんがそっと腕を掴んだ。
「焦ることないって、きっと向こうも疲れていると思うし、連絡来るのは今日以降だと思うよ……連絡が来て会うことになると思うんだけど、一応俺か雄吾を同席する形になるけど良いかな? 向こうも多分夫を連れてくると思うし」
「うん! もちろん! 出来ればお友達になれたら嬉しい!」
「そうだよね、俺も早く会えるようにしたいから、また日時や場所とか決まったら教えてくれる?」
「うん、わかった」
ふふって二人で笑い合うと嬉しい。
千里ちゃんともこうやって仲良くなれたら、良いなぁ。
「春くん、おはよ」
私は階段を降りて春くんが用意してくれた柄が可愛いエプロンをつけた。春くんはセンスも良くてオシャレなんだけど、私の身に付けるものにもわりとこだわりを見せてくる。私はそんなにこだわりを持っている方じゃないから言われるがままにしているんだけど、周りから見たらすごいオシャレっぽい人になっているのちょっとこそばゆい。
「今日は何作る?」
「んー、簡単なのにしよう。理人も雄吾も今日は休みにするって言っていたから、二人とも起きてくるの遅くなりそうだし……雄吾は大丈夫だった?」
春くんはバゲットを切りながら何気なく尋ねて来た。
「……えっと、うん。あの、環さんのこと、皆知ってるんだよね……?」
「あの性悪ね、知ってる。有名だから。子竜はめちゃくちゃ良い奴だけど、姉はね、まあ子竜もそれでどっか拗らせてるからあの歳でも独身なんだろうけど」
「しょうわる……」
私は取り出そうとした朝食用のプレートを落としそうになって慌てた。この花柄のプレート、可愛くて気に入ってるんだよね……。
「ごめん、透子に汚い言葉聞かせたくないんだけど、それ以外にうまく形容する言葉が思い浮かばなくて……」
大きな茶色の目を細めて春くんはすまなそうに言った。私は微笑んで首を振る。
「女嫌いの人を落として楽しんでるって言ってたけど……」
「そうそう、女嫌いに限らず、落とし難いとか、そういう雄を弄んで捨てる最低の雌。確か理人にもコナかけてたんじゃないかな」
「理人さんにも……」
「まあ、理人は雄吾の事知ってたし、全然あいつのタイプじゃないからね、見向きもしなかったよ」
理人さんの好みのタイプ……それはちょっと気になったけど、春くんの話の腰を折るのはやめにした。
「そうなんだ……何でそんな事を?」
「要するに自分の魅力を確認したいんでしょ。まあ、確かに見た目美人なのは認めるけど、俺はゼーったい嫌だけどね」
ふてくされた顔でフライパンに卵を落とし始めた。可愛い顔に眉が寄っている。そういう表情をしても可愛いことには変わりないけど。
「ふふ、春くん可愛い」
「そこ、可愛いっていうとこ? ……んー、でも透子限定での可愛いは嬉しいかな」
「どうして?」
「透子には俺の魅力を余すところなく、知って欲しいから! 可愛いのもある意味、魅力でしょ? 理人にも雄吾にもない魅力を俺は持ってるからね」
「春くん好き」
春くんは目玉焼きを作っていたフライパンを落としそうになって慌てた。
「え!? 嬉しいけど、どうしたの? 透子」
「私、春くん好きだなって思ったの。そういう前向きなとこも、自信があるとこも全部好き」
「ありがとう。俺も透子、めちゃくちゃ好きだよ」
えへへ、と言って二人で笑い合う。こうやって好きって言ったら好きが返ってくるの、すごく幸せだなあって思った。
「あ、そういえば透子」
「何? 春くん」
「あの、人間の女の子、連絡あった?」
千里ちゃん……! 疲れていたし、雄吾さんのこともあったりで、大事なことなのに、頭からすっかり抜け落ちていた。
「あ、えっと、スマホ! 見てみないと」
慌てて私は階段の方に行こうとするけど、春くんがそっと腕を掴んだ。
「焦ることないって、きっと向こうも疲れていると思うし、連絡来るのは今日以降だと思うよ……連絡が来て会うことになると思うんだけど、一応俺か雄吾を同席する形になるけど良いかな? 向こうも多分夫を連れてくると思うし」
「うん! もちろん! 出来ればお友達になれたら嬉しい!」
「そうだよね、俺も早く会えるようにしたいから、また日時や場所とか決まったら教えてくれる?」
「うん、わかった」
ふふって二人で笑い合うと嬉しい。
千里ちゃんともこうやって仲良くなれたら、良いなぁ。
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