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第一部
その夜
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「それじゃあ、おやすみなさい」
私は欠伸をしながらリビングをでた。今日はくたくたに疲れてしまった。
流石にドレスは脱いで会場から直接クリーニングに回してもらって今は普段着のすとんとしたワンピースを着てるけど、どこか重たいドレスをずっと着ているような疲労感がある。
私の夫達三人は今日は何故か、お披露目終盤になってから全員言葉少なになってしまっていて、服も礼服そのままでネクタイを外して首元のボタンだけ外しているだけだ。
帰って来てから、とりあえずリビングに集まったものの、ムードメーカーの春くんもちょっと暗い顔だ。今日は朝からバタバタしたしお酒もたくさん飲まされただろうから、だいぶ疲れてしまったのかもしれない。
化粧も落としてパジャマに着替えてさあ、寝よう、としたところでコンコンとノックの音がした。
扉に慌てて向かうと雄吾さんだ。さっきまでの礼服そのままだし、何か辛そうな顔をして首を傾げた私を見つめた。
「……透子、すこし話がある」
「あ。はい。えっと、どうぞ」
慌ててソファを勧めて私はその隣に腰掛けた。
「……今日会った子竜の姉のことなんだが……」
「環さんのことですね? すごく綺麗な人でしたね。あの子竜さんのお姉さんっぽくて素敵でした」
にこにこと笑った私の顔を見て、雄吾さんはすごく悲しそうな顔をした。どうしたんだろう。何か悪いこと言ったかな?
「……あの人と昔、付き合っていたことがあってな」
「え?」
私は動きが止まってしまう。いわゆる元カノというやつだろうか? でも、この雄吾さんは女嫌いって、そう言ってた。勝手に原因は妹の小巻さんだと思っていたけど……もしかして……あの環さんが原因なのかな?
「いや……確かにもう何年も前のことだ。時効だと思うし、後で知った時にお前に嫌な思いはさせたくなかった」
「……確かに、その、びっくりしましたけど、雄吾さんはすごく素敵な人だし、元々付き合っていた人が居ても、その驚きませんよ。それとも他に何かありますか?」
こくんと息を飲んで緊張した私を見て雄吾さんはちゅっと口にキスをしてくれた。
「俺が群れからはぐれたのもあの人と付き合ったことが原因だ。俺との付き合いをあの人の親に許してもらえずに一緒に逃げようと言ったら拒否された。それから女性に対する不信感が抜けなくてな。どうせ結婚もすることもないのなら、と幼馴染みの理人と一緒に抜けたんだ。春は後から合流したんだが」
私は出来るだけ、そっと近づいて首に手を回した。雄吾さんは汗をかいているのか彼の匂いをつよく感じた。
「なんで、私に隠そうとしたんですか?」
「……この国の雌はそういう雄を嫌がるんだ……例えば雌に嫌われて離婚したら再婚は叶わないと思った方が良い」
「私はこの世界育ちじゃないですし、そんなことで嫌いになったりしません」
「俺は本当に幸運だったと思う。透子と会えてこうして、一緒に居られる。……これ以上は望まないから、どうか、壊れないで欲しいんだ」
「雄吾さん」
私はソファの上に膝を立ててぎゅっと彼を抱きしめた。
「俺は透子の傍に居たいんだ。環のことは若気の至りだったと今では思う。雌に初めて言い寄られていい気になっていた。あの時の俺を殴ってやりたいよ」
「雄吾さん。私はなんとも思っていませんよ。だからそんなに自分を責めないでください」
「だが……」
「昔の雄吾さんも、きっと格好良くて私は会ったらきっと大好きになっていたと思います。だから殴らないであげてくださいね」
そうやって笑って彼の頬にキスをした。
私は欠伸をしながらリビングをでた。今日はくたくたに疲れてしまった。
流石にドレスは脱いで会場から直接クリーニングに回してもらって今は普段着のすとんとしたワンピースを着てるけど、どこか重たいドレスをずっと着ているような疲労感がある。
私の夫達三人は今日は何故か、お披露目終盤になってから全員言葉少なになってしまっていて、服も礼服そのままでネクタイを外して首元のボタンだけ外しているだけだ。
帰って来てから、とりあえずリビングに集まったものの、ムードメーカーの春くんもちょっと暗い顔だ。今日は朝からバタバタしたしお酒もたくさん飲まされただろうから、だいぶ疲れてしまったのかもしれない。
化粧も落としてパジャマに着替えてさあ、寝よう、としたところでコンコンとノックの音がした。
扉に慌てて向かうと雄吾さんだ。さっきまでの礼服そのままだし、何か辛そうな顔をして首を傾げた私を見つめた。
「……透子、すこし話がある」
「あ。はい。えっと、どうぞ」
慌ててソファを勧めて私はその隣に腰掛けた。
「……今日会った子竜の姉のことなんだが……」
「環さんのことですね? すごく綺麗な人でしたね。あの子竜さんのお姉さんっぽくて素敵でした」
にこにこと笑った私の顔を見て、雄吾さんはすごく悲しそうな顔をした。どうしたんだろう。何か悪いこと言ったかな?
「……あの人と昔、付き合っていたことがあってな」
「え?」
私は動きが止まってしまう。いわゆる元カノというやつだろうか? でも、この雄吾さんは女嫌いって、そう言ってた。勝手に原因は妹の小巻さんだと思っていたけど……もしかして……あの環さんが原因なのかな?
「いや……確かにもう何年も前のことだ。時効だと思うし、後で知った時にお前に嫌な思いはさせたくなかった」
「……確かに、その、びっくりしましたけど、雄吾さんはすごく素敵な人だし、元々付き合っていた人が居ても、その驚きませんよ。それとも他に何かありますか?」
こくんと息を飲んで緊張した私を見て雄吾さんはちゅっと口にキスをしてくれた。
「俺が群れからはぐれたのもあの人と付き合ったことが原因だ。俺との付き合いをあの人の親に許してもらえずに一緒に逃げようと言ったら拒否された。それから女性に対する不信感が抜けなくてな。どうせ結婚もすることもないのなら、と幼馴染みの理人と一緒に抜けたんだ。春は後から合流したんだが」
私は出来るだけ、そっと近づいて首に手を回した。雄吾さんは汗をかいているのか彼の匂いをつよく感じた。
「なんで、私に隠そうとしたんですか?」
「……この国の雌はそういう雄を嫌がるんだ……例えば雌に嫌われて離婚したら再婚は叶わないと思った方が良い」
「私はこの世界育ちじゃないですし、そんなことで嫌いになったりしません」
「俺は本当に幸運だったと思う。透子と会えてこうして、一緒に居られる。……これ以上は望まないから、どうか、壊れないで欲しいんだ」
「雄吾さん」
私はソファの上に膝を立ててぎゅっと彼を抱きしめた。
「俺は透子の傍に居たいんだ。環のことは若気の至りだったと今では思う。雌に初めて言い寄られていい気になっていた。あの時の俺を殴ってやりたいよ」
「雄吾さん。私はなんとも思っていませんよ。だからそんなに自分を責めないでください」
「だが……」
「昔の雄吾さんも、きっと格好良くて私は会ったらきっと大好きになっていたと思います。だから殴らないであげてくださいね」
そうやって笑って彼の頬にキスをした。
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