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55 関係性②
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「兄上……それは、本気なのですか?」
慎重に言ったエルネストは、好奇の視線をこちらに送る周囲を見渡していた。
そうだよね。本気ではないよね。本気ではないって言って!
王太子殿下の思わぬ爆弾発言に周囲はざわめくし、その相手であるはずの私だって、なんと言って良いものかわからずに固まって居た。
ここで否定すると、不敬にならない? エルネストはただ優しいから、以前のロゼッタのことを許してくれていたけれど、本来なら王族って逆らってはいけない人なのよ!
「僕は、嘘は言わぬ。ロゼッタの家はディリンジャーなのか。魔法界でも歴史ある名家だ。丁度良い。僕に婚約者は居ないし、二人がどうなろうが何の問題もない」
ええええっ……色々問題あり過ぎると思うし、ディリンジャー家の両親だって王太子殿下とロゼッタが結婚出来るなんて、絶対に考えてもいないですよ!?
これはとんでもないことに巻き込まれてしまったかもしれないと、顔を青くした私は、この場から消え去りたい気持ちでいっぱいだった。
魔法学園なんだけど、そういう魔法は使えないはずだ……瞬間移動が出来てしまうと、色々と不都合あるもんね。
止めてー!! どうして王太子殿下は、あんな事を言ったの?
本当に意味がわからないし、王太子妃なんて面倒くさそうで絶対に嫌だし、両親がエルネストを狙えっていうのも、第二王子だったからだし……。
「ロゼッタ……兄上と、婚約するのか?」
さっきから呆然としているエルネストは驚きに満ちた声を出して振り向いたけれど、そんな訳はないです。そんな訳がある訳はないです。
ディリンジャーは確かに名家のひとつだけど、王太子と結婚が出来るほどではないです。
「いえいえ。エルネスト殿下……嘘に決まっています。王太子殿下はご冗談が、お上手で……もう」
なんと言って誤魔化して良いものか、内心ひやひやしながら私は棒読みで答えていた。王太子殿下は楽しそうだけど、私は本当に居たたまれないよ!?
「そうですよね。ディリンジャー先輩は、王子と結婚なんて面倒だって、前に言ってましたもんね」
イエルクはぼそりと呟いたけれど、それって、今言う必要ないよね!?
「いやいや、面倒などなかろう。ただ、僕と結婚するだけだ」
私はその時に気がついた。王太子殿下、完全に楽しんでいる。私のあわてぶりだって、きっと。
「もー!! やめて下さい! 私にはもっと大事なことがあるんです!」
リッチ先生の企みを防いで、魔法界を救うんです! それをなんとかしないと、王子様と婚約なんて考えられる訳もないよ!
「いやいや……ロゼッタ・ディリンジャー。男女二人で世界中旅行するなら、どのような関係性で行くつもりなんだ。僕たちが違うと否定しようが、誰もが誤解する事になるぞ」
王太子殿下はムキになっている私を見て、楽しそうに笑っていた。
第一部 完
慎重に言ったエルネストは、好奇の視線をこちらに送る周囲を見渡していた。
そうだよね。本気ではないよね。本気ではないって言って!
王太子殿下の思わぬ爆弾発言に周囲はざわめくし、その相手であるはずの私だって、なんと言って良いものかわからずに固まって居た。
ここで否定すると、不敬にならない? エルネストはただ優しいから、以前のロゼッタのことを許してくれていたけれど、本来なら王族って逆らってはいけない人なのよ!
「僕は、嘘は言わぬ。ロゼッタの家はディリンジャーなのか。魔法界でも歴史ある名家だ。丁度良い。僕に婚約者は居ないし、二人がどうなろうが何の問題もない」
ええええっ……色々問題あり過ぎると思うし、ディリンジャー家の両親だって王太子殿下とロゼッタが結婚出来るなんて、絶対に考えてもいないですよ!?
これはとんでもないことに巻き込まれてしまったかもしれないと、顔を青くした私は、この場から消え去りたい気持ちでいっぱいだった。
魔法学園なんだけど、そういう魔法は使えないはずだ……瞬間移動が出来てしまうと、色々と不都合あるもんね。
止めてー!! どうして王太子殿下は、あんな事を言ったの?
本当に意味がわからないし、王太子妃なんて面倒くさそうで絶対に嫌だし、両親がエルネストを狙えっていうのも、第二王子だったからだし……。
「ロゼッタ……兄上と、婚約するのか?」
さっきから呆然としているエルネストは驚きに満ちた声を出して振り向いたけれど、そんな訳はないです。そんな訳がある訳はないです。
ディリンジャーは確かに名家のひとつだけど、王太子と結婚が出来るほどではないです。
「いえいえ。エルネスト殿下……嘘に決まっています。王太子殿下はご冗談が、お上手で……もう」
なんと言って誤魔化して良いものか、内心ひやひやしながら私は棒読みで答えていた。王太子殿下は楽しそうだけど、私は本当に居たたまれないよ!?
「そうですよね。ディリンジャー先輩は、王子と結婚なんて面倒だって、前に言ってましたもんね」
イエルクはぼそりと呟いたけれど、それって、今言う必要ないよね!?
「いやいや、面倒などなかろう。ただ、僕と結婚するだけだ」
私はその時に気がついた。王太子殿下、完全に楽しんでいる。私のあわてぶりだって、きっと。
「もー!! やめて下さい! 私にはもっと大事なことがあるんです!」
リッチ先生の企みを防いで、魔法界を救うんです! それをなんとかしないと、王子様と婚約なんて考えられる訳もないよ!
「いやいや……ロゼッタ・ディリンジャー。男女二人で世界中旅行するなら、どのような関係性で行くつもりなんだ。僕たちが違うと否定しようが、誰もが誤解する事になるぞ」
王太子殿下はムキになっている私を見て、楽しそうに笑っていた。
第一部 完
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めっちゃくちゃ面白いです。続きが気になります(っ ॑꒳ ॑c)続き待ってます(*^^*)
寒くなってきたので お身体に気をつけて 執筆活動頑張って下さい。
感想ありがとうございます♡
そう言って貰えてとっても嬉しいです(´;ω;`)
構想はあるのでちまちまとでも書きたいです!