まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え~もふもふ人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

待鳥園子

文字の大きさ
上 下
43 / 151
第一部

043 新しい手段

しおりを挟む
「透子さん。どうぞ。三人の連絡先も、もう入っていますので」

 夕食が終わって皆で食後のお茶を飲んでいる時に、隣に居る理人さんがディスプレイが大きめのスマホを渡してくれた。

 いかにもピカピカの新品で、ちゃんと私の好みっぽい可愛いカバーもかけられている。

「ありがとうございます」

 私が受け取りながら微笑むと、理人さんは満足そうにして目を細めた。

「あ。透子。メッセージアプリの使い方、教えておくね」

 春くんは椅子を近づけて自分のスマホを取り出すと丁寧にレクチャーしてくれた。

 彼の詳しい説明を聞きつつも、私は感心することしきりだった。どうやら元々住んでいた日本のスマホと、ほとんど使い方は変わらないみたい。

 平行世界って、本当に不思議。違うのは住んでいるのが人狼なことと特殊な能力、それと族長という不思議な地位。後は、極端な男女比率もそうだけど。

 スマホの説明を聞きつつ私はなんとなく、自分のデニムのポケットに入っている名刺の存在を強く感じた。

 凛太さんはこの三人が何かを、私に隠しているって言っていた。

 どんどん前にも増して好きになって来ているから、彼らを信じたい気持ちと、突然のあの信じがたい言葉に、心が揺れ動いてて苦しいくらい。

 よく考えたら三人との繋がりはこの世界に来た時に優しく保護してもらえたってことだけ。理人さんの事情は、この前に少しだけ教えてもらえたけど、他の二人についてはあまり……私は、良く知らない。

「……透子、透子? 話、聞いてる?」

 間近に春くんの大きな茶色い瞳があって、私は驚き思わず身を引いた。

 さっきまで二人で何かを話していたはずの理人さんと雄吾さんも、怪訝そうな顔をしてこちらの様子を伺っている。

「あ。ごめん。ちょっとだけ。ぼーっとしてた……えっと、私。久しぶりに外出して、疲れちゃったみたい。今日は早めに先に、寝るね」

「え? 透子?」

 戸惑ったような春くんの声を背に受けて、私は自室に向かうべく階段に向かった。


◇◆◇


 部屋に戻った私は、とりあえず凛太さんに貰った名刺を出してじっと見た。

 俳優としてのプロモーション用なのか、事務所の電話番号やホームページのアドレス。裏を向ければ個人の電話番号だろうか、手書きの文字で十一桁の番号が並んでいる。

 こんなに悩むくらいなら、いっそ掛けてしまって聞いた方が良いんじゃないだろうか? その秘密が何だとしても、三人のことは好きだという気持ちに変わりはないと思う。

 けど、それは何なのかは、どうしても気になってしまう。

 私が名刺を手にしてじっと考え込んでいると、コンコンとドアからノックの音がした。慌ててベッドのサイドテーブルに置いてあったスマホの下に、凛太さんの名刺を隠した。

 ドアに駆け寄ると、雄吾さんが心配そうな表情で私を見下ろしていた。背の高い雄吾さんは間近に立ったままだと、かなり目線を上げなければ目を合わせることが出来ない。

「……どうした。何か、あったのか?」

「えっと、その……何でもないです。久しぶりに外に出たから、なんか疲れちゃったみたいで」

 やましい気持ちを抱えていた私はとりあえず、雄吾さんを部屋に招き入れてソファに隣り合って座る。

 雄吾さんは座ってから私の顔を見た途端に、顔をわかりやすく顰めた。

「……待て、この匂い。凛太か?」

「え?」

 私は彼の言葉に、驚いた。そうか、さっきはデニムのポケットに仕舞ってあったけど、今は名刺が空気に触れている。

 頭ではわかっていたことだけど、人狼は本当に鼻が利くんだ。

「何処で会った? ……春の奴。ちゃんと透子のことを、見てなかったのか」

 雄吾さんは淡々と言うと、私がさっき隠した場所から名刺を抜き取った。サッとそれを裏返すと、不機嫌そうに眉間の皺を深くした。

「えっと、その……」

「これのせいで、透子は元気がなかったのか?」

「……はい」

「あいつに、何を言われた?」

「……皆が私に隠し事をしているって、そう言っていました」

「……それで、元気がなかったんだな」

「はい」

 雄吾さんは俯いたままの私を、ぎゅっと力強く抱き寄せた。

「透子。確かに俺たちはお前に伝えてないことは、ある。だが、お前の不利益になるようなことは、絶対にしない。絶対にだ」

「……雄吾さん」

 雄吾さんは体を屈めて私の顔に唇を寄せると、ちゅっと触れるだけのキスをした。

 何度かした後で私の手を引いて、ベッドに導いた。ベッドに座ると立っていた私を横座りにさせて、もう一度触れるだけのキスを始めた。

「よりにもよって、あの凛太か。なるほどな。あいつなら、確かに理人の匂いだからって臆さないだろうな」

「あの、確か凛太さんも……」

「そう。あいつも俺と同じ、不死者と呼ばれるもの。だな」

 まるで自嘲するかのような、彼の表情に何故か胸が痛くなる。雄吾さんは……自分の能力を、あまり好きではないのかな?

「……ごめんなさい。私が春くんに……ちゃんと言えば良かったんですけど」

「良い。こういう事態を招いた春には、後でお仕置きだな」

 首を傾げてふっと笑った雄吾さんの顔に、私は目を見開いた。

「ダメです。黙っていた私のせいで、春くんがお仕置きを受けるなんて」

 結果的に目を離したようになったのは、春くんのせいじゃなくて、私が自分から彼から離れてしまったからだと今でも思う。

「じゃあ、透子が罰を受けるか?」

 雄吾さんの、どこか試すような顔に私はゆっくりと頷いた。

「えっと……それって、痛いことですか?」

 色んなことを想像してしまって語尾が細くなった言葉に、面白そうに雄吾さんは首を傾げた。

「そうだな……何にしようか」
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

目が覚めたら男女比がおかしくなっていた

いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。 一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!? 「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」 ##### r15は保険です。 2024年12月12日 私生活に余裕が出たため、投稿再開します。 それにあたって一部を再編集します。 設定や話の流れに変更はありません。

囚われの姫〜異世界でヴァンパイアたちに溺愛されて〜

月嶋ゆのん
恋愛
志木 茉莉愛(しき まりあ)は図書館で司書として働いている二十七歳。 ある日の帰り道、見慣れない建物を見かけた茉莉愛は導かれるように店内へ。 そこは雑貨屋のようで、様々な雑貨が所狭しと並んでいる中、見つけた小さいオルゴールが気になり、音色を聞こうとゼンマイを回し音を鳴らすと、突然強い揺れが起き、驚いた茉莉愛は手にしていたオルゴールを落としてしまう。 すると、辺り一面白い光に包まれ、眩しさで目を瞑った茉莉愛はそのまま意識を失った。 茉莉愛が目覚めると森の中で、酷く困惑する。 そこへ現れたのは三人の青年だった。 行くあてのない茉莉愛は彼らに促されるまま森を抜け彼らの住む屋敷へやって来て詳しい話を聞くと、ここは自分が住んでいた世界とは別世界だという事を知る事になる。 そして、暫く屋敷で世話になる事になった茉莉愛だが、そこでさらなる事実を知る事になる。 ――助けてくれた青年たちは皆、人間ではなくヴァンパイアだったのだ。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...