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第一部
030 来襲
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結局、まったりして私の部屋で映画観ることにしたんだけど、流石に二日寝てないと眠たいのか、春くんはしきりに欠伸を繰り返していた。
気にせず、寝てくれたら良いのにな。皆の口ぶりを聞く限りは、この家(巣?)はセキュリティが、かなり良いものになっているらしい。けど、私の匂いつけが終わり次第、ボディガードのような人は雇う予定ではあるみたいだ。
そろそろ一本目の映画が終わりそうなタイミングで、大きなチャイムの音が聞こえた。
「……誰か来たね」
春くんはいかにも警戒しているのか、耳がピンと立って真面目な顔だ。
「誰か来る予定……あったりした?」
「まさか。透子がまだそんな状態なのに、誰も呼べないよ。危険過ぎる」
「……誰かな」
なんて二人で言っていると、何度もチャイムの大きな音が鳴り響く。待つことに辛抱出来ない、短気な人みたいだ。
春くんは鋭く舌打ちすると、私の手を取って言った。
「……透子。今は絶対に一人にはするなって言われてるし、一応付いて来て。危ないと思ったら、すぐこの部屋に戻るんだよ」
「うん……わかった」
サッと立ち上がって、二人で部屋を出る。その間も何度も鳴り響くチャイム。失礼過ぎて、傍若無人な人だなと思った。
「……はい」
春くんがガチャっと大きな扉を開けると、大きな目が印象的な美少女が呼び鈴に人差し指を指しながら佇んでいた。
さらっと風になびく、長い黒髪に大きな耳。スタイルがとても良く、すっきりとした黒いロングワンピースが良く似合っていた。
「遅くない?」
「……あんた、誰?」
春くんは私を後ろに庇いながら、不機嫌な声で応対した。そうなるのも、無理もないと思う。彼女のしていることは、どう考えても常識的にアウトだ。
「へえ。可愛い顔してるじゃん。あんたが春? 私の条件を守れば、夫の一人に加えてあげても良いよ」
「は? いや、俺既婚者なんで」
春くんは、不機嫌な様子を隠すことなく言った。私も特大の疑問符が、顔に出ていたと思う。初対面で、すごい言い草だ。逆に感心してしまう。
「……ふーん? 兄さんは? 私忙しいんだけど、さっさと取り次いでくれる?」
「兄さん? 何言ってんの?」
「群れに戻ったって聞いたから、妹がわざわざ遠方から会いに来てあげたんじゃん。さっさと呼んでくれる?」
「……あー、もしかして雄吾の妹? 今、理人も雄吾も出掛けてるけど」
「やっぱり、理人さんもここに居るんだ。族長候補だった人じゃん、会いたい」
「出掛けてるんだけど、聞こえなかった?」
「帰るの待たせてもらうって意味なんだけど、わかんなかった?」
二人の間に、火花が散った。春くんは目を細めてかなりやる気だし、美少女も勝気な表情で負けてない。
「あのっ! 良かったら中にどうぞ、雄吾さんの妹さんですか?」
やっと春くんの後ろにいる私に気がついた、と言わんばかりに下から舐めるようにして私を見た。
「おっどろいた~。本当に耳がないのね? 人間と結婚したって本当だったんだ。ふーん?」
にやにやと嫌な笑いで、私を見る。春くんは、彼女の視線を遮るように前に出た。
「……怪我したいなら、雄吾の妹でも容赦しない」
「はいはい。大事な人間様だものね? じゃあ、案内して貰える?」
使用人でも扱うように、顎で指図した。私は自分の眉が寄るのを感じた。この態度は、流石にないんじゃない?
