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第一部
024 練習そのに
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理人さんの色気のある声音に、少しだけ怖気付きつつ答えた。
「だって、頬が痛いかもしれませんよ」
「別に平気です。痛みには強いので……血が出てるから、キスはしない方が良いかな……」
キスじゃなかったら何します? 私は頬が熱くなるのを感じた。
「じゃあ、僕の体に慣れて貰いたいので……脱いでも、良いですか?」
「う、そのあの」
「大丈夫ですよ。透子さんの体には、僕は触らないようにします」
そう言うと理人さんは、寝間着代わりの高級そうな黒いスウェットを脱いだ。
思わず、私は息を呑んでしまう。理人さんは顔もそうなんだけど、美術品みたいに美しい体だったからだ。
無駄な肉など全くない。それでいて、必要なところにはきちんとついている筋肉。もちろん、お腹は薄く割れている。
「触って貰えます?」
彼は色気のある挑戦的な目で、私を見た。こくり、と喉を鳴らして、私は手を持ち上げた。
勇気を出して、自分から彼の腕を触ると硬くて柔らかだ。そんな相反する表現が、相応しいと思う。冷たくて温かい、不思議な感触。
「寒くないですか?」
さっきまで、雨に打たれてずぶ濡れだった人だ。シャワーを浴びたとは言え、風邪をひいてしまうかもしれない。
「透子さんが、温めてくれるんですよね」
理人さんは、軽く手を広げてから私を見た。そう言えば、そんな話をしていた。
「うー、はい」
「嫌ですか?」
「嫌じゃないです……けど、」
理人さんの薄い透明のグレーの目が、面白そうにして瞬く。
「どうしたんですか?」
「恥ずかしい、です」
「大丈夫です。僕も恥ずかしいです。同じですね」
全然、大丈夫じゃない。けど、こうしていても時間は過ぎるばかり。
意を決した私は、えいっと彼の大きな胸の中に飛び込んだ。理人さんの匂いがする。シャワージェルだろうか、薄くシトラスの香り。
「ベッドに、移っても良いですか?」
理人さんは返事を待たずに私を抱き上げると、スタスタと大きなベッドへと移った。私を抱き寄せたまま、枕元へと腰掛ける。
「今日は、飲んで来ようかと思ったんですけど……店に入ろうにも、流石にこんな顔だし……それに、早く透子さんに会いたかったので」
「お酒好きなんですか?」
「人並みには」
「好きなんですね」
私は間近にある理人さんの上半身を、しげしげと見てしまう。本当に溜め息が出てしまいそうな綺麗な肌と、筋肉だ。鍛えてるのかな?
「もっと、触ってみてくださいね。練習、なんですから」
「……凄く、硬いですね。何かスポーツとか、していました?」
「幼い頃からずっと、バスケットボールをしていました。大学では、スリーオンスリーをたまにやる程度でしたが」
「キャプテンですよね?」
「……気になります?」
「絶対に、背番号4番付けていそうです」
「流石に一年生では、難しいですね」
「ということは、それ以外は付けていたんですね」
ぺたぺたと腕から胸へと興味深く触っていく。硬くて柔らかくて、肌触りが良い。こんなに異性の裸を触るのなんて、もちろん初めてだった。不思議な感触に、なんだか夢中になってしまう。
「ふ、透子さん」
小さく吹き出した理人さんは、両手で私の顔を掬い上げるようにして、そして触れるだけのキスをした。
「何か変なことしました?」
「いえ。もちろん練習なんだから、良いんですけど、僕の体を熱心に研究されているような気がしました」
「……キスしたり、舐めてみても良いですか?」
私は顔を熱くしながら、目が潤んでいる理人さんの顔を見上げながら言った。彼は優しく笑いながら、了承の意味を込めてもう一回キスしてくれた。
「もちろん。お好きにどうぞ」
「だって、頬が痛いかもしれませんよ」
「別に平気です。痛みには強いので……血が出てるから、キスはしない方が良いかな……」
キスじゃなかったら何します? 私は頬が熱くなるのを感じた。
「じゃあ、僕の体に慣れて貰いたいので……脱いでも、良いですか?」
「う、そのあの」
「大丈夫ですよ。透子さんの体には、僕は触らないようにします」
そう言うと理人さんは、寝間着代わりの高級そうな黒いスウェットを脱いだ。
思わず、私は息を呑んでしまう。理人さんは顔もそうなんだけど、美術品みたいに美しい体だったからだ。
無駄な肉など全くない。それでいて、必要なところにはきちんとついている筋肉。もちろん、お腹は薄く割れている。
「触って貰えます?」
彼は色気のある挑戦的な目で、私を見た。こくり、と喉を鳴らして、私は手を持ち上げた。
勇気を出して、自分から彼の腕を触ると硬くて柔らかだ。そんな相反する表現が、相応しいと思う。冷たくて温かい、不思議な感触。
「寒くないですか?」
さっきまで、雨に打たれてずぶ濡れだった人だ。シャワーを浴びたとは言え、風邪をひいてしまうかもしれない。
「透子さんが、温めてくれるんですよね」
理人さんは、軽く手を広げてから私を見た。そう言えば、そんな話をしていた。
「うー、はい」
「嫌ですか?」
「嫌じゃないです……けど、」
理人さんの薄い透明のグレーの目が、面白そうにして瞬く。
「どうしたんですか?」
「恥ずかしい、です」
「大丈夫です。僕も恥ずかしいです。同じですね」
全然、大丈夫じゃない。けど、こうしていても時間は過ぎるばかり。
意を決した私は、えいっと彼の大きな胸の中に飛び込んだ。理人さんの匂いがする。シャワージェルだろうか、薄くシトラスの香り。
「ベッドに、移っても良いですか?」
理人さんは返事を待たずに私を抱き上げると、スタスタと大きなベッドへと移った。私を抱き寄せたまま、枕元へと腰掛ける。
「今日は、飲んで来ようかと思ったんですけど……店に入ろうにも、流石にこんな顔だし……それに、早く透子さんに会いたかったので」
「お酒好きなんですか?」
「人並みには」
「好きなんですね」
私は間近にある理人さんの上半身を、しげしげと見てしまう。本当に溜め息が出てしまいそうな綺麗な肌と、筋肉だ。鍛えてるのかな?
「もっと、触ってみてくださいね。練習、なんですから」
「……凄く、硬いですね。何かスポーツとか、していました?」
「幼い頃からずっと、バスケットボールをしていました。大学では、スリーオンスリーをたまにやる程度でしたが」
「キャプテンですよね?」
「……気になります?」
「絶対に、背番号4番付けていそうです」
「流石に一年生では、難しいですね」
「ということは、それ以外は付けていたんですね」
ぺたぺたと腕から胸へと興味深く触っていく。硬くて柔らかくて、肌触りが良い。こんなに異性の裸を触るのなんて、もちろん初めてだった。不思議な感触に、なんだか夢中になってしまう。
「ふ、透子さん」
小さく吹き出した理人さんは、両手で私の顔を掬い上げるようにして、そして触れるだけのキスをした。
「何か変なことしました?」
「いえ。もちろん練習なんだから、良いんですけど、僕の体を熱心に研究されているような気がしました」
「……キスしたり、舐めてみても良いですか?」
私は顔を熱くしながら、目が潤んでいる理人さんの顔を見上げながら言った。彼は優しく笑いながら、了承の意味を込めてもう一回キスしてくれた。
「もちろん。お好きにどうぞ」
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