「……透子、悪いけどお茶入れて来て。こんな奴と二人に出来ない。すぐそこの応接室ね」
テキパキと指示する春くんに私は頷いて、パタパタとキッチンへと向かった。
「あ、お茶美味しい~」
私が前に置いたお茶を一口含んで、彼女はにやっと笑った。
「……なんで一人なんだよ。夫は連れてきてないのか?」
「えー、私一人でも大丈夫だし。襲われても蹴散らすし。束縛とか、過保護なの嫌いなんだよね」
「……特殊能力持ちかよ」
隣に座っている春くんは、嫌な顔をした。
「兄さんの妹なんだから、血筋的に無理もないでしょ。えっと、春と透子さんだっけ? 私は雄吾の妹、小巻。小さく巻くって書くんだよね。よろしく」
首を傾げて笑うその顔は、確かに少しだけ雄吾さんに似ている気がした。
気にせず、寝てくれたら良いのにな。皆の口ぶりを聞く限りは、この家(巣?)はセキュリティが、かなり良いものになっているらしい。けど、私の匂いつけが終わり次第、ボディガードのような人は雇う予定ではあるみたいだ。
そろそろ一本目の映画が終わりそうなタイミングで、大きなチャイムの音が聞こえた。
「……誰か来たね」
春くんはいかにも警戒しているのか、耳がピンと立って真面目な顔だ。
「誰か来る予定……あったりした?」
「まさか。透子がまだそんな状態なのに、誰も呼べないよ。危険過ぎる」
「……誰かな」
なんて二人で言っていると、何度もチャイムの大きな音が鳴り響く。待つことに辛抱出来ない、短気な人みたいだ。
春くんは鋭く舌打ちすると、私の手を取って言った。
「……透子。今は絶対に一人にはするなって言われてるし、一応付いて来て。危ないと思ったら、すぐこの部屋に戻るんだよ」
「うん……わかった」
サッと立ち上がって、二人で部屋を出る。その間も何度も鳴り響くチャイム。失礼過ぎて、傍若無人な人だなと思った。
「……はい」
春くんがガチャっと大きな扉を開けると、大きな目が印象的な美少女が呼び鈴に人差し指を指しながら佇んでいた。
さらっと風になびく、長い黒髪に大きな耳。スタイルがとても良く、すっきりとした黒いロングワンピースが良く似合っていた。
「遅くない?」
「……あんた、誰?」
春くんは私を後ろに庇いながら、不機嫌な声で応対した。そうなるのも、無理もないと思う。彼女のしていることは、どう考えても常識的にアウトだ。
「へえ。可愛い顔してるじゃん。あんたが春? 私の条件を守れば、夫の一人に加えてあげても良いよ」
「は? いや、俺既婚者なんで」
春くんは、不機嫌な様子を隠すことなく言った。私も特大の疑問符が、顔に出ていたと思う。初対面で、すごい言い草だ。逆に感心してしまう。
「……ふーん? 兄さんは? 私忙しいんだけど、さっさと取り次いでくれる?」
「兄さん? 何言ってんの?」
「群れに戻ったって聞いたから、妹がわざわざ遠方から会いに来てあげたんじゃん。さっさと呼んでくれる?」
「……あー、もしかして雄吾の妹? 今、理人も雄吾も出掛けてるけど」
「やっぱり、理人さんもここに居るんだ。族長候補だった人じゃん、会いたい」
「出掛けてるんだけど、聞こえなかった?」
「帰るの待たせてもらうって意味なんだけど、わかんなかった?」
二人の間に、火花が散った。春くんは目を細めてかなりやる気だし、美少女も勝気な表情で負けてない。
「あのっ! 良かったら中にどうぞ、雄吾さんの妹さんですか?」
やっと春くんの後ろにいる私に気がついた、と言わんばかりに下から舐めるようにして私を見た。
「おっどろいた~。本当に耳がないのね? 人間と結婚したって本当だったんだ。ふーん?」
にやにやと嫌な笑いで、私を見る。春くんは、彼女の視線を遮るように前に出た。
「……怪我したいなら、雄吾の妹でも容赦しない」
「はいはい。大事な人間様だものね? じゃあ、案内して貰える?」
使用人でも扱うように、顎で指図した。私は自分の眉が寄るのを感じた。この態度は、流石にないんじゃない?
「……透子、悪いけどお茶入れて来て。こんな奴と二人に出来ない。すぐそこの応接室ね」
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「……なんで一人なんだよ。夫は連れてきてないのか?」
「えー、私一人でも大丈夫だし。襲われても蹴散らすし。束縛とか、過保護なの嫌いなんだよね」
「……特殊能力持ちかよ」
隣に座っている春くんは、嫌な顔をした。
「兄さんの妹なんだから、血筋的に無理もないでしょ。えっと、春と透子さんだっけ? 私は雄吾の妹、小巻。小さく巻くって書くんだよね。よろしく」
首を傾げて笑うその顔は、確かに少しだけ雄吾さんに似ている気がした。
